来週の為替相場見通し:『ロシア・ウクライナ情勢が引き続き市場の注目テーマ』(3/5朝)

ドル円は値幅を伴いながらも方向感に欠ける値動きが続いております。

来週の為替相場見通し:『ロシア・ウクライナ情勢が引き続き市場の注目テーマ』(3/5朝)

『ロシア・ウクライナ情勢が引き続き市場の注目テーマ』

〇今週のドル円、週後半にかけて、115.82(2/15以来、約2週間ぶり高値圏)まで上昇
〇ウクライナ地政学リスクの高まり、世界的インフレ懸念、露烏間の停戦協議への期待が背景
〇買い一巡後はロシアの原発への攻撃と占拠、米指標の不冴えに114円台後半まで下げて越週
〇ユーロドル週明け早々1.1247まで上昇後、週末にかけ約1年9ヵ月ぶり安値となる1.0888まで急落
〇ドル円値幅を伴いながらも方向感に欠ける値動きが続き、テクニカル的な示唆は現状見受けられず
〇ファンダメンタルズは、有事のドル買い、インフレ懸念、FRBのタカ派傾斜観測等ドル買い材料多い
〇ユーロドル、主要テクニカルポイント下抜け、地合いの弱さを決定付けるチャート形状
〇3/10に予定されているECB理事会に注目
〇ドル円相場の反発、ユーロドル相場の続落をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):113.50ー116.50、(EURUSD):1.0750−1.1050

今週のレビュー(2/28−3/4)

<ドル円相場>
今週のドル円相場(USDJPY)は、週初114.98で寄り付いた後、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの高まり(リスク回避の円買い→有事のドル買いへのシフト)や、Aエネルギー価格高騰に伴う世界的なインフレ懸念(米FRBによるタカ派傾斜観測→米長期金利上昇→米ドル高)、B米2月ISM製造業景況指数(結果58.6、予想58.0)の良好な結果、Cバイデン米大統領による「物価の抑制が最優先課題」との一般教書演説の中での発言(政治側からの利上げ圧力)、D米主要株価指数の持ち直し(リスク選好の円売り再開)、E米2月ADP雇用統計(結果+47.5万人、予想+37.5万人)の力強い結果、FパウエルFRB議長による「インフレ高止まりなら1回もしくは複数回の会合にわたり50bpの利上げを行い積極的に対応する」との半期に一度の議会証言の中でのタカ派発言(50bp利上げの可能性を排除せず)、Gロシア・ウクライナの第2回停戦協議開始への期待感が支援材料となり、週後半にかけて、週間高値115.82(2/15以来、約2週間ぶり高値圏)まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、Hロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの再燃(上記@の停戦協議で期待した結果が得られなかったことや、プーチン露大統領がマクロン仏大統領との電話会談の中で「いかなる状況でもウクライナにおける軍事作戦の目的を達成する」と強硬姿勢を示したこと。更にロシアによるウクライナの原子力発電所への攻撃開始報道など)や、I米2月ISM非製造業景況指数(結果56.5、予想61.0)の冴えない結果、J米2月平均時給(結果0.0%、予想0.5%、※前月比)の予想比低下、K米金利低下に伴うドル売り圧力が重石となり、週末にかけて、週間安値114.65まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間3/5午前4時00分現在)では、114.78前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場(EURUSD)は、週初1.1179で寄り付いた後、早々に週間高値1.1247まで上昇しました。しかし、一目均衡表転換線をバックに伸び悩むと、@欧米諸国によるロシア大手銀行に対する国際銀行間通信協会(SWIFT)からの締め出し制裁措置や、A上記@を背景とした欧州経済の先行き不透明感(対露制裁でロシアからのエネルギー輸出停滞→天然ガスなどエネルギー価格高騰→ロシアからの輸入依存度の大きい欧州諸国に大打撃)、BECBによるタカ派観測の後退(欧州経済にスタグフレーション懸念が燻る中、ECBは慎重姿勢を続ける公算大。レーンECB専務理事も「時期尚早のECBの行動で域内経済がリセッションに陥る可能性あり」と発言)、C世界的なリスク回避ムード(ロシアによるウクライナの原子力発電所への攻撃開始→有事のドル買い。欧州株は大幅下落)、

Dユーロ圏2月消費者物価指数の伸び率昂進(前年比上昇率5.8%と過去最高を更新→ユーロの実質金利低下→ユーロ売り)、Eテクニカル的な売りシグナル点灯(心理的節目1.1000の下方ブレイク→短期筋のストップSELL)などが重石となり、週末にかけて、2020年5月25日以来、約1年9ヵ月ぶり安値となる1.0888まで急落しました。引けにかけて小反発するも戻りは鈍く、本稿執筆時点(日本時間3/5午前4時25分現在)では、1.0928前後で推移しております。

来週の見通し(3/7−3/11)

<ドル円相場>
ドル円は値幅を伴いながらも方向感に欠ける値動きが続いております。今週も114円台半ばから115円台後半にかけての乱高下が繰り返されました。主要チャートポイントがローソク足近辺に密集している他、オシレータ系インジケータのRSIも中立圏で推移するなど、テクニカル的な示唆は現状見受けられません(リスク回避の円買いと有事のドル買いに挟まれ身動き取れず→市場は次の一手を待っている状態)。但し、ファンダメンタルズ的に見ると、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化(一般的なリスクオフではなく、地政学的リスクに端を発したリスクオフの場合、リスク回避の円買いよりも有事のドル買いで反応しやすい)や、

Aエネルギー価格高騰に伴う世界的なインフレ懸念、B上記Aを背景とした米FRBによるタカ派傾斜観測(パウエルFRB議長は次回FOMCでの大幅利上げの可能性を排除せず)、C日銀による金融緩和スタンスの明確化(黒田日銀総裁は2/24に「欧米と違って直ちに金融緩和の縮小に動くことはない」と発言)、D上記BCを背景とした日米金融政策の方向性の違い(日米名目金利差拡大に伴うドル買い・円売り圧力)、E米経済指標の力強い結果(今週発表された米2月ISM製造業景況指数、米2月ADP雇用統計、米2月失業率、米2月非農業部門雇用者数は軒並み良好な結果)など、ドル高・円安を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ドル円相場の反発をメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週は3/10に予定されている米2月消費者物価指数に注目が集まるものの、ロシアによるウクライナ侵攻前の数字であるため、足元のエネルギー価格高騰が含まれておらず、市場の関心は然程大きくないと考えられます。また、本日3/5よりブラックアウト期間に突入するため、来週は米当局者発言も予定されておりません。従って、市場の関心は引き続き、ロシア・ウクライナを巡るヘッドラインとなりそうです(米主要株価指数や米長期金利を睨みながらの神経質な展開の継続を想定。クロス円相場が下げ止まればドル円が一気に上昇に転じる恐れあり)。

来週の予想レンジ(USDJPY):113.50ー116.50

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は2/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1496をトップに反落に転じると、週末にかけて、約1年9ヵ月ぶり安値となる1.0888まで急落しました。この間、ローソク足が主要サポートポイント(90日移動平均線や21日移動平均線、一目均衡表雲上限や雲下限、一目均衡表転換線や基準線など)を軒並み下抜けした他、強い売りシグナルを示唆する三役逆転や弱気のパーフェクトオーダー、弱気のバンドウォークも成立するなど、テクニカル的に見て、地合いの弱さを決定付けるチャート形状となりつつあります。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ロシア・ウクライナを巡る地政学的リスクの長期化懸念や、Aエネルギー価格高騰に伴う欧州経済への下押し圧力(スタグフレーション懸念)、B上記Aを背景としたECBによる利上げ観測後退(ロシア・ウクライナを巡る不確実性が燻る中、ECBによる利上げ開始時期は大幅に遠のく恐れ)、C米FRBによるタカ派傾斜観測(パウエルFRB議長は半期に一度の議会証言の中で3月利上げの基本路線が変わらない旨言及)、D上記BCを背景とした欧米金融政策の方向性の違い(欧米名目金利差拡大→ユーロ売り・ドル買い)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の続落を当面のメインシナリオとして予想いたします。

尚、来週はロシア・ウクライナ情勢を巡るヘッドラインに加えて、3/10に予定されているECB理事会に注目が集まります。前回2/3に開催されたECB理事会ではインフレ昂進を背景に利上げ時期が近付きつつあるとの見方が示されるなど、総じてタカ派的なスタンスが強調されましたが、その後のロシア・ウクライナ情勢の緊迫化と、それに伴うエネルギー価格の高騰および欧州経済の下押し圧力を経て、今会合ではタカ派色を封じ、再びハト派色に戻る展開が警戒されます。具体的には一部で予測されていた従来の資産購入プログラム(APP)の前倒し終了が棚上げ(判断を4月以降に持ち越し)されると共に、経済見通しでスタグフレーション懸念(インフレ見通しの上方修正+景気見通しの下方修正)が示される展開が想定されます。

通貨オプション市場では再びユーロドルのパリティ(1.00)割れが意識され始めるなど、ダウンサイドリスクが急速に織り込まれつつあるため、来週も週を通してダウンサイドリスクに注意を要する1週間となりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0750−1.1050

注:ポイント要約は編集部

『ロシア・ウクライナ情勢が引き続き市場の注目テーマ』

ドル円日足

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