ユーロは2020年安値をターゲットに進む
〇ユーロドル、ロシア軍のウクライナ最大の原発を制圧をきっかけに先週金曜に1.08台へ売り込まれる
〇ロシアへの金融経済制裁を強めた結果、資源価格が高騰、欧州経済はリセッション入りのリスクも
〇ロシアのウクライナ占領の可能性も考えると引き続きユーロ売りの流れは続くと考える
〇テクニカルにはコロナショック時のユーロ安値1.0633レベルを視野に入れた下げに
〇木曜のECB理事会とEUサミットに注目、金融政策やロシアへの追加制裁などが今週のヤマ場
〇今週は1.0680レベルをサポートに大台1.1000レベルをレジスタンスとする一週間とみる
今週の週間見通しと予想レンジ
週前半は上値こそ重たいものの停戦協議への期待なども入り混じって動きが出にくい流れとなっていましたが、停戦協議中もロシア軍の攻撃は止まらずプーチンが強硬姿勢を示していることもあって徐々に上値が重くなっていました。その後も欧州景気に与える影響からユーロが他通貨に対して売りが広がっていましたが、ロシア軍がウクライナ最大の原発を攻撃、制圧したとのニュースを受け週末金曜にはユーロドルは1.08台へと売り込まれ、2020年5月以来の安値を見ることとなりました。
今週もユーロはウクライナ情勢を見てということになるものの、ロシア軍が着実にウクライナを包囲する動きや、停戦協議は行われているもののプーチンがウクライナの軍備解除と中立化、現政権総退陣などが全て実現されること、と一方的な要求を突き付けていることから早期の決着は絶望的とも言える状況です。
しかも核攻撃をちらつかせたりウクライナ最大の原発を制圧したりと、ウクライナだけでなく欧州への影響も無視できない状況になっています。さすがに核攻撃などというバカげたことをするとは思えないものの、現在のプーチンは狂っているとしか思えない面もあり、予断を許さない流れが続いています。西側諸国は更なる金融経済制裁を強めているものの、エネルギー価格の高騰も招き、欧州経済はリセッション入りするリスクも高まっています。
今のままの状況が長期化するとプーチンがしびれを切らしてウクライナ全土への無差別攻撃と傀儡政権の樹立にまで進んだ時に西側諸国はどうするのか、NATO軍、米軍が動くと戦争の引き金になると動かないままなのか、流れとしてはロシアがウクライナを占領する可能性も決して低くはないことを考えると、引き続きユーロ売りの流れは続くと考えざるを得ません。
今週は注目すべきイベントとして、木曜のECB理事会とEUサミットがあります。高まるインフレと景気減速によるスタグフレーションが目の前にある中でECBが今後の金融政策についてどのような方向性を見せるのか、またEUサミットでは今後のウクライナ支持とロシアへの追加制裁をどのようにしていくのか、今週のヤマ場になってきそうです。
テクニカルには週足チャートからご覧ください。
流れはピンクの平行線で示した下降チャンネルの中での下降トレンドですが、週初からチャンネル下限を試す展開となっていて、ターゲットはコロナショック時のユーロ安値1.0633レベルを視野に入れた下げとなっていることがわかります。日足チャートで拡大して見てみます。
平行下降チャンネルとコロナショック時の安値のラインはそのままに、以前までの拡散型もみあいの下側ラインを青のラインで示しました。現在の強いレジスタンスです。サポートは近い水準には無いため、一気に赤の水平線(1.0633レベル)まで売り込まれる可能性もありますが、不透明な状況のままで行く場合には1.07水準を割り込んだあたりで一回下げ止まる可能性もあるでしょう。
非常に悩ましいのですが、今週は1.0680レベルをサポートに大台1.1000レベルをレジスタンスとする一週間を見ておこうと思います。
今週のコラム
今週はシカゴ通貨先物のユーロポジションを見ていただこうと思います。
メインチャートはユーロドルの週足、サブチャートがユーロの投機ポジション(ノンコマーシャル)ですが、金曜の引け後に発表された数字を見ると、先週火曜時点では少なくともユーロ買いポジションが増え続けていることがわかります。
買いのサイズ自体はそれほど大きくは無いものの、買いポジションが増えている中でユーロドルが下落しているということは買い下がっていることを意味します。彼ら投機筋が投げる動きでも出てきたらユーロは急落ということになりかねないのでは、となかなか気になる動きであることは注意しておきたいものです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
3月7日(月)
16:00 ドイツ1月小売売上高、製造業新規受注
3月8日(火)
09:01 英国2月小売売上高
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
3月9日(水)
(特になし)
3月10日(木)
09:01 英国2月住宅価格
21:45 ECB理事会 ☆
22:30 ラガルドECB総裁会見 ☆
22:30 米国2月CPI
**:** EUサミット(〜11日)☆
3月11日(金)
16:00 ドイツ2月CPI
16:00 英国1月鉱工業生産、貿易収支
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
2月28日(月)
週末にSWIFTからロシアを締め出すとのニュースはロシアだけでなく欧州を中心に西側諸国が受ける損失、景気減速懸念から株安とユーロ安でのスタートを切りました。その後は様子を見たいという参加者が多かったこと、ロシアとウクライナとの停戦協議が実施されることなどから朝方の下げに対して上下しながらも買い戻しが続く展開となりました。しかし、戻り売りを考える向きの方が多く、1.12台半ばでは売りが並ぶ流れで終わりました。
3月1日(火)
ユーロドルは東京前場には売りが先行したものの欧州市場序盤にかけては買い戻しが目立ちました。しかしロシアからウクライナへの攻撃は継続するとの発表があり、欧州株は全面安。それに引っ張られてユーロは対ドル、対円ともに売りが強まり先週安値を更新後引けにかけては若干戻す動きでした。
3月2日(水)
ユーロドルは東京市場では下げていたものの海外市場に移ってからは停戦協議期待と停戦はまだ先だとの失望で上下に動きやすい流れとなりました。基本的にウクライナ情勢が不透明な状況は変わらず、上値は重たいものの方向感は出にくい一日となりました。
3月3日(木)
ユーロドルはロシア軍によるウクライナへの攻撃が続く中で終日じり安の展開を続けました。ロシア・ウクライナ間の協議では民間人が避難するルートを設置すること、協議は継続して行うことは決まったものの、両国間の隔たりは大きく、プーチンも強硬姿勢を示していることから、一時1.1033レベルと2020年5月以来の安値をつけ、引けにかけてはやや戻しました。
3月4日(金)
ユーロドルはロシア軍がウクライナ最大の原発を攻撃し制圧したとのニュースに地政学リスクから売られていましたが、エネルギー価格が一段と上昇していることから欧州の景気後退リスクも嫌気されNY市場に入ってからは一段安、1.0886レベルまで売り込まれ、引けにかけては1.09台前半へと戻しました。
ディスクレーマー
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