ドル円は上下双方の材料でもみあいか(週報3月第1週)

先週もウクライナ情勢を懸念して上下していました。

ドル円は上下双方の材料でもみあいか(週報3月第1週)

ドル円は上下双方の材料でもみあいか

〇ドル円先週もウクライナ情勢で上下、「有事のドル買い」もあり一方向には動きにくい状況
〇ユーロ全面安でユーロ円が大きく下げる場合、日経平均の下げが目立つ場合にはドル円も円買いで反応か
〇米10年債と2年債のスプレッドは1年前の1.5%台からは0.2%台に縮小、リセッションリスクも要警戒
〇今週もその時々によって動きは異なるもののレンジを大きく抜け出すことは難しそう
〇今週は中心レンジとして114.50レベルをサポートに115.50レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週もウクライナ情勢を懸念して上下していましたが、停戦協議中もまったく止まることが無いロシア軍の攻撃、さらにはプーチンが何をやらかすのかわからないといった怖さも重なり、地政学リスクによるリスクオフからユーロは全面安、ドル円はその時々の状況によって反応が異なりました。

個人的には先週の概況で触れた通りで、NATO軍が出てくるような最悪の事態を考えると最大の軍事力を誇る米国資産が安全資産、避難資産となり、米国債が買われ、為替市場ではドルが買われるというスタンスが妥当であると考えています。冷戦時代によく言われた「有事のドル買い」という動きです。ユーロドルは地政学リスクも重なって、素直にユーロ売り・ドル買いですが、ドル円はユーロ全面安でユーロ円でも大きく売られる時には円買いでも反応し、時には日経平均株価の下げを見て円買いで反応するという動きも見られました。

つまり円については売り買いとも材料があるため、一方向には動きにくいという状況です。また他の材料としてはパウエルFRB議長が3月FOMCでは0.25%の利上げを支持するとしたため、米金利が為替に与える影響は少ないと言えます。ただ安全資産として米国債が買われることで長期金利は低下し、いっぽうで短期金利は底堅い動きとなっていることで、長短金利スプレッドはかなり狭まって来ています。

以下のチャートは10年債と2年債のスプレッドですが、1年前には1.5%台だったスプレッドが、現在は0.2%台にまで縮小していることがわかります。

ドル円は上下双方の材料でもみあいか

このスプレッドが今後も縮小を続けマイナスにでもなってくると、リセッションのシグナルという話も出てきますので、今後のインフレ高止まりと政策金利上昇による短期債利回りの上昇期待があるいっぽうで、安全資産として長期債が買われ利回りが低下していることを考えるとひょっとすると、としばらくはこうしたスプレッドにも注意を払いたいところです。

先週金融市場に与える影響を簡単にまとめましたが、特に変更はありませんので今一度上げておきたいと思います。

株式市場:対ロシア経済制裁による景気減速懸念で売り
債券市場:米国債は安全資産ということで株式市場から資金流入、債券買い=長期金利低下
金利市場:インフレ懸念が強まることから金利は高止まり
将来的な景気減速懸念から年後半の利上げ思惑はペースダウン
商品市場:ロシアからの供給減で原油高、穀物高、安全資産として金価格上昇
暗号資産:株式同様にリスク資産であり売り
ロシアが決済代替手段としてビットコインを使う場合は下げも限定的

暗号資産については、リスク資産から代替手段という見方となり買われましたが、G7が抜け道を塞ぐと発言したことで上値も重くなりました。

為替市場は本来的にはドル買いだと考えていますが、ドル円は上下どちらにも動きうるため、テクニカルにはどうなのかを見てみましょう。いつもの日足チャートです。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

残念ながら先週から大きな変化は見られず、2月レンジの中でその半値115.24をもみあいの中心としやすい流れが続いています。ピンクのラインで示したサポートラインとレジスタンスラインが短期的には上下の水準を示していますが、先週の上昇時に一時的にレジスタンスをトライした動きがあったため、引き直しました。

テクニカルにはサポートは114円台半ば、レジスタンスは115円台半ばといった流れですが、全体的なドル買いとなるとドル円は上昇、全体的なユーロ売りとなるとドル円は下落と今週もその時々によって動きは異なるもののレンジを大きく抜け出すことは難しそうです。今週は中心レンジとして114.50レベルをサポートに115.50レベルをレジスタンスとする流れを見ておきますが、ウクライナ情勢次第でどのようにも動きうるということも変わりません。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

3月7日(月)
**:** 中国2月貿易収支
16:00 ドイツ1月小売売上高、製造業新規受注

3月8日(火)
08:50 本邦1月貿易収支
09:01 英国2月小売売上高
09:30 豪州2月企業景況感
18:30 南ア10〜12月期GDP
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
22:30 米国1月貿易収支
30:45 NZ10〜12月期製造業売上高

3月9日(水)
07:15 豪中銀総裁講演
08:30 豪州3月消費者信頼感
08:50 本邦10〜12月期GDP改定値
10:30 中国2月CPI・PPI
19:00 南ア1〜3月期企業信頼感
24:30 週間原油在庫統計

3月10日(木)
09:01 英国2月住宅価格
16:00 トルコ1月失業率
18:00 南ア10〜12月期経常収支
21:45 ECB理事会
22:30 ラガルドECB総裁会見
22:30 米国2月CPI
22:30 米国新規失業保険申請件数
**:** EUサミット(〜11日)

3月11日(金)
16:00 ドイツ2月CPI
16:00 トルコ1月鉱工業生産、経常収支
16:00 英国1月鉱工業生産、貿易収支
24:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感速報値

3月13日(日)
 **:** 米国夏時間移行

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

2月28日(月)
週末にSWIFTからロシアの銀行を締め出すとのニュースが出て週明けはかなりの警戒感をもって始まりましたが、ドル円でNY市場まではほとんど動かず、NY市場ではドル売りで反応していました。有事のドル買い(最大の軍事力を誇る米国資産が安全となる米国債と米ドルの買い)に対してやや調整が入ったことによるドル売りという見方も出来そうな月末相場となりました。

3月1日(火)
ウクライナ情勢を見ながらリスクオフの流れが続いていますが、火曜は株式市場に沿った動きとなりました。ドル円は日経平均株価とともに東京前場に上昇後はじり安の展開となりましたが、欧州市場以降は様子見でほとんど動かずのままとなりました。

3月2日(水)
ドル円は一貫して上昇の動きとなりましたが、東京市場ではウクライナ南部におけるロシア軍の動きを懸念したユーロ売りの動きからドル買い、海外市場では停戦協議に期待した動きから株高となり、ドル円は従来型の株高・円安の動きとなりました。

3月3日(木)
ドル円は欧州市場前場まではユーロドルの下げとともにドル買いの動きが続きました。欧州市場前場には115.81レベルの高値をつけましたが、それ以降はユーロ円の下げにも引っ張られポジション調整の売りとともに東京朝方の水準へと下押し。引けにかけては115.38レベルと日中安値を更新し安値圏での引けとなりました。

3月4日(金)
ドル円はNY市場まで115.40前後で全く動かず、雇用統計も上振れしたにもかかわらずドル円は蚊帳の外状態でした。しかしユーロ全面安の流れの中でユーロ円の売りがドル円でも円買いとなり、114.65レベルまで水準を下げた後に若干戻しての週末クローズとなりました。

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