夏枯れも影響か、荒っぽい変動には要注意
〇先週のドル円、一時130円台を示現後はドル買戻し優勢、135円台半ばまで上昇
〇8月に入り薄商い、今週も落ち着きどころを探り荒っぽい上下動続くか
〇日米を中心とした金利情勢、ペロシ氏訪台でアジア地政学リスクへの関心高まる
〇今週は7月消費者物価指数、8月ミシガン大消費者信頼感指数速報値を発表予定
〇今週のドル/円予想レンジは133.00-137.00、移動平均21日線をめぐる攻防に注目
〇ドル安・円高方向は強いテクニカルポイントが133円前後、下回ると90日線がターゲット
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、結果としてドル堅調裡。ザラ場ベースでは一時2ヵ月ぶりの130円台を示現する局面も見られたが、その後はドル買戻しが優勢だった。
先週末は、露のガスプロムが隣国「ラトビアに対するガス供給を停止」したと発表し話題に。また、ペロシ米下院議長が米議員団を率いてインド太平洋地域を歴訪すると発表したが、取り沙汰されている台湾訪問に言及しなかったことも思惑を呼ぶ。
そうした状況下、ドル/円は133.20円前後で寄り付いたのち、当初はドル売り優勢。米ファンダメンタルズへの懸念や、ペロシ氏の訪台に絡むアジアの地政学リスクなどが取り沙汰され、リスク回避志向の動きに押されていた。ドル/円は6月半ばに示現した安値131.49円を下回り、6月6日以来の130円台へ。しかし、その後は徐々にドル買戻しが観測されるなか、週末に発表された注目の米雇用統計がかなりの好数字になったことを好感。週間高値となる135円半ばまで値を上げ、NYもそのまま135円台をキープし越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「ペロシ氏の訪台」と「ロシア情勢」について。
前者は、一週間を通し「ペロシ氏の訪台」が為替市場で大きな注目を集めていた。実際に訪台するのか否か注目が集まるなか、台湾紙が「現地時間の2日夜に入る見通し」と観測記事を掲載し話題に。ただ、中国外務省は猛反発すると、報道官は「中国人民解放軍は決して座視することはない。必ず断固として強力な報復措置をとる」と恫喝していた。そうした状況下、限界を敷くなかペロシ氏が実際に訪台し、蔡総統らと会談。メンツを潰された中国サイドによる軍事行動はさらにエスカレートすると、台湾を発ち次の訪問地である韓国や日本を訪問したあとも、たとえば中国軍が台湾周辺海域で11発もの弾道ミサイルを発射したことが明らかになっている。この問題は、まだしばらく尾を引きそうだ。
対して後者は、ロシアを主とした2大問題のひとつ、「穀物輸出」について「1日にも実施予定」とされたウクライナ南部オデッサ港からの貨物船出発が実行に移されていた。ただゼレンスキー大統領は「結論を出したり、次を予測したりするのはまだ早い」と慎重な見方を崩しておらず、次は継続性の有無が注視されることになりそうだ。それに対して、「エネルギー供給問題」はいまだ解決せず。むしろ、ロシアのペスコフ報道官が「ノルドストリーム1」パイプラインの設備修理について、「解決に向けロシアができることはほとんどない」などと責任放棄を明言。それとともに、対露制裁の緩和あるいは撤廃を要求するなど、ロシアは政争の具のひとつとして利用していることが再確認されていた。
<< 今週の見通し >>
名実ともに8月入り。サマーバカンスをとる向きも多く、商いが薄くなってきたことも影響しているのかここのところ値動きが非常に軽い。実際、先週のドル/円は「週明けから3円下落したのち5円上昇」という上下に大きく振れる、なかなかのジェットコースター相場だった。そんな荒っぽい展開は今週も基本的には続く見込みだ。「薄商い=乱高下」、落ち着きどころを探るような上下動には引き続き注意を払いたい。
為替に限らず、金融市場全般で取り沙汰されている要因は大きく2つ。ひとつは日米を中心とした金利情勢で、それと絡めてのファンダメンタルズ要因の関心も高い。発表される米経済指標の内容などにも一応要注意。また、もうひとつの要因はペロシ氏の訪台で米中の軋轢が強まったことによる「アジアの地政学リスク」だ。なお、以前から日経新聞が「中国が砂漠地帯に設置していた航空自衛隊の早期警戒管制機に似た構造物を破壊したことが分かった」などとし、日本を仮想標的としたミサイル攻撃訓練の可能性を指摘していたが、それも笑えなくなってきた。対岸の火事ではなく、実際に日本が巻き込まれるリスクも念頭に置いておく必要がある。
テクニカルに見た場合、ドル/円は移動平均の21日線を一時下回ったこともあり続落するも、結果として同90日線がサポートとなった。そんな90日線は今週を通し、ほぼ131円後半で緩やかな上昇をたどる見込み。ドルの下支えに寄与する存在になるとして期待されているようだ。
それに対して、21日線は目先ピークをつけたのち、現在緩やかに下降している。週末にかけては136円台を割り込む公算が高い環境下、再び「しっかり」と超えていくことが出来るのかに期待する強気派も。
そうしたなか今週は、7月の消費者物価指数や8月のミシガン大消費者信頼感指数速報値といった米経済指標の発表が相次ぐうえ、米企業に加え欧州企業の決算発表も引き続き実施される見込みだ。また日本では週末にかけて、いわゆる「盆休み」に入る企業なども多く、ポジション調整を中心とした需給要因も波乱要因のひとつになる可能性がある。
そんな今週のドル/円予想レンジは、133.00-137.00円。ドル高・円安については、先でも取り上げた移動平均の21日線をめぐる攻防にまずは注目。週明けは136円台だが、週末にかけて135円台後半へと小緩むことが予想されるだけに、しっかりと超えていく可能性もある。
対してドル安・円高方向は、134円半ばから後半に弱いサポートが散見されるものの、強いテクニカルポイントとなると133円前後か。それも下回ると90日線がターゲットに。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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