トルコリラ円見通し 物価高騰とウクライナ情勢による圧迫感で8円割れを試す(22/3/7)

トルコリラ円の3月4日は8.18円から8.06円の取引レンジ、5日早朝の終値は8.09円で前日終値の8.16円から0.07円の円高リラ安となった。

トルコリラ円見通し 物価高騰とウクライナ情勢による圧迫感で8円割れを試す(22/3/7)

物価高騰とウクライナ情勢による圧迫感で8円割れを試す

〇トルコリラ円、5日早朝終値8.09、ウクライナ情勢緊張激化で2/28から3/4まで5日続落
〇対ドルでは5日早朝終値14.18で前日から0.09リラのドル高リラ安、3/1から4日間続落
〇ルーブル暴落は新興国通貨危機再燃への懸念を助長、トルコリラにも不安感の波及
〇当面はウクライナ情勢に左右される展開、悪化報道あれば円高リラ安に拍車がかかる可能性も
〇8.05割れからは8.00前後への下落、ウクライナ情勢等で下げ足早まれば7.90台中盤へ
〇8.15超えからは8.18前後、勢い付く場合は8.20試しとみるが、8.18以上は反落警戒

【概況】

トルコリラ円の3月4日は8.18円から8.06円の取引レンジ、5日早朝の終値は8.09円で前日終値の8.16円から0.07円の円高リラ安となった。
日足ではウクライナ情勢の緊張感が増す中で2月16日から2月24日にロシア軍がウクライナに本格侵攻したところまで7日間の続落となり、2月25日に目先の売りを消化して小反発したものの2月25日と2月28日の8.40円をダブルトップ型としてウクライナ情勢の緊張激化により2月28日から3月4日まで5日間の続落となった。3月4日はベンダーによっては8円割れの安値提示も出ていた。

【ドル/トルコリラ動向 3月1日からは4日間の続落】

ドル/トルコリラの3月4日は14.26リラから13.95リラの取引レンジ、5日早朝の終値は14.18リラで前日終値の14.09リラからは0.09リラのドル高リラ安だった。
2月24日にロシア軍がウクライナに本格侵攻したところで14.63リラへ急落して1月10日以降の13リラ台の持ち合いから下放れ、いったんは目先の売り一巡で持ち直しかけたものの、ウクライナ情勢が一段と深刻化する中で地政学的にも近隣での有事情勢のためにトルコリラへの売り圧力も徐々に増している。

3月3日にはトルコの2月物価統計の発表があったが、消費者物価の上昇率は前年比で54.44%へと上昇、コア指数でも44.0%へと加速し、生産者物価に至っては前年比105.01%と100%超えとなっている。高インフレ下での連続利下げ強行によるリラ暴落はひとまず落ち着いているが、ウクライナ情勢とロシア制裁が世界規模のインフレを一段と深刻化させる流れのため、トルコの高インフレも中銀等の期待するような年後半の低下を見込むことも難しくなり、トルコ中銀が利下げ再開に踏み切れないであろうことはリラには支えかもしれないが、物価高騰による実質マイナス金利幅の拡大によるリラ売り圧力、ウクライナ及びロシアとの経済関係が深いトルコ経済への悪影響を踏まえればウクライナ情勢の劇的な改善が見られないうちはリラへの売り圧力が日増しに拡大してゆくのではないかと懸念されるところだ。

【ウクライナ情勢の影響】

黒海を挟んで隣接するウクライナとロシアの全面戦争及び欧米によるロシア制裁の強化がロシア株暴落とルーブル暴落を発生させているが、ルーブルの暴落がかつてのアジア通貨危機・ロシア通貨危機・南米通貨危機へと波及した新興国通貨危機の再燃への懸念を助長し、昨年末に史上最安値を更新して通貨危機的様相を見せてしまったトルコリラにも不安感の波及があるだろう。また両国と関係の深いトルコの実体経済への打撃も懸念が深まるところだ。
トルコは穀物輸入においてロシアとウクライナからの輸入比率が凡そ64%。鉄鋼が凡そ25%と高く、天然ガスの輸入においてはロシア産が凡そ3割とされる。トルコに限ったことではないが各種製造業においてはサプライチェーンがウクライナやロシアと入り組んだ状況にあり、戦争状態による物流支障も影響を受ける。トルコにとっての重要産業である海外からの観光客においてはロシアが1位、ウクライナが3位であり観光収入の4分の1が両国で占められている。

実際のウクライナとロシアの交戦においてはトルコ製の軍事ドローンのバイラクタルTB2がロシア軍に打撃を与えているが、ウクライナはトルコから軍事ドローンを輸入しつつ自国内でもライセンス生産している。このことをロシアが苦々しく思っていることは容易に推察される。
トルコはNATO加盟国でありながらロシア製ミサイルシステムを導入したことでNATO内での反感を買い米国との関係も悪化している。エルドアン大統領等は両国の停戦和平交渉に一役買おうと外交活動を展開しており、両国の調停に貢献できれば外交的なプレゼンスも改善するところだが難しそうだ。

【年初からの持ち合い下放れから最安値を再び試す流れへ進むか】

【年初からの持ち合い下放れから最安値を再び試す流れへ進むか】

トルコ中銀による9月から12月までの4会合連続利下げを嫌気した暴落で12月20日に史上最安値6.17円を付け、エルドアン大統領によるリラ預金の為替差損補填政策発表から12月23日高値11.14円まで一時的に急騰したものの先行き不透明感から直前の上昇幅に対して3分の2以上を削って1月3日には8.13円へ失速、その後はトルコ中銀による1-3月期の利下げ回避姿勢とリラ防衛の市場介入により8円台での持ち合いで膠着してきた。
ロシア軍がウクライナに侵攻開始した2月24日に7.84円まで急落して8円台での持ち合いからいったん転落した後の反騰も長続きせずにジリ安の推移が続いており、再び8円割れから年初来安値更新を試しやすい状況で先週を終えた。
週間では前週末の8.35円から3月4日終値8.09円へ0.26円の円高リラ安であり、前週の長い下ヒゲをつぶす動きとなっている。

次回のトルコ中銀金融政策決定会合は3月17日であり、市場の事前予想はまだ出ていないものの1-3月期を様子見とした姿勢を踏まえて3会合連続での現状維持と思われる。インフレが収まらずに原油高騰等でさらに進行する可能性がある中では利下げ強行による景気浮揚効果よりもリラ安によりインフレをかえって助長して国民生活には逆効果となりエルドアン政権への支持率悪化も考えられるため、インフレが明確にピークアウトしたという客観的な説明ができないうちは利下げも難しいだろう。
3月3日に物価上昇率の発表もあったばかりで3月17日の中銀金融政策会合までまだ間があるため、当面はウクライナ情勢に左右される展開でトルコリラ円も推移してゆくと思われる。ウクライナ情勢が一段と深刻化すればリスク回避的にはドル高リラ安、それに円高も重なる可能性があるため、状況が一挙に好転するような報道が飛び込んでこないうちは下向きとなり、情勢悪化報道あれば円高リラ安に拍車がかかる可能性もあると注意したい。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.05円を下値支持線、8.15円を上値抵抗線とする。
(2)8.15円以下での推移中は下向きとし、8.05円割れからは8.00円前後への下落を想定する。8.00円前後は買い戻しも入りやすいとみるが、ウクライナ情勢等で下げ足が早まる場合は7.90円台中盤(7.97円から7.93円)へ下値目途を引き下げる。
(3)8.14円から8.15円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみるが、8.15円超えからは8.18円前後への上昇を想定する。勢い付く場合は8.20円試しとみるが、8.18円以上は反落警戒とみる。

【当面の主な予定】

3月10日
 16:00 1月 失業率 (12月 11.2%)
 20:30 週次 外貨準備高 グロス 3/4時点 (2/26時点 702.0億ドル)
 20:30 週次 外貨準備高 ネット 3/4時点 (2/26時点 181.9億ドル)
3月11日
 16:00 1月 鉱工業生産 前月比 (12月 1.6%)
 16:00 1月 鉱工業生産 前年同月比 (12月 14.4%)
 16:00 1月 小売売上高 前月比 (12月 -2.7%)
 16:00 1月 小売売上高 前年同月比 (12月 15.5%)
 16:00 1月 経常収支 (12月 -38.41億ドル)
3月15日
 17:00 2月 財政収支 (1月 +300億リラ)
3月17日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現状 14.00%、予想 14.00%)
 20:30 週次 外貨準備高 3/11時点

注:ポイント要約は編集部

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