『ロシア・ウクライナの地政学的リスクと、国内のインフレ昂進がリラの重石』
〇今週のトルコ円、トルコ指標の不冴え、地政学リスクの高まりに週末にかけて8.06まで急落
〇基準線、転換線等主要サポートポイントを下抜け、三役逆転等も示現、テクニカルの地合いは弱い
〇ファンダメンタルズも地政学リスクに加え、ウクライナ・ロシアからトルコへの観光客数減少懸念も
〇トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(TRYJPY):7.80ー8.40
今週のレビュー(2/28−3/4)
今週のトルコリラ円(TRYJPY)相場は、週初8.31円で寄り付いた後、早々に週間高値8.44円まで上昇しました。しかし、21日移動平均線をバックに伸び悩むと、@トルコ2月製造業PMI(結果50.4、前回50.5)の冴えない結果や、Aトルコ国内のインフレ昂進(トルコ2月消費者物価指数が前年比54.4%と2002年以来約20年ぶりの大幅上昇を記録した他、トルコの最大都市イスタンブールの2月小売物価指数も前年比55%台の大幅上昇を記録)、B上記Aを背景としたトルコリラの実質金利急低下、Cロシア・ウクライナを巡る地政学的リスク(ロシアによるウクライナの原子力発電所への攻撃)、D上記Cを背景としたリスク回避ムード(市場心理悪化→有事のドル買い・新興国通貨売り)が重石となり、週末にかけて、週間安値8.06円まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間3/5午前4時20分現在)では8.09円前後で推移しております。
来週の見通し(3/7−3/11)
トルコリラの対円相場は冴えない動きが続いております。ローソク足が一目均衡表基準線や転換線といった主要サポートポイントを軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダー、弱気のバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは弱いと判断できます。ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念(市場心理悪化→新興国通貨売りの波及経路のみならず、トルコはウクライナ・ロシア両国と親密な関係にあるため、ウクライナ・ロシア両国からトルコへの観光客数減少懸念→トルコ経済の先行き不安→トルコリラ売りの波及経路もあり)や、A米FRBによるタカ派傾斜観測、Bトルコ中銀による追加利下げ観測(エルドアン大統領による利下げ圧力継続中)、C上記ABを背景としたトルコ・米国の金融政策格差、Dトルコ中銀の外貨準備の脆弱さ(介入余力の乏しさ)、
E経常収支の悪化懸念、Fトルコ国内のインフレ昂進懸念(エルドアン大統領の圧力でトルコ中銀は利上げに舵を切りにくい為、インフレ昂進は実質金利の低下を通じてトルコリラに下押し圧力)など、トルコリラ円相場のダウンサイドリスクを連想させる材料が増えつつあります。以上を踏まえ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週は3/10に予定されているトルコ1月雇用統計に加えて、3/11にトルコ1月鉱工業生産や、トルコ1月経常収支などが予定されているものの、市場の関心は引き続き、ロシア・ウクライナに関するヘッドラインに集まりそうです(トルコ経済はロシアへの依存度が高いことから、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化やそれに伴う世界各国による対露制裁強化がトルコ経済の重石)。目先は心理的節目8.00円を割り込むシナリオに要注意。
来週の予想レンジ(TRYJPY):7.80ー8.40
注:ポイント要約は編集部
トルコ円日足
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