トルコリラ円見通し ドル円の急伸で7.80円割れから反発するも対ドルでの下落基調は継続(22/3/14)

トルコリラ円の3月11日は7.97円から7.79円の取引レンジ、12日早朝の終値は7.91円で前日終値の7.81円からは0.10円の円安リラ高だった。

トルコリラ円見通し ドル円の急伸で7.80円割れから反発するも対ドルでの下落基調は継続(22/3/14)

ドル円の急伸で7.80円割れから反発するも対ドルでの下落基調は継続

〇トルコリラ円、トルコ経済指標悪化で11日夕刻7.80割れ、その後はドル円急伸で7.97台へ反騰
〇対ドル、ウクライナ情勢悪化に14.99まで安値更新の後、11日深夜にかけ買い戻しが入り9日ぶりに反発
〇ただしロシアウクライナ戦争の泥沼化と経済制裁によるインフレに激化にリラ下落基調は継続しやすいか
〇トルコ1月経常収支、17年12月以来の大規模赤字、リラ安再燃で悪循環の危険も
〇7.85を上回るうちは上昇余地ありとし、8.00超えからは8.05前後への上昇を想定する
〇7.85割れからは7.77試しとし、底割れからは7.70前後への下落を想定する
〇3/17未明米FOMC、同日夜トルコ中銀政策発表予定、ドル円上昇とドル高リラ安加速に注意

【概況】

トルコリラ円の3月11日は7.97円から7.79円の取引レンジ、12日早朝の終値は7.91円で前日終値の7.81円からは0.10円の円安リラ高だった。
3月11日16時に発表されたトルコ1月経常収支が予想を大幅に下回る赤字拡大となり、鉱工業生産や小売売上高も前月比でマイナスとなり予想を下回ったことから発表後にはリラ売り反応が見られたものの、ドル円が午後に116.50円を超えてから夕刻に117円台に到達するところまで急伸したことからリラ安も限定的となり、対ドルでのリラ売りが一巡したところからはドル円の急伸継続からトルコリラ円も反騰に入り、経済指標発表直後の7.80円割れの水準から7.97円台へ反騰した。
ウクライナ戦争とロシア制裁による混乱を背景に地政学的に近いトルコリラも売られたことで2月28日から3月10日までは9日間の続落だったが、11日は売り一服で10日ぶりの反発となった。週間では前週末の8.09円から0.18円の円高リラ安だった。

【ドル/トルコリラ動向 安値更新後に戻して9日ぶりの反発】

ドル/トルコリラの3月11日は14.99リラから14.64リラの取引レンジ、12日早朝の終値は14.76リラで前日終値の14.81リラからは0.05リラのドル安リラ高だった。
ウクライナ情勢の悪化によるドル高に押されて3月1日から3月10日までは8日間の続落となり、11日も14.99リラへ安値を更新したものの、リラ売り一服で買い戻し優勢となったことで11日深夜へ反発したために9日ぶりの反発で終了した。
週間では前週末の14.18リラからは0.58リラのドル高リラ安であり、15リラ台への下落を時期尚早として戻したものの近隣のロシア・ウクライナ戦争の泥沼化とロシア制裁による資源エネルギーや穀物価格等の高騰を踏まえると、ウクライナ情勢の発生前から高インフレに陥ってきたトルコにとってはインフレが一層深刻化する可能性が高まっている状況にあり、13リラ台での持ち合いから下放れた下落基調は継続しやすいと思われる。

【トルコの1月経常収支は2017年12月以来の赤字】

【トルコの1月経常収支は2017年12月以来の赤字】

3月11日16時に発表されたトルコの1月経常収支は71.12億ドルの赤字となった。昨年8月から10月までは黒字となっていたが、リラ暴落の影響で11月に28.03億ドルの赤字に転落し、12月が38.17億ドルの赤字、1月は12月の倍近い赤字の拡大で2017年12月の72.6億ドルの赤字以来の規模となった。
トルコは構造的な経常赤字国であり、貿易赤字を観光収入が埋め合わせてきたが、高インフレにもかかわらず4会合連続利下げを強行したことによるリラ暴落を反映して貿易赤字が11月から1月にかけて急増したことを反映したと思われる。
1月から2月にかけてはリラ暴落もひとまず落ち着いたことで2月はやや改善の可能性もあるが、ウクライナ情勢の深刻化が3月に入ってからリラ安を再燃させていることからさらに経常赤字の拡大を招き、外貨準備高と経常赤字拡大がさらにリラ安を招くような悪循環となりかねない。

経常収支と同時に発表された1月の鉱工業生産は前月比2.4%減となり12月の1.7%増から悪化、前年同期比も12月の14.4%増から7.6%増へと伸びは半減した。小売売上高の前月比は1.5%減となり12月の2.2%減から2か月連続のマイナスで、前年同月比は12月の13.0%増から7.9%増へと伸びが大幅に鈍化した。高インフレは続いているため、インフレによる買い控えも続きやすいところだ。

【2月28日からの下落一服だが基調は下向き】

【2月28日からの下落一服だが基調は下向き】

トルコリラ円は2月24日にロシア軍がウクライナに本格侵攻した際に7.84円へ急落し、いったんは2月25日深夜と2月28日夜に8.40円まで戻したものの、その後は連日の下落で3月10日夜に7.77円まで安値を切り下げた。12月の乱高下が落ち着いて8円台での持ち合いを2か月近く続けていたところから転落したことにより、12月23日にリラ預金為替差損補填政策により一時的に急伸したところからは持ち合いを挟んで二段下げ型に発展している。
トルコとしては近隣の戦争により地政学的リスクが他の新興国通貨と比較しても大きく、ウクライナとロシアに対する通商依存度が高いこと、ロシア制裁による世界経済への悪影響と高インフレ継続懸念は大きな重圧であり、そうした中でトルコリラへの売り圧力も増してゆくことが懸念される。
3月10日安値からいったん戻したものの8円には届かずにいること、下放れする前の持ち合いにおける下値支持線が今度は上値抵抗線に変わって壁となることを踏まえれば、戻り売り有利の情勢での推移が続くのではないかと思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7.85円を下値支持線、8.00円を上値抵抗線とする。
(2)7.85円を上回るうちは上昇余地ありとし、8.00円超えからは8.05円前後への上昇を想定する。8.05円以上は反落警戒としてその後に7.90円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)7.85円割れからは3月10日夜安値7.77円試しとし、底割れからは7.70円前後への下落を想定する。7.70円以下は反騰注意とするが、7.85円以下での推移が続くうちは下向きの展開が続きやすいとみる。
※3月17日未明に米FOMC声明発表、17日夜にトルコ中銀金融政策発表があるため、ドル円の上昇及びドル高リラ安が加速しやすいきっかけになる可能性があると注意する。

【当面の主な予定】

3月11日
 16:00 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 1.6%)
 16:00 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 14.4%)
 16:00 1月 小売売上高 前月比 (12月 -2.7%)
 16:00 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 15.5%)
 16:00 1月 経常収支 (12月 -38.41億ドル)
3月15日
 17:00 2月 財政収支 (1月 +300億リラ)
3月17日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現状 14.00%、予想 14.00%)
 20:30 週次 外貨準備高 3/11時点 グロス (3/4時点 681.8億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 3/11時点 ネット (3/4時点 181.5億ドル)
3月21日
 17:00 2月 観光客数 前年同月比 (1月 151.4%)
 23:30 2月 中央政府債務 (1月 284.4億リラ)
3月23日
 16:00 3月 消費者信頼感指数 (2月 71.2)


注:ポイント要約は編集部

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