ドル円見通し 米雇用統計から急伸、7月14日からの下げ幅に対する半値戻しを超える(週報8月第二週)

ドル円は8月5日夜の米雇用統計が予想を超える強さを示したことから発表直前の133.07円から当初の1時間で2円近い上昇となり、5日深夜高値で135.49円まで高値を伸ばした。

ドル円見通し 米雇用統計から急伸、7月14日からの下げ幅に対する半値戻しを超える(週報8月第二週)

ドル円見通し 米雇用統計から急伸、7月14日からの下げ幅に対する半値戻しを超える

〇ドル円、週末雇用統計の強い結果に135.49まで高値を伸ばし、135円挟みで越週
〇8/2以降、FRB関係者のタカ派発言からの米長期金利反騰からドル円上昇再開
〇雇用統計、NFP予想の倍を超えた一方、平均時給の伸びも予想上回り、インフレ進行継続の印象
〇米10年債利回りは大幅上昇、日米金利差による円安再開か
〇26日移動平均(現在135.99)を超えて翌日に続伸する展開を見せれば、一段高の可能性も
〇134円以上での推移中は戻りをさらに試すとみて135.49超えからは136円台序盤への上昇を想定
〇134円割れからは仕切り直しで8月5日午前安値132.50をもう一度試すとみる

【概況】

ドル円は8月5日夜の米雇用統計が予想を超える強さを示したことから発表直前の133.07円から当初の1時間で2円近い上昇となり、5日深夜高値で135.49円まで高値を伸ばした。6日早朝にかけては上昇一服するも135円を挟んだ揉み合いで高値圏を維持して週を終えた。
ドル円が7月14日高値から8月2日安値まで下落してきた背景は1ユーロ1ドルのパリティ割れまで進んだことに象徴されるドル全面高に対する修正的なドル安と、米FRBによる利上げペースの加速懸念が後退したと市場が受け止めて米長期債利回りが低下したことだった。しかし8月2日からの米地区連銀総裁らによる大幅利上げの継続と利上げされた水準を長期間維持する姿勢が改めて強調されたことで米長期債利回りが反騰入りとなりドル円も上昇再開に入り始め、米雇用統計が予想以上の強さを示したことで米長期債利回り及びドル円の上昇を勢い付かせた印象だ。

【米雇用統計、非農業部門就業者数は予想の倍を超える】

8月5日に米労働省が発表した7月雇用統計では非農業部門就業者数が前月比52万8000人増となり市場予想の25万人増を大幅に上回り、6月の39万8000人増も上回った。2月に71.4万人増と急増した後は増加ペースが鈍り、3月から6月までは30万人台が続いていたが、7月に予想の倍を超えたことはそれだけ労働市場が逼迫して過熱した状況にあることを示した。7月の失業率は3.5%へ改善した。2022年2月に3.8%へ低下して4%を切り、3月からは5か月連続で3.6%だったが、3.5%をつけてパンデミック発生前の2020年2月の水準を回復したことにより、パンデミック対策としての金融緩和による失業対策が目的を達成したことを示した。
しかし7月の平均時給伸び率は前月比0.5%で6月の0.4%及び市場予想の0.3%を上回り、前年同月比では5.2%となり6月と同じ(速報の5.1%から上方修正)だったものの市場予想の4.9%への鈍化を裏切る加速となった。労働需給逼迫による賃金上昇が続き、人手不足とモノ不足によるインフレ進行が収まっていない印象を強めたことは、米FRBが今年残り3回のFOMCにおいてもインフレが収まる明確な兆候が見られないうちは大幅利上げを続ける可能性を高めた。

【米10年債利回りは大幅上昇、日米金利差による円安再開感】

8月5日の米長期債利回りは総じて上昇した。指標の10年債利回りは前日比0.14%上昇の2.83%で終了したが、一時は2.87%を付けて8月2日に付けた2.52%以降の高値を更新した。6月14日に3.50%を付けたところから大幅下落してきたが調整一巡から上昇再開に入り始めた印象だ。
30年債利回りは前日比0.10%上昇の3.07%で終了したが、一時は3.10%まで急伸した。
2年債利回りは0.20%上昇で3.26%となったが一時は3.33%を付けた。10年債利回りが8月2日まで二段下げで大幅下落した際に2年債利回りは7月1日安値割れを回避して切り返しており、6月14日につけた3.46%へ迫る勢いが見られる。2年債と10年債の利回りが逆転する逆イールド幅は2000年8月以来の水準となったが、2000年はナスダック総合指数が3月10日に天井をつけたITバブル崩壊時であり、同年9月1日に戻り高値を付けてから2002年10月10日まで大幅下落が続いたところでもある。

8月5日のNYダウは前日比76.65ドル高に終わり一時は大幅下落したところからプラス圏へ戻したが、ナスダック総合指数は前日比63.02ポイント安とマイナス圏のまま終了している。ダウ、ナスダックともに6月後半から戻してきたが、金融引き締め強化感が再燃したことで戻り一巡から下落に転じやすい状況となってきたのではないかと思われる。

【昨年来の大上昇再開へ進めるか、当面の上値抵抗線となる26日移動平均突破が課題】

【昨年来の大上昇再開へ進めるか、当面の上値抵抗線となる26日移動平均突破が課題】

7月14日高値139.39円から8月2日安値130.39円までの下落幅は9.00円で、2021年1月以降の調整規模としては今年5月9日高値から5月24日安値への下落幅4.99円を大幅に超えて最大となった。しかしその後の反騰で8月5日深夜高値まで5.10円の上昇幅となり既に半値戻しを超えている。
日足チャートにおいては重要なトレンド分岐点となりやすい26日移動平均を割り込んでから当日の下落規模が2円を超えるような大陰線の連続で下げてきたが、8月2日に下ヒゲを付けて当日の安値から高値まで3円近い上昇となる大陽線で切り返し、8月5日も同様に当日安値から高値へ3円に迫る大陽線であり、大幅下落後の切り返しが勢い付いている印象だ。

26日移動平均及び52日移動平均を割り込んだ後は26日移動平均前後が戻りの抵抗となりやすいが、日足の終値ベースで26日移動平均(現在135.99円)を超えて翌日に続伸する展開を見せれば、V字型の反騰により7月14日高値を超えて一段高へと進む可能性も高まると思われる。
ただし、2021年1月底以降は概ね3か月から4か月周期で調整安を入れては一段高を切り返してきたが、このサイクルにおける前回ボトムである5月24日安値からはまだ2か月半に満たないため、8月2日からの反騰が一服してもう一度底試しへ向かう可能性や、8月2日安値から底上げしつつ反騰一服による横ばい推移で時間調整が続く可能性もあるところだ。米長期債利回り動向も反騰継続感が強まってはいるが6月以降はかなり乱調な展開でもあり、米FRBの年内及び来年前半の利上げ水準への地区連銀総裁やパウエル議長の発言等によってはV字反騰に対する揺れ返しで乱高下する可能性も抱えていると注意したい。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、134円を下値支持線、8月5日深夜高値135.49円を上値抵抗線とする。
(2)134円以上での推移中は戻りをさらに試すとみて135.49円超えからは136円台序盤への上昇を想定する。8月2日から8月3日夜への上昇幅に対して8月5日からの上昇が同規模なら136.65円前後が当面の高値目安となりやすいが、勢い付く場合は8月2日への大幅下落の起点となった7月27日高値137.46円あたりまで水準を切り上げる可能性もあるとみる。
(3)134円割れからは仕切り直しで8月5日午前安値132.50円をもう一度試すとみる。132.50円割れを回避して134円を超えるところからは一段高へ進むとみるが、132.50円を超える切り下げの場合は131円前後への下落で8月2日安値からの底上げを試す可能性に注意する。

【当面の主な予定】

8/8(月)
08:50 (日) 6月 経常収支・季調前 (5月 1284億円、予想 -7038億円)
08:50 (日) 6月 経常収支・季調済 (5月 82億円、予想 -276億円)
08:50 (日) 6月 貿易収支・国際収支ベース (5月 -1兆9512億円、予想 -9859億円)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー現状判断DI (6月 52.9、予想 51.5)
14:00 (日) 7月 景気ウオッチャー先行判断DI (6月 47.6、予想 46.7)

8/9(火)
休場、シンガポール、インド、南ア
08:50 (日) 7月 マネーストックM2 前年同月比 (6月 3.3%、予想 3.3%)
09:30 (豪) 8月 ウエストパック消費者信頼感指数 (7月 83.8)
10:30 (豪) 7月 NAB企業景況感指数 (6月 13)
21:30 (米) 4-6月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (1-3月 -7.3%、予想 -4.5%)
21:30 (米) 4-6月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (1-3月 12.6%、予想 9.5%)

8/10(水)
08:50 (日) 7月 国内企業物価指数 前月比 (6月 0.7%、予想 0.4%)
08:50 (日) 7月 国内企業物価指数 前年同月比 (6月 9.2%、予想 8.5%)
10:30 (中) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 2.5%、予想 2.8%)
10:30 (中) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 6.1%、予想 4.9%)
15:00 (独) 7月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 0.9%、予想 0.9%)
15:00 (独) 7月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 7.5%、予想 7.5%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前月比 (6月 1.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 消費者物価指数 前年同月比 (6月 9.1%、予想 8.7%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前月比 (6月 0.7%、予想 0.5%)
21:30 (米) 7月 消費者物価コア指数 前年同月比 (6月 5.9%、予想 6.1%)
23:00 (米) 6月 卸売売上高 前月比 (5月 0.5%)
23:30 (米) エネルギー省週間石油在庫統計
24:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
27:00 (米) カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、講演
27:00 (米) 7月 月次財政収支 (6月 -888億ドル)

8/11(木)
休場、日本、OPEC月報
21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前月比 (6月 1.1%、予想 0.2%)
21:30 (米) 7月 生産者物価指数 前年同月比 (6月 11.3%、予想 10.4%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前月比 (6月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 7月 生産者物価コア指数 前年同月比 (6月 8.2%、予想 7.7%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 26.0万件、予想 26.4万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 141.6万人、予想 141.0万人)

8/12(金)
休場、タイ
08:30 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、インタビュー
15:00 (英) 4-6月期 GDP速報値 前期比 (1-3月 0.8%、予想 -0.2%)
15:00 (英) 4-6月期 GDP速報値 前年同期比 (1-3月 8.7%、予想 2.8%)
15:00 (英) 6月 月次GDP 前月比 (5月 0.5%、予想 -1.2%)
15:00 (英) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.9%、予想 -1.4%)
15:00 (英) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 1.4%、予想 1.6%)
15:00 (英) 6月 貿易収支・物品 (5月 -214.45億ポンド、予想 -223.00億ポンド)
15:00 (英) 6月 貿易収支・全体 (5月 -97.47億ポンド、予想 -105.00億ポンド)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 0.8%、予想 0.1%)
18:00 (欧) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 1.6%、予想 1.0%)
21:30 (米) 7月 輸入物価指数 前月比 (6月 0.2%、予想 -0.9%)
21:30 (米) 7月 輸出物価指数 前月比 (6月 0.7%、予想 -1.0%)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数速報値 (7月 51.5、予想 52.5)

注:ポイント要約は編集部

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