トルコリラ円見通し 新発国債発行政策での反騰続かず円安とリラ安の綱引き続く(22/6/13)

トルコリラ円の6月10日は7.92円から7.74円の取引レンジ、11日早朝の終値は7.83円で前日終値の7.81円からは0.02円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し 新発国債発行政策での反騰続かず円安とリラ安の綱引き続く(22/6/13)

トルコリラ円見通し 新発国債発行政策での反騰続かず円安とリラ安の綱引き続く

〇トルコリラ円、新型国債発行政策受け6/10未明7.98へ急反騰、その後7.74へ急落
〇対ドル16.76へ反騰するが一時的、6/13午前17.20リラ台で開始、安値更新伺いやすい
〇エルドアン大統領、再選目指しリラ防衛策提示、物価高とリラ安収束が課題
〇7.90から7.95にかけてのゾーンは反落注意とする
〇7.73割れからは7.60円台後半(7.70から7.65)を目指すとみる

【概況】

トルコリラ円の6月10日は7.92円から7.74円の取引レンジ、11日早朝の終値は7.83円で前日終値の7.81円からは0.02円の円安リラ高だった。
ドル高リラ安が進行する中でもドル円の上昇を中心にクロス円全般が上昇したことによる円安効果を背景にトルコリラ円は5月26日安値7.71円から6月7日午後高値7.99円まで上昇してきたが、6月4日未明と7日午後の二度の8円到達挑戦に失敗してダブルトップ型を形成した。その後は対ドルでのリラ安が一段と加速したこととドル円の大上昇も6月9日午前高値134.55円で行き詰まったことで下落に転じて6月9日夜には7.73円まで下落した。

しかし6月9日にトルコ財務相が国営企業売上連動型の新型国債を発行してクーポンで最低利回り保証を行うなどのリラ防衛政策を発表したことに対する市場の受け止め方の混乱により乱高下となり、6月10日未明に7.98円へ急反騰したところから10日午後安値7.74円へ急落し、その後に7.90円台へ戻すという乱調な展開となった。
6月3日のトルコ5月消費者物価上昇率の跳ね上がり、6日のエルドアン大統領による利下げ政策継続演説、6月9日の来年大統領選挙への再出馬表明と新型国債発行発表など、材料的にも波乱に満ちた展開が続いている。週間では6月3日終値7.97円から0.14円の円高リラ安だった。

【ドル高リラ安基調は継続、新型国債発行報道による反騰も一時的】

ドル/トルコリラの6月9日は17.27リラから16.90リラの取引レンジ、11日早朝の終値は17.07リラで前日終値の17.19リラからは0.12リラのドル安リラ高となった。
高インフレ進行にもかかわらずエルドアン大統領が利下げ政策を継続すると演説した6日に16.60リラへ下落、7日には17リラを突破し、6月9日には17.27リラまで安値を更新してきたが、9日のリラ防衛を目的とした利回り保証付き国営企業収益連動債の発行政策発表からいったん16.76リラへ反騰、買い一巡から再び17.27ドルまで急落する「往って来い」となり、10日も16.90リラへ反騰してから17リラ台へと下落するなど乱調な展開を続けた。
週間では6月3日終値の16.41リラから0.66リラのドル高リラ安だった。
昨年12月20日に18.36リラの史上最安値をつけたが、終値ベースでは12月17日の16.41リラが最安値だったところ、6月2日終値で16.45リラをつけて最安値更新となり、6月9日終値17.19リラまで終値ベースの最安値更新が続いた。
週明けの6月13日午前は17.20リラ台で開始、リラ安基調の範囲で安値更新を伺いやすい位置にある。

【来年の再選へ向けたエルドアン政権のリラ防衛策とインフレ深刻化によるリラ安の攻防】

エルドアン大統領は6月9日に来年の大統領選挙は6月半ばとして再選を目指して出馬を表明した。
6月3日に発表された5月のトルコ消費者物価上昇率は全体の前年比が73.50%となり4月の69.97%から跳ね上がり、食品やエネルギーを除くコア指数も4月の52.4%から56.0%へと上昇、生産者物価に至っては4月の121.82%から5月は132.16%へと大幅に加速している。ガソリン価格高騰に加えてトルコ国内の電気ガス料金も大幅に引き上げられており6月の物価上昇率も収まらないだろうと思われる。
エルドアン大統領は6月6日に高インフレでも利下げ政策を継続すると演説し、「利下げが融資を促進して企業活動を支え、リラ安が輸出促進と観光収入の拡大を呼び経常収支が改善してトルコ経済が強くなりリラも安定する」との持論を展開した。この演説からリラ売りは一段と勢い付いたわけだが、物価高とリラ安が収まらないとエルドアン政権への支持率低下により来年の再選も難しくなる。

昨年末のリラ預金の為替差損補填政策や、今年に入ってからも最低賃金の引き上げ、付加価値税の大幅引き下げ、輸出企業の外貨収益の中銀などへの強制的な預け入れ政策、融資金利規制、そして6月9日の新型利回り保証債発行などを打ち出しており、今後もリラ防衛やインフレ対策での国民生活救済策を繰り出してくる可能性がある。またトルコ中銀や財務省及び通貨当局による為替取引規制を始める可能性も警戒される。
こうした状況を踏まえて、リラ安基調は継続しつつも1ドル17リラを超えて来た中でリラの売られ過ぎ警戒感も見られつつ一段とリラ安が加速しやすい状況も続いているところと思われる。

【円安とリラ安の弱さ比べ、当面のポイント】

【円安とリラ安の弱さ比べ、当面のポイント】

ドル円は2021年1月底102.57円を起点として歴史的な大上昇=円安となっているが、6月9日高値134.55円まで31.2%のドル高円安となっている。一方でドル/トルコリラは昨年12月23日の10.06リラから今年6月9日の17.27リラまで71.7%のドル高リラ安である。
主要国が利上げと金融引き締めへ向かう中で金融緩和政策から抜け出せない日銀は出遅れ、取り残された状況にあって円売り圧力が日々増している状況にある。一方のトルコ中銀も大統領の圧力で利上げできずに政策金利の据え置きから利下げを目指さざるを得ない状況にある。
トルコリラ円は弱い円と弱いリラ同士の綱引きが続くため、円安がクローズアップされる局面では円安に押し上げられるものの、リラ安が勢い付けば円安では支えきれずに押し下げられる展開となりやすい。5月後半からの現状は7.70円台序盤で買い支えられつつ8円には届かない範囲での持ち合いと見ることもできるが、4月28日高値8.87円から5月26日安値7.71円へ下落した後の下げ一服型の持ち合いの様相であり、持ち合い上放れよりも下放れが心配されるところと思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当面、6月9日安値7.73円を下値支持線、6月10日早朝の反騰時高値7.98円を上値抵抗線とした持ち合いの中での逆張り展開を続けながら持ち合い下放れを試しやすい状況にあると考える。
(2)7.90円から7.95円にかけてのゾーンは反落注意とし、7.98円手前へ上昇する場合も新たな押し上げ材料がなければ戻り売りにつかまりやすいとみる。
(3)7.77円以下での推移中は下向きとし、7.73円割れからは7.60円台後半(7.70円から7.65円)を目指すとみる。7.70円を割り込んだ後は中期的にも下落基調がさらに進みやすくなると考える。

【当面の主な予定】

6月13日
 16:00 4月 鉱工業生産 前月比 (3月 -1.8%)
 16:00 4月 鉱工業生産 前年同月比 (3月 9.6%、予想 7.95%)
 16:00 4月 小売売上高 前月比 (3月 0.3%)
 16:00 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 2.5%)
 16:00 4月 経常収支 (3月 -55.54億ドル、予想 -28.5億ドル)
6月15日
 17:00 5月 財政収支 (4月 -517.7億リラ)
6月16日 週次 外貨準備高 6/10時点 グロス (6/3時点 614.6億ドル)
     週次 外貨準備高 6/10時点 ネット (6/3時点 105.2億ドル)
6月17日
 16:00 トルコ中銀年末消費者物価上昇率予想値 (5月 57.92%)
6月20日
 17:00 5月 観光客数 前年同月比 (4月 225.6%)
 23:30 5月 中央政府債務 (4月 312.5億リラ)
6月22日
 16:00 6月 消費者信頼感指数 (5月 67.6)
6月23日
 20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 14.00%)
 
注:ポイント要約は編集部

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