米雇用統計後の円安とリラ安では円安優勢で大幅上昇
〇5日のトルコリラ円は7.55から7.38の取引レンジ、6日早朝終値は前日終値から0.13の円安リラ高に
〇ドル円3円近い急騰で円安による押し上げをストレートに反映、トルコリラ円は8/2以降の高値更新
〇対ドルでは4日から5日にかけ1ドル18リラ直前の抵抗感での膠着状態にとどまり新たな安値更新回避
〇円安加速でトルコリラ円は上昇しやすく、円安一服では下落しやすい環境で推移すると思われる
〇7.50台序盤までで確りするうちはもう一段高余地ありとみて7.57前後への上昇を想定
〇7.50割れからは戻り一巡による下げ再開と仮定して7.40円台前半を目指す下落を想定
【概況】
トルコリラ円の8月5日は7.55円から7.38円の取引レンジ、6日早朝の終値は7.54円で前日終値の7.41円から0.13円の円安リラ高となった。
ドル円の大幅下落とドル/トルコリラのドル高リラ安基調を背景に8月2日には7.27円の安値を付けて昨年12月13日高値11.15円以降の最安値を更新したが、8月2日夜から米地区連銀総裁らによる年内大幅利上げと利上げ状態の長期化支持発言が相次いだことで米長期債利回りが反騰に転じてドル円が大幅高となったことでトルコリラ円も円安に押し上げられる形で反騰した。
8月3日のトルコ7月消費者物価上昇率が前年同月比で79.60%となり6月の78.62%を上回ったものの前月比では2.37%にとどまって6月の4.95%から伸びが鈍化したことで市場反応は鈍かった。
8月5日は米7月雇用統計で非農業部門就業者数が予想の25万人増の倍以上となる52.8万人増となり失業率も3.5%まで改善してパンデミック前の水準を回復し、平均時給の伸びも継続したため、米FRBによる利上げ姿勢は強めと受け止められてドル全面高となった。ドル円は午前安値132.50円から深夜高値135.49円まで3円近い急騰となったものの、ドル/トルコリラの反応は鈍かったことで円安による押し上げがストレートに反映してトルコリラ円も午前安値7.38円から深夜高値7.55円へ急伸して8月2日安値以降の高値を更新した。
週間では7月29日終値7.43円から0.10円の円安リラ高であり、直前の3週連続陰線による下落が落ち着いて4週ぶりに陽線で終えた。
【ドル高リラ安は1ドル18リラを試す攻防続く】
ドル/トルコリラの8月5日は17.97リラから17.88リラの取引レンジ、6日早朝の終値は17.91リラで前日終値の17.92リラからは0.01リラのドル安リラ高だった。
8月3日のトルコ7月消費者物価上昇率発表後のリラ売りにより17.99リラ(小数点3桁では17.998リラ、ベンダーによっては18リラ台の安値提示もあり)を付けて12月23日高値10.06リラ以降の最安値を更新し、終値を17.94リラとして終値ベースでの史上最安値を更新した。8月4日から5日にかけては1ドル18リラ直前の抵抗感での膠着状態にとどまり新たな安値更新を回避している。
8月5日の米雇用統計から為替市場はドル全面高の様相となりユーロやポンドが急落、豪ドルなどのコモディティ通過も下落したが、トルコリラは発表直後に安値で17.97リラを付けたものの安値更新を試す動きへは進まずに米雇用統計直後の買い一巡からはややリラ高優勢の動きとなった。
週間では7月29日終値17.91リラから変わらずで終了した。
【円安とリラ安の綱引き続く】
ドル円は7月14日高値139.39円から8月2日安値130.39円まで9円の円高ドル安となり、2021年1月以降では最大の下落に見舞われたが、米雇用統計発表からの急伸で135.49円へ上昇して8月2日安値からの戻り幅は5.10円となり7月14日からの下げ幅に対する半値戻し以上へ切り返した。8月8日午前序盤もさらに高値切り上げを伺う位置取りとなっている。
7月14日までは米FRBの金融引き締め姿勢についてタカ派的な見方が優勢だとしてドル全面高となりユーロドルが1ユーロ1ドルのパリティを割り込んだが、その後は米FRBによる利上げ打ち止めと利下げ再開時期がこれまでの想定よりも早まるのではないかとの期待が膨らんだことでドル安へと流れが変わっていた。その流れを米地区連銀総裁らがタカ派的な主張を繰り返すことで釘を刺したためにドル高感が回復、米雇用統計が予想を上回ったことでドル高も勢い付くという展開になっている。
ドル円は2021年1月6日底102.57円を起点として歴史的ともいえる大上昇期に入ってきた。7月14日高値からの急落により大上昇に対して急ブレーキがかかった状況だったが、8月2日からのV字反騰はこの間でも最大級の反騰ぶりであり、大上昇=ドル高円安の再開感が強まってきている。
一方でトルコリラは高インフレがエスカレートする中にあってもエルドアン政権及びトルコ中銀が利上げを拒否して利下げ姿勢の継続性を強調することで終値ベースの史上最安値更新を連日のように繰り返してきた。
当面は米国の経済指標を見ながら今後の利上げペースを思惑して米長期債利回りの反騰継続=ドル高円安へ向かいやすく、1ドル18リラの攻防が続くドル/トルコリラも18リラを超えてリラ売りが加速しかねない状況が続くと思われる。弱い円と弱いリラの弱さ比べでトルコリラ円の方向性も決まり、1ドル18リラの攻防が続くうちは円安が加速するところでトルコリラ円は上昇しやすく、円安が一服するところで下落しやすい環境で推移すると思われる。ただし、1ドル18リラを突破してリラ安が加速し始める場合は円安に勝るリラ安によりトルコリラ円も一段安へ一挙に進む可能性も抱えていると注意したい。
【概ね3か月から4か月周期のサイクルではもう一段安の懸念あり】
トルコリラ円の日足は概ね3か月から4か月周期の底打ちサイクルで推移しており、昨年12月20日の史上最安値以降では、今年3月11日安値、6月16日安値で底打ちし、8月2日にかけての下落で6月16日安値を割り込んだことにより6月27日の戻り高値を起点としてこのサイクルの下落期にあると思われる。
安値形成期は6月16日安値から3か月目となる8月半ばからやや長引けば9月前半にかけての間と想定されるため8月2日安値では底打ちに日柄が浅すぎる印象がある。
昨年9月2日の戻り天井から急落商状に陥った際は、26日移動平均が上値抵抗となり同線を超えられないまま12月20日への大暴落へ進んでいるが、現状も6月27日高値からの下落当初に26日移動平均に絡んで持ち合ってから一段安に入り、8月2日から戻しているものの同線(現在7.75円)には届かずにいる。このため、26日移動平均を終値ベースで超えるところまで戻せばサイクルボトムの日柄を短縮しての反騰入りの可能性も出てくるが、同線に届かないうちは戻り一巡後の反落から一段安へ進む懸念を引きずるのではないかと思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、7.50円を下値支持線、7.60円を上値抵抗線とする。
(2)8月2日午前安値からの反騰継続中のため、7.50円台序盤までで確りするうちはもう一段高余地ありとみて7.57円前後への上昇を想定する。7.57円から7.60円にかけてのゾーンへ上昇する場面あれば戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)7.50円割れからは戻り一巡による下げ再開と仮定して7.40円台前半(7.45円から7.40円)を目指す下落を想定する。7.40円台序盤では買い戻しも入りやすいとみるが、7.45円以下での推移が続くようならその後の下落で7.30円台中盤へ向かう可能性が高まると考える。
【当面の主な予定】
8月10日
16:00 7月 失業率 (6月 10.9%)
8月11日
16:00 6月 経常収支 (5月 -64.68億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 8/5時点 グロス (7/29時点 611.0億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 8/5時点 ネット (7/29時点 91.2億ドル)
8月12日
16:00 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.5%)
16:00 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 9.1%)
16:00 6月 小売売上高 前月比 (5月 1.9%)
16:00 6月 小売売上高 前年同」月比 (5月 20.8%)
8月15日
17:00 7月 財政収支 (6月 -310億リラ)
8月18日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 14.0%)
注:ポイント要約は編集部
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