ドル円 短期的には136円台がターゲット(週報6月第2週)

先週のドル円も円安進行の週となり、週初は130円台半ば週末は134円台半ばと週間レンジも2週続けて4円を超える円安進行相場となりました。

ドル円 短期的には136円台がターゲット(週報6月第2週)

短期的には136円台がターゲット

〇先週のドル円も円安進行、週間レンジは2週続けて4円を超える円安進行相場に
〇主要中銀で緩和を続けるのは日銀のみ、内外金利差の拡大で対ドルだけでなくクロス円でも円安進行
〇2002年の高値は135.16レベル、今週は同水準を一度は試しに行くと考える
〇水曜のFOMC、ドットプロットが更にタカ派的になると見られ円一段安という可能性が最も高い
〇今週は133.00レベルをサポートに136.40レベルをレジスタンスとする流れとみる

今週の週間見通し

先週のドル円も円安進行の週となり、週初は130円台半ば週末は134円台半ばと週間レンジも2週続けて4円を超える円安進行相場となりました。最大の背景は主要中銀で緩和を続けるのは日銀のみということから内外金利差の拡大で対ドルだけでなく、対ユーロなどクロス円でも円安が進行しています。黒田日銀総裁が基本的に円安を問題視していないということを考えると、ほとんど日銀が円安相場にしていると言ってもよいでしょう。

しかし金曜には134円台半ばに円安が進んだことで、財務省、金融庁、日銀が為替相場の急変動は望ましくないとの共同声明を出し、財務官も最近の円安を憂慮とこれまでよりも一歩踏み込んだ表現となったものの、米国CPIが前年比8.6%となったことでFRBが年内は0.5%の利上げを継続せざるを得ないとの見方からドル高値圏での引けとなりました。

週明けのドル円は早朝に一時135.00レベルと2002年以来の高値を更新しましたが、2002年の高値は135.16レベルですから、今週は同水準を一度は試しに行くと考える参加者がほとんどです。水曜にはFOMC、金曜には日銀会合と日米の金融政策が発表されますので、その前に思惑でつけに行く可能性は高いですが、米国CPIが高かったことで四半期ごとのFOMCと同時に発表されるドットプロット(金利見通し)が更にタカ派的になると見られ、その時点に円一段安という可能性が最も高いように思います。

金曜CPI後にFF先物の取引水準も変化し、現状のコンセンサスは6月0.5%、7月0.75%と7月が0.5%から0.75%へと変化してきています。年内は9月0.5%、11月0.5%、12月0.25%と平均して毎回0.5%で12月時点のFF金利は3.25〜3.50%になるという見方です。いっぽうで日銀は大規模緩和継続を明言していますし、イールドカーブコントロールで10年債の利回りを0.25%以上にしない指値オペまで行っていますので、日米金利差の観点からは円安は調整を挟みながらも止まらないということになりそうです。

ただ、日本のCPIも前回は2.5%にまで上がって来ていますし、その後もエネルギー価格を中心に高騰が続き円安のデメリットも重なって輸入物価は上昇の一途となっています。欧米のCPIの推移を見ていると当初は落ち着いているように見えても、結局は止まらないインフレという動きになっていますので、日本のCPIも3%台に乗せるのは速いのではないかと見られます。単月では判断しないでしょうが、その後気付くと3.5%、4.0%という流れにしないためには日銀も思いのほか早い段階で出口戦略について考える必要が出てくるのではないかという気がします。その時には長期的に大転換点となると思うのですが、夏以降でしょうか。

短期的には、今は2002年高値をターゲットにしていますが、その水準を超えると1998年高値147.67レベルまで目立ったレジスタンスも無いため、135円台前半と147円台半ばという水準が短期と長期のターゲットということになります。月足チャートにこれら2つの水準を引いたチャートを参考までに載せておきましょう。

短期的には136円台がターゲット

日足チャートも見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

既にめぼしいターゲットを上抜けし続けてきましたので、現状は2002年高値135.16レベルと3月末の押しを起点に上昇N波動を考えた場合の100%エクスパンション136.42しかありません。ここ2週間の値幅が大きく、今週は更に大きく円安と言う動きは考えにくいのですが、136円台前半はいかにもありそうです。

また調整が入る時もやや大きめの調整となるでしょうから、今週は133.00レベルをサポートに136.40レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

6月13日(月)
**:** 豪州市場休場
15:00 英国4月鉱工業生産、貿易収支
16:00 トルコ4月鉱工業生産、経常収支
17:00 オーストリア中銀総裁、リトアニア中銀総裁講演
20:00 デギンドスECB副総裁講演 ☆
27:00 フレイナードFRB副議長講演 ☆

6月14日(火)
10:30 豪州5月企業景況感
15:00 ドイツ5月CPI ☆
15:00 英国5月失業率
18:00 ドイツ6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏6月ZEW景況感
21:30 米国5月PPI ☆
26:00 シュナーベルECB理事講演
**:** FOMC(〜15日)

6月15日(水)
07:45 NZ1〜3月期経常収支
09:30 豪州6月消費者信頼感
11:00 中国5月鉱工業生産、小売売上高 ☆
15:45 フランス5月CPI ☆
18:00 ユーロ圏4月鉱工業生産、貿易収支
18:15 ドイツ連銀総裁講演 ☆
20:00 南ア4月小売売上高
21:30 米国5月小売売上高
21:30 米国6月NY連銀製造業景況指数
21:30 米国5月輸入物価
21:30 スペイン中銀総裁講演

22:00 パネッタECB理事講演
22:15 オランダ中銀総裁講演
23:00 米国6月NAHB住宅指数
23:00 米国4月企業在庫
23:15 ポルトガル中銀総裁講演
23:30 週間原油在庫統計
25:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
27:00 FOMC結果発表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆

6月16日(木)
**:** 南ア市場休場
07:45 NZ1〜3月期GDP ☆
08:50 本邦5月貿易収支(通関)
10:30 豪州5月失業率
16:00 イタリア中銀総裁講演
16:30 スイス中銀政策金利発表 ☆
16:45 フランス中銀総裁講演 ☆
16:50 パネッタECB理事講演

17:00 スロベニア中銀総裁講演
17:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
18:30 オランダ中銀総裁、スペイン中銀総裁、ポルトガル中銀総裁講演
20:00 英中銀MPC政策金利、議事要旨発表 ☆
21:30 フィラデルフィア連銀製造業景況指数
21:30 米国5月住宅着工・建築許可
21:30 米国新規失業保険申請件数

6月17日(金)
**:** 日銀会合結果発表
15:00 英国5月小売売上高
15:30 黒田日銀総裁会見 ☆
18:00 ユーロ圏5月CPI ☆
22:15 米国5月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国5月景気先行指数

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は¬東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月6日(月)
ドル円はNY市場まで高値圏でのもみあいを続けていました。NY市場では米金利が上昇し10年債利回りが3%の大台乗せ、その後も上昇を続け引け間際には3.047%にまで上昇する動きとなりました。ドル円は米金利上昇に素直に反応しNY市場では年初来高値を上抜け132.01レベルの高値をつけた後、若干押して引けました。

6月7日(火)
ドル円は前日NY市場の流れを受けたドル買いが先行する中、黒田日銀総裁が参議院の委員会で大規模緩和継続に言及したことからじりじりと水準を切り上げ、15時過ぎには一時133.00の高値をつけました。米金利も東京後場に3.062%まで上昇していましたが、その後はNY後場まで水準を下げる動きとともにドル円も上値が重くなっての引けとなりました。

6月8日(水)
ドル円は東京早朝から円安が強まり、前日高値133.00レベルを上抜けると着実に円安が進行する流れとなりました。NY市場では米金利が3.038%まで上昇する動きとともに134.48レベルと2002年以来の高値を更新し、引けにかけてはやや押して引けました。

6月9日(木)
ドル円は早朝には前日の流れを続け134.56レベルと高値をわずかに切り上げましたがそこまで。その後は米金利の動きとともに欧州市場昼前には133.18レベルまで売られ、NY市場では東京前場の水準に戻す行って来いの動きとなりました。

6月10日(金)
ドル円は東京市場では週末前のポジション調整と見られるドル売りが先行、後場には財務省、金融庁、日銀が為替相場の急変動は望ましく無いとの共同声明を出し、財務官も最近の円安を憂慮とこれまでよりも一歩踏み込んだ表現を使ったことで一時133.36レベルの安値をつけました。しかし海外市場に移るとユーロドルを中心にドル買いの動きへと転じ、米国CPIが予想を超える8.6%となり米金利が3.178%まで上昇する動きとともにドル全面高となり、ドル円は東京朝の高値圏に戻して引けました。

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