来週の為替相場見通し:『金融差トレード再開でドル円は全値戻しに向けて急発進』(8/6朝)

ドル円は今週前半(8/2)にかけて、約2ヵ月ぶり安値130.43まで下げ幅を広げましたが、週末にかけて再び135円台を回復するなど、「往って来い」の展開となりました。

来週の為替相場見通し:『金融差トレード再開でドル円は全値戻しに向けて急発進』(8/6朝)

『金融差トレード再開でドル円は全値戻しに向けて急発進』

〇今週のドル円、8/2に安値130.43まで急落、米中指標不冴え、米中対立激化懸念等が背景
〇売り一巡後はFRB関係者のタカ派発言、米雇用統計の好調等で急伸し135円台で越週
〇ユーロドル米金利低下で週前半1.0295まで上昇後、米金利が反発したこと等で1.02割れ
〇ドル円、高値139.40からの下落の半値戻し達成、転換線、基準線、雲上限上抜け下値堅い
〇ファンダメンタルズも日本と他国の金融政策格差がドル円相場を上昇させやすい
〇来週からは再び日米金利差に着目したドル買い・円売りトレード再開か
〇来週の予想レンジ(USDJPY):133.25ー137.25、(EURUSD):0.9050−1.0350

今週のレビュー(8/1−8/5)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初133.23で寄り付いた後、@中国7月製造業PMI(結果49.0、予想50.4)の冴えない結果(景況改善・悪化の分岐点となる50割れ)や、A中国7月財新製造業PMI(結果50.4、予想51.5)の冴えない結果、B上記@Aを背景とした中国経済の先行き不透明感、Cバイデン米大統領のコロナ再陽性報道、D米7月ISM製造業景況指数(結果52.8、予想52.0、前回53.0)の冴えない結果(市場予想を上回りつつも、2020年6月以来の低水準)、

E米7月ISM支払価格(結果60.0、予想74.3、前回78.5)の急低下(米インフレ懸念後退)、F上記DEを背景とした米長期金利の急低下(米利上げペース鈍化観測→米10年債利回りは4/5以来、約4ヵ月ぶり低水準となる2.51%へ急低下)、Gペロシ米下院議長の台湾訪問に端を発した米中対立激化懸念(地政学的リスク台頭→市場心理悪化)、H世界的なリスク回避ムード(株式市場下落→リスク回避の円買い圧力)が重石となり、翌8/2にかけて、週間安値130.43(6/6以来、約2ヵ月ぶり安値圏)まで急落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、Iサンフランシスコ連銀デイリー総裁による「インフレ抑制を目的としたFRBの取り組みは達成にはまだ程遠い」「FRBは断固として完全に一致団結している」とのタカ派的な発言や、Jシカゴ連銀エバンス総裁による「インフレ状況が改善しなければ次回9月FOMCでの75bp利上げが視野に入ってくる」とのタカ派的な発言、Kクリーブランド連銀メスター総裁による「インフレがまだピークに達しておらずFRBはさらなる取り組みを行う必要がある」とのタカ派的な発言、Lセントルイス連銀ブラード総裁による「米国のリセッション入りはないだろう」「年内にFF金利誘導目標を3.75-4.00%まで引き上げたい」とのタカ派的な発言、M米7月ISM非製造業景況指数(結果56.7、予想53.6、前回55.3)の力強い結果、

N米7月非農業部門雇用者数(結果52.8万人、予想25.0万人、前回39.8万人)の力強い結果、O米7月失業率(結果3.5%、予想3.6%、前回3.6%)の良好な結果、P米7月平均時給(結果5.2%、予想4.9%、前回5.2%)の市場予想を上回る結果、Q米長期金利の急上昇(タカ派な米当局者発言と堅調な米経済指標を背景に米利上げペース鈍化観測が大幅後退→米10年債利回りは2.86%へ急上昇)、R米主要株価指数の底堅い動き(リスク選好の円売り圧力)、S米中対立激化懸念の後退(中国による対抗措置が懸念されたほど過激なものにならなかったことに対する安堵感)などが支援材料となり、週末にかけて、週間高値135.49まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点(日本時間8/6午前5時00分現在)では、135.00前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0218で寄り付いた後、@ユーロ圏7月製造業PMI(結果49.8、予想49.6)の市場予想を上回る結果や、A米金利低下に伴うドル売り圧力(米利上げペース鈍化観測→米長期金利低下→米ドル全面安)が支援材料となり、翌8/2にかけて、週間高値1.0295まで上昇しました。しかし、心理的節目1.0300をバックに戻り売り圧力が強まると、Bペロシ米下院議長の台湾訪問に端を発した米中対立激化懸念(リスク回避ムード台頭)や、C欧州経済の先行き不透明感(ユーロ圏およびドイツ6月小売売上高が市場予想を大幅に下回る冴えない結果)、Dロシア産天然ガスを巡る供給削減懸念(7/30にロシアの国営エネルギー大手ガスプロム社がNATO加盟国であるラトビアへのガス供給停止を発表→欧州圏におけるエネルギー危機発生への警戒感)、

E米当局者によるタカ派的な発言、F米経済指標の力強い結果(米7月総合PMI改定値、米6月耐久財受注確報値、米6月製造業受注指数、米7月ISM非製造業景況指数)、G上記EFを背景とした米長期金利の急上昇が重石となり、週央にかけて、週間安値1.0122まで急落しました。その後は、H対英ポンドでのユーロ買い圧力(英中銀は昨日50bpの大幅利上げに踏み切ったものの、ベイリー総裁が年後半のリセッション懸念を示したことで、英2年債・10年債スプレッドが逆イールドとなり、英ポンドが対ユーロで急落)や、Iラトビア中銀カザークス総裁による「ECBはインフレ昂進を抑制するために利上げを継続すべき」とのタカ派的な発言が支えとなり、本稿執筆時点(日本時間8/6午前5時00分現在)では、1.0180前後で推移しております。

来週の見通し(8/8−8/12)

<ドル円相場>
ドル円は7/14に記録した約23年10ヵ月ぶり高値139.40(1998年9月以来)をトップに反落に転じると、今週前半(8/2)にかけて、約2ヵ月ぶり安値130.43(6/6以来の安値圏)まで下げ幅を広げましたが、週末にかけて再び135円台を回復するなど、「往って来い」の展開となりました。この間、139.40→130.43の半値戻し134.92を達成した他、ローソク足が一目均衡表転換線や基準線、雲上限を突破するなど、下値の堅さを再確認する結果となっております。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米経済を巡るリセッション懸念の後退(米GDPの 2四半期連続マイナス成長を受けて市場では米経済のリセッション懸念が広がっていましたが、今週発表された米経済指標は総じて力強い結果)や、A次回FOMCでの75bp大幅利上げ観測台頭(CMEのFed Watchは75bp利上げを70%織り込む動き)、B日銀による金融緩和の長期化方針(日銀は金融緩和の長期化方針を強調)、C上記ABを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り)、D米政府・当局によるドル高容認姿勢(米国はインフレ抑制に繋がるドル高を容認する構え)、E日本とその他各国との金融政策格差(米国のみならず、世界の大半の国がインフレ退治の金融引き締めに方針転換。ほぼ全ての通貨に対して円売りが進み易い構造)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が増えつつあります。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル高・円安トレンドの継続をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は8/10に予定されている米7月消費者物価指数に注目が集まります。市場予想を上回る結果となった場合には、今月8/25ー8/27に予定されているジャクソンホールに向けて、米インフレ懸念再燃→米FRBによる大幅利上げ観測→米長期金利急上昇→米ドル買いの流れが一段と強まる恐れがあるため、来週は米CPI発表後のドル円急騰リスクに注意が必要でしょう(注目された米雇用統計が予想以上に力強い結果を示したことで米リセッション懸念が大幅に後退→米中間選挙に向けて米FRBはインフレ抑制を目的とした米金利引き上げに専念できる外部環境→来週からは再び日米金利差に着目したドル買い・円売りトレード再開の見込み。比較的早期に7/14高値139.40に到達する可能性あり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):133.25ー137.25

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した年初来高値1.1496をトップに反落に転じると、7/14に約19年7ヵ月ぶり安値0.9952(2002年12月以来の安値圏)まで下げ幅を広げましたが、その後は、1.0100−1.0300をコアレンジとした上下動が続いております。但し、上方に複数のレジスタンスポイント(一目均衡表基準線や雲上下限など)を控えていることや、日足・週足・月足の全てで強い売りシグナル(一目均衡表三役逆転+弱気のパーフェクトオーダー+ダウ理論の下落トレンド)が継続していることなどを踏まえると、テクニカル的に見て、リスクは依然ダウンサイドと判断できます(現在は下落トレンドの過程で見られる一時的な踊り場局面。一巡後の下落リスクに要警戒)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、A上記@を背景とした欧州圏のエネルギー逼迫懸念(ロシアからの天然ガス供給削減リスク→エネルギー危機発生を通じたユーロ圏のインフレリスク長期化懸念)、B欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによる金融引き締めは欧州経済に強い逆風をもたらす悪循環)、C欧米名目金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力、Dイタリアを巡る政局不透明感など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はユーロ圏の経済イベントに乏しいことから、8/10に予定されている米7月消費者物価指数や、週後半に予定されている米当局者発言(シカゴ連銀エバンス総裁、ミネアポリス連銀カシュカリ総裁、サンフランシスコ連銀デイリー総裁など)、それらに伴う米長期金利や米主要株価指数の動きを睨みながらの神経質な相場展開を想定いたします(当方はドル買いトレンド再開をベースシナリオに据えているため、来週は米ドル主導でユーロに下押し圧力が加わる展開を想定。状況次第ではパリティ割れを試す可能性も十分あり)。

来週の予想レンジ(EURUSD):0.9050−1.0350

注:ポイント要約は編集部

『金融差トレード再開でドル円は全値戻しに向けて急発進』

ドル円日足

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