『エルドアン大統領によるハト派発言やCDS急騰でリラ売り再開』
〇今週のトルコ円、火曜に8.04まで上昇後、週後半にかけて週間安値7.72まで下落
〇エルドアン大統領の利下げ継続発言、トルコCDSの急上昇等が背景
〇週末にかけてはトルコ財務省によるリラ売り抑制策の追加発表等から小幅反発、7.83台の推移
〇テクニカルには主要サポートポイント下抜け、強い売りシグナルも点灯、地合いは「極めて弱い」
〇ファンダメンタルズもトルコリラ円の下落を連想させる材料増加
〇トルコリラ円相場の続落をメインシナリオとして予想、来週の予想レンジ(TRYJPY):7.60ー8.00
今週のレビュー(6/6−6/10)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初7.97円で寄り付いた後、翌6/7にかけて、週間高値8.04円まで上昇しました。しかし、@エルドアン大統領による「現政府が利上げすることはない。引き続き利下げしていく」とのハト派的な発言(前年比・物価上昇率が70%を超える激しいインフレ下においても尚トルコ政府・中銀は利下げスタンスを強調→実質金利低下圧力→トルコリラ売り)や、Aトルコ5年物クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の急上昇(トルコ国債の債務不履行を織り込む動き→2008年の世界金融危機以来の高水準を記録)、Bトルコ経済の先行き不透明感、Cテクニカル的な地合いの弱さが重石となり、週後半にかけて、週間安値7.72円まで下落しました。もっとも、5/26に記録した直近安値7.68円をバックに下げ渋ると、Dトルコ財務省によるリラ売り抑制策の追加発表(リラ建て資産の貯蓄を促す目的で国営企業の売上高に連動する国内債券を発行。クーポン支払いで最低利回りは保証)などが支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/11午前4時30分現在)では、7.83円前後で推移しております。
来週の見通し(6/13−6/18)
トルコリラの対円相場は、週後半にかけて安値7.72円まで下げ幅を広げ、5/26に記録した約5ヵ月ぶり安値7.68円(昨年12/20以来の安値圏)まであと一歩に迫りました。ローソク足が主要サポートポイント(一目均衡表転換線や基準線、21日移動平均線や90日移動平均線)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する「一目均衡表三役逆転、弱気のパーフェクトオーダー、ダウ理論の下落トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます(円独歩安の地合いにも係わらず、対円でトルコリラは下落→トルコリラが今週の最弱通貨)。
また、ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクは両国と親密な関係にあるトルコ経済に下押し圧力)や、Aトルコ・NATO間の軋轢懸念(トルコ政府はフィンランド・スウェーデンの北欧2カ国のNATO加盟に引き続き反対)、Bトルコ政府・中銀による利下げスタンスの再確認(先週発表されたトルコ5月消費者物価指数が前年比+73.5%と約24年ぶり高水準を記録したにも係わらず、エルドアン大統領は今週「現政府が利上げすることはない。引き続き利下げしていく」とハト派スタンスを再強調)、C上記Bを背景としたトルコリラの実質金利低下圧力、D米国および欧州によるタカ派傾斜観測(トルコから米国・欧州への資金流出懸念)、Eトルコ経済の先行き不透明感(インフレ昂進に伴うトルコ経済への下押し圧力)、F経常赤字拡大に伴う構造的なリラ売り圧力、
G外貨準備減少に伴うリラ売り防衛能力の脆弱さ、Hエルドアン大統領に対する求心力低下(エルドアン大統領は来年6月に予定されている大統領選への出馬を表明するも、ユーラシア公共研究センターの世論調査によると、エルドアン大統領の支持率低下傾向が鮮明)など、トルコリラ円相場の下落を連想させる材料が増えつつあります。
以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の続落をメインシナリオとして予想いたします。今週はリラ売り抑制を目的に国営企業の売上高に連動する最低利回り保証付き国内債券の発行が発表されましたが、リラ買いでの反応は一時的なものに留まりました。資本規制を通じたリラ売り抑制が効きづらくなってきており、近い将来のリラ急落リスクに注意が必要でしょう。尚、来週は6/13に予定されているトルコ4月鉱工業生産、トルコ4月小売売上高、トルコ4月経常収支、6/15のトルコ5月財政収支に注目が集まります(市場予想を下回る冴えない結果が示されれば、リラ売り圧力が一段と強まる恐れ)。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.60ー8.00
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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