来週の為替相場見通し:『ドル円は約20年4ヵ月ぶり高値圏へ急伸。来週はFOMCに注目』(6/11朝)

ドル円は5/24に記録した直近安値126.36(4/18以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今後半にかけて、一時134.56まで急伸しました

来週の為替相場見通し:『ドル円は約20年4ヵ月ぶり高値圏へ急伸。来週はFOMCに注目』(6/11朝)

『ドル円は約20年4ヵ月ぶり高値圏へ急伸。来週はFOMCに注目』

ポイント要約
〇今週のドル円、週明け早々130.43まで下落後、週後半にかけて、週間高値134.56まで急伸
〇心理的節目131.00、132.00、133.00、134.00を一気に突破、約20年4ヵ月ぶり高値圏へ
〇株価の堅調、黒田総裁から繰り返されたハト派発言、原油価格、米金利の上昇等が背景
〇財務省・金融庁・日銀による3者合同の円安けん制声明で一時133.37まで反落するも底堅く
〇週末米CPIが予想外の前年比8.6%の高率となると、134.40前後まで持ち直して越週
〇ユーロドル、ECB理事会のタカ派姿勢鮮明化に、理事会後週間高値1.0775まで急伸
〇その後は欧州スタグフレーション懸念、週末の米CPI急騰を受け、1.0506まで急落
〇ドル円、主要レジスタンスポイントを軒並み上抜け、強い買いシグナルも点灯、テクニカルの地合い強い
〇ファンダメンタルズも米10年債利回りが一時3.17%へ急上昇する等ドル買い材料多い
〇6/14ー15の米FOMC、0.5%の利上げ織り込み、注目ポイントは経済見通しとドットチャート
〇日銀政策決定会合は財務省・金融庁・日銀声明を受けての黒田総裁のスタンスに変化に注意
〇来週の予想レンジ(USDJPY):132.50ー136.50、(EURUSD):1.0350−1.0650

今週のレビュー(6/6−6/10)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初130.85で寄り付いた後、早々に週間安値130.43まで下落しました。しかし、売り一巡後に下げ渋ると(心理的節目130.00をバックに押し目買い圧力が強まると)、@株式市場の堅調推移(日経平均株価の堅調推移→リスク選好の円売り再開)や、A黒田日銀総裁による「揺るぎない姿勢で金融緩和を継続していく」「金融引き締めを行う状況には全くない」とのハト派的な発言、B原油先物価格の堅調推移(本邦貿易赤字の拡大懸念→構造的な円売り圧力)、C米金利上昇に伴うドル買い圧力、D直近高値突破に伴う仕掛け的なドル買い・円売り(5/9に記録した直近高値131.36を上方ブレイク)、E心理的節目突破に伴うパニック的な円売り圧力(心理的節目131.00、132.00、133.00、134.00を一気に突破)、F豪州中銀による50bpの大幅利上げ(日本と世界の金融政策格差→クロス円上昇→ドル円連れ高)、G本邦輸入企業と思しき実需のドル買い・円売りが支援材料となり、週後半にかけて、週間高値134.56まで急伸しました(2002年2月以来、約20年4ヵ月ぶり高値圏)。

もっとも、心理的節目135.00をバックに伸び悩むと、H財務省・金融庁・日銀による3者合同での「最近の為替市場では急速な円安の進行が見られ憂慮している」「各国通貨当局と緊密な意思疎通を図り必要な場合には適切な対応を取る」との円安牽制を企図した声明文が重石となり、週末にかけて一時133.37まで下落する場面も見られました。しかし、I注目された米5月消費者物価指数(結果8.6%、予想8.3%、※前年同月比)が市場予想を大幅に上回ると、J米長期金利の急上昇(米CPIの高止まり→インフレピークアウト論の後退→米FRBによる大幅利上げが9月以降も続くとの見方が再燃→米10年債利回りが一時3.17%まで急上昇→米ドル買い)が支援材料となり、本稿執筆時点(日本時間6/11午前5時00分現在)では、直近高値圏となる134.40前後まで持ち直す動きとなっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.0722で寄り付いた後、@ECB理事会を控えたポジション調整(ECBによるタカ派傾斜観測→欧州債利回り急上昇→ユーロショート解消)や、Aユーロ圏第1四半期GDP改定値(結果5.4%、予想5.1%)の力強い結果、BECB理事会およびラガルドECB総裁記者会見のタカ派的な結果(ECB理事会にて、資産購入プログラム=APPの7/1付け終了決定や、次回7/21理事会での25bp利上げ方針発表、次々回9/8理事会での大幅利上げ=50bpの可能性が示唆されたことに加えて、ラガルドECB総裁からも「インフレリスクは主として上方向」「次回7/21理事会で主要金利を25bp引き上げる意向」「9月にも主要金利が再び引き上げられる可能性がある」とのタカ派的な発言)が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値1.0775まで急伸しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと(一目均衡表「雲」をバックに続伸が阻まれると)、C欧州経済の先行き不透明感(スタグフレーション懸念が燻る中でのECBによるタカ派傾斜→欧州経済への下押し圧力→欧州株下落→ユーロ下落)や、D米5月消費者物価指数の更なる上昇(米FRBが今秋以降も金融引き締めスタンスを長期化させるとの思惑→米長期金利急上昇→過剰流動性相場逆流懸念→資産現金化需要のドル買い圧力)が重石となり、週末にかけて、週間安値1.0506まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間6/11午前5時00分現在)では、1.0520前後で推移しております。

来週の見通し(6/13−6/17)

<ドル円相場>
ドル円は5/24に記録した直近安値126.36(4/18以来の安値圏)をボトムに反発に転じると、今後半にかけて、一時134.56まで急伸しました(わずか12営業日で8.2円の急騰劇)。この間、主要レジスタンスポイントを軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「一目均衡表三役好転、強気のパーフェクトオーダー、強気のバンドウォーク、ダウ理論の上昇トレンド」も全て成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます(目先は心理的節目135.00や、2002年1月31日に記録した高値135.18を試すシナリオを想定)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@米FRBによる金融引き締めスタンスの明確化(バランスシート圧縮と大幅利上げの組み合わせ。米CPIの高止まりが示されたことで6月・7月の50bp利上げに加えて、9月以降も50bpの大幅利上げが続く見込み)や、

A日銀による金融緩和の長期化姿勢(黒田日銀総裁は今週も金融緩和スタンスを崩さなかった他、「金融引き締めを行う状況には全くない」と完全否定)、B上記@Aを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り。米10年債利回りは一時3.17%へ急上昇。一方本邦の10年債利回りはイールドカーブコントロール政策における長期金利の許容変動幅の上限0.25%で張り付き状態)、C資源価格上昇に伴う本邦貿易赤字の拡大懸念(経常収支悪化に伴う構造的な円売り圧力)、D世界的な円売り地合い(米国に続いて、英国・カナダ・ニュージーランド・オーストラリア・南アフリカ・メキシコ・チリ・ポーランド・マレーシア・ペルー・フィリピン・ハンガリー・韓国・ユーロ圏などが金融引き締めスタンスに転換→日本と世界の名目金利差拡大→クロス円上昇→ドル円連れ高)など、ドル円相場の続伸を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の上昇をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は日米の金融政策イベントに注目が集まります。まず、6/14ー6/15の日程で開催される米FOMCについては、事前告知がなされていた通り、50bpの利上げ実施が想定されます。また、バランスシート圧縮についても、7月・8月の475億ドルの縮小方針は維持されると考えられます。このため、注目ポイントは経済見通し(SEP)とドットチャートに移っています。具体的には経済見通し(SEP)で米国のスタグフレーション懸念が示されるか否か、ドットチャートで9月以降の利上げ継続姿勢が示されるか否かが注目されます。SEPでスタグフレーション懸念が示される場合や、ドットチャートで9月以降の利上げが示される場合には、米主要株価指数のクラッシュを通じて、ボラティリティが高まるシナリオが警戒されます(※資産現金化需要のドル買いと、日米金利差拡大に伴うドル買いが組み合わさることからドル円には強い上昇圧力が加わると想定。リスク回避の円買いは想定されず)。

一方、日銀金融政策決定会合については、現行政策の据え置きが見込まれることから、黒田総裁記者会見に注目が集まります。黒田総裁は今週も立て続けに金融緩和スタンスの継続姿勢を強調しているため、基本的には来週の記者会見においても同様の見解を繰り返すことが想定されます。但し、やや注意が必要な点として、今週末に財務省・金融庁・日銀が3者合同で「最近の為替市場では急速な円安の進行が見られ憂慮している」「各国通貨当局と緊密な意思疎通を図り必要な場合には適切な対応を取る」と円安牽制を企図する声明を出しているため、本件を受けて黒田総裁のスタンスに変化が見られれば、一時的に円ショートが巻き戻されるリスクがありそうです(一方、スタンスに変化が無ければ、円安容認→ドル円上昇に繋がる可能性あり)。来週も週を通してボラタイルな相場展開が続くと見られ、比較的早いタイミングで心理的節目135.00や、2002年1月31日高値135.18を上抜ける展開を想定いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):132.50ー136.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は6/9に記録した高値1.0775をトップに反落に転じると、週末にかけて、一時1.0506まで急落しました。この間、主要サポートライン(一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドや21日移動平均線)を軒並み下抜けした他、日足ダブルトップのネックライン割れも実現するなど、テクニカル的に見て、地合いの悪化を印象付けるチャート形状となりつつあります。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシアを巡る地政学的リスクの長期化懸念(資源価格の上昇リスク)や、A欧州経済の先行き不透明感(インフレ加速と景気後退が同時進行するスタグフレーション懸念。事実ECB理事会が発表した2022年のインフレ見通しは前回3月時点の5.1%から6.8%に上方修正された一方、2022年のGDP見通しは前回3月時点の3.7%から2.8%へ下方修正)、B上記Aを背景としたECBによる金融引き締めの副作用(欧州経済にスタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めとなるため運営難易度は極めて高い→一歩間違えれば欧州経済を大きく冷え込ませてしまうリスクあり)、C米FRBによるタカ派傾斜(米欧名目金利差拡大に伴うユーロ売り・ドル買い圧力)など、ユーロドル相場の続落を連想させる材料が揃っています。

以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は6/14のドイツ6月ZEW景況感調査に加えて、複数の欧州当局者発言(オーストラリア中銀ホルツマン総裁、リトアニア中銀シムカス総裁、デギンドスECB副総裁、シュナーベルECB専務理事、ドイツ連銀ナーゲル総裁、スペイン中銀デコス総裁、パネッタECB専務理事、オランダ中銀クノット総裁、ポルトガル中銀センテノ総裁、ラガルドECB総裁、イタリア中銀ビスコ総裁、フランス中銀ビルロワドガロー総裁、スロベニア中銀バスレ総裁など)が予定されております。ドイツZEW景況感調査が市場予想を下回る場合(欧州経済を巡る悲観論再燃)や、欧州当局者よりタカ派的な発言が相次ぐ場合(スタグフレーション懸念が燻る中での金融引き締めは欧州経済の逆風)などには、欧州株の下落を通じて、ユーロドルにもう一段下押し圧力が加わる展開が予想されるため、来週は週を通して下落リスクに注意を要する1週間となりそうです(短期上昇トレンドが終焉し、短期下落トレンドが始まったと整理)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0350−1.0650

注:ポイント要約は編集部

『ドル円は約20年4ヵ月ぶり高値圏へ急伸。来週はFOMCに注目』

ドル円日足

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