ドル高継続するも円安けん制発言に注意
〇ドル円117円台、先週もロシアによるウクライナへの攻撃続き、有事深刻化も想定した米ドル買い続く
〇15日発表のPPIはコンセンサス10.0%、16日のFOMCは0.25%の利上げと連続利上げへの言及を予想
〇17日英中銀MPCは0.75%利上げ、18日日銀会合は現状維持がコンセンサス、円安容認姿勢に修正あるか
〇トランプラリー時の2016年12月高値118.65が今後の重要なターゲット兼レジスタンス
〇今週は年初来高値116.35レベルをサポートに118.00レベルをレジスタンスとする
今週の週間見通し
先週もロシアによるウクライナ攻撃が続き、対ロシア経済制裁による物価上昇と世界景気減速への警戒感が大きかったのですが、ロシアの当初の戦略通りに事が進まず、もしプーチンが追い込まれたらNATO軍も巻き込まれる可能性があるという点で、軍事力を背景とした米ドル買いが続いています。
また今週16日のFOMCに向けて日米金利差拡大もドル買い材料となっていますが、パウエル議長が議会証言で0.25%の利上げを支持すると発言して以降は0.25%利上げを織り込んでいるため、それ以上の利上げを考える向きはほとんどいません。3月限のFF先物も0.21%での取引となっていて、現在の焦点は議長会見と今後の利上げペースについてという点です。ただ、2022年12月限のFF先物は1.725%と一時期に比べ再びタカ派的な見方での取引となっています。
先週発表されたCPIも予想通りとはいえ7.9%とかなり高い水準であったこと、またFOMC前日の15日にはPPIの発表もありますが、こちらのコンセンサスは10.0%と二桁予想となっていて、多少の上下があったとしても今後のCPIへの波及を考えると、次回FOMCでも利上げをするといった連続利上げへの言及はあるものと考えています。
また今週は英中銀MPCが17日にあり、こちらも0.75%への利上げがコンセンサスです。18日の日銀会合は現状維持ですが、エネルギー価格がここまで上昇してきていること、また円相場が117円台とトランプラリー時の水準に迫ってきていることによる輸入物価の上昇を考えると黒田日銀総裁もいつまでも円安がいいなどとのんきな発言は出来ないはずです。このあたりに修正がはいってくるのかどうかも気になります。
ドル円は週明けもさらに円安が続いていますが、上述の通り次のターゲットはトランプラリー相場にまで遡る必要がありますので、今週は月足チャートから見て行きます。
青の水平線がトランプラリー時の2016年12月高値118.65とその後の安値、赤の水平線が2015年高値とその後の安値を示しています。これまでレジスタンスにあたる水準は次々と上抜けしてきましたので、次のターゲットは118.65、そして119.92と120円の大台となっています。まずはこの118.65が今後のテクニカルな観点では重要なターゲット兼レジスタンスとなってきます。
現在実効レートから考えると変動相場制移行後円はもっとも安い水準にあります。エネルギーだけでなく多くの海外からの物の価格が大きく上昇しているため、一部の当局の発言に見られるような過度な円安に対する警戒感も出てくる可能性が高いと見ています。おそらくトランプラリー高値を超えると円安が止まらなくなると見て、118円台では政府関係者からけん制発言が出てくる可能性が相当に高いと見ていた方が良いでしょう。
いつもの日足チャートもご覧ください。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
上にある赤い水平線が118.65です。また11月高値と1月高値を結んだラインが現在117.70レベルを上昇中で、いったん調整が入りやすい水準にも見えます。材料的にはドル買いのほうが多く、停戦などウクライナ情勢の好転によるユーロ買い・ドル売りの動きも、現時点ではすぐに実現する感じではありません。
今週もドルの押し目買いが続きやすい地合いは変わらず、これまでの年初来高値116.35レベルをサポートに118.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。下方向に余裕を見た理由は円安けん制発言の可能性を警戒しているためです。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
3月14日(月)
16:45 フランス1月貿易収支
**:** 米国夏時間開始 ☆
**:** ユーロ圏財務相会合 ☆
3月15日(火)
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表
09:30 豪州10〜12月期住宅価格
11:00 中国2月鉱工業生産、小売売上高
16:00 英国2月失業率
16:45 フランス2月CPI
19:00 ドイツ3月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏3月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏1月鉱工業生産
21:30 米国2月PPI ☆
21:30 米国3月NY連銀製造業景況指数
**:** EU財務相会合 ☆
**:** FOMC(〜16日)
3月16日(水)
08:50 本邦2月貿易収支(通関)
20:00 南ア1月小売売上高
21:30 米国2月小売売上高
21:30 米国1月輸入物価
23:00 米国3月NAHB住宅指数
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC結果発表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆
3月17日(木)
**:** 日銀会合(〜18日)
09:30 豪州2月失業率
17:00 南ア1〜3月期消費者信頼感
18:30 ラガルドECB総裁講演 ☆
19:00 ユーロ圏2月CPI
19:15 レーンECB理事講演 ☆
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:00 英中銀MPC結果発表 ☆
21:15 シュナーベルECB理事講演
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
21:30 米国2月住宅着工・建築許可
22:15 米国2月鉱工業生産、設備稼働率
23:30 イタリア中銀総裁講演
3月18日(金)
**:** 日銀会合結果発表
15:30 黒田日銀総裁会見 ☆
19:00 ユーロ圏1月貿易収支
23:00 米国2月景気先行指数
23:00 米国2月中古住宅販売
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
3月7日(月)
週明けもウクライナ情勢が市場参加者の焦点となりましたが、ロシアへの追加制裁のうちロシア産原油の禁輸措置を材料に原油をはじめエネルギー価格が高騰し景気に与える影響が注目材料となりました。NY市場ではウクライナとロシアの停戦協議への期待感は強かったものの成果は無く、引き続き経過を見たいという流れでした。ドル円は終日ドルがじり高の展開を辿りましたが、これは金曜の動きに対する調整に過ぎず、軍事力を背景とした有事のドル買い状況が続くという週明けとなりました。
3月8日(火)
ドル円は前日の流れを受けて底堅い展開が続きましたが、海外市場に移ってからはユーロ円が買われる動きにも引っ張られて115.79レベルまで上昇。その後やや押して引けましたが、ユーロ円が1円68銭もの値幅を伴った動きに対してドル円は55銭と積極的に取引しようという流れではありませんでした。
3月9日(水)
ドル円は終日動きが鈍く115.80レベルを中心としたもみあいに終始していました。NY市場で一時的に押しが入った局面でもすかさず買いが入るという展開で、その動きを含めても38銭レンジに留まっていました。
3月10日(木)
ドル円は東京前場の実需のドル買いと日経平均高にも支えられて116.20レベルまで上昇したものの後場には行って来いとなり115円台後半での海外市場入り。NY市場までは横ばいが続きましたが、米国CPIが7.9%となり米金利上昇の動きがドル買い材料となりました。しかし、東京前場高値に近づいたものの抜けられず、若干押しての引けとなりました。
3月11日(金)
ドル円は円安が進み117円台前半での引けとなりました。材料的には軍事的なリスクを背景とした米ドル買い、16日FOMCでの利上げ織り込みが大きいのですが、きっかけは年初来高値116.35レベルを上抜けたことによるテクニカルな買いが出たことでした。その後は押しらしい押しも挟まずにほぼ寄り付き安値高値引けの一日で終わりました。
ディスクレーマー
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