ユーロ円の影響が大きく上値が重い流れ
〇米金利上昇による株安とウクライナ情勢、対ドル対円ともにユーロ下げやすい状況
〇ウクライナ問題、地政学リスクから特にユーロに売り入りやすい
〇ロシア侵攻の場合、改めて年初来安値試しの可能性も
〇今週はラガルドECB総裁講演、ユーロ圏GDP改定値、同2月消費者信頼感速報値など予定
〇今週は1.1250レベルをサポートに、1.1400レベルをレジスタンスとする週とみる
今週の週間見通しと予想レンジ
ドル円週報でも材料は米金利とウクライナ問題の行方であることを書きましたが、米金利については米国CPIまでは地区連銀総裁もタカ派、CPI 7.5%後にピークを迎え金曜にはハト派な地区連銀総裁の発言とウクライナ緊迫による株から債券への資金シフトで金利がやや低下する流れでした。インフレ率は各国で問題視されるほど高いものの極端な引き締めは景気を減速させるリスクがあるという方向も見えてきた感じです。
米国10年債利回りが2%乗せ、FF先物も年内7回(全てのFOMCで)利上げを織り込みとそれぞれ短期的には天井感が出たという感じですが、それ以上にユーロにとって影響が大きいのはウクライナ問題です。金曜の動きを見てもわかる通りでリスクオフで株安となり、ドル円、ユーロ円ともに円高という動きでしたが、ウクライナの場合は地政学リスクから特にユーロに売りが入りやすく、ユーロは対円だけでなく当然対ドルでも売られる流れで引けました。
ECBの金融政策も一時期よりは緩和縮小思惑が高まっているとはいえ、PEPP終了は3月、APP増額終了は9月が予定されていることから、最短の利上げでも第4四半期となり、目先は金融政策よりもウクライナ問題という動きが広がったと言えます。これまでもウクライナ問題が緊迫する中で多少の小康状態も入り、ユーロは崩れずに来ましたが、本当にロシアが侵攻したら世界的な株安とユーロ安の動きとなるでしょう。問題はどの程度ロシアが侵攻する可能性があるのかにかかっています。
金曜のNY市場で日本の外務省がウクライナからの退避勧告を出したことは驚きでしたが、英国、オランダ、米国など多くの国が同様の措置を取りました。金曜時点では週末に何かがあってもおかしくないかもしれないという緊迫感が広がりましたが、週明けは今のところ株価もユーロも落ち着いていて、即座に何かが起きるという感じでも無さそうに思えます。しかし、先週初めにはマクロン仏大統領がロシア、ウクライナの両首脳と会談し当面は落ち着きどころを探す展開かと思っていただけに、事態は想定以上に悪いようです。
そうなると、事態が明らかに好転するまではロシアがウクライナに侵攻する可能性を常に考えなくてはならず、そうなるとユーロは改めて年初来安値を試しに行く可能性も考えておかなくてはならないでしょう。米金利上昇による株安とウクライナ情勢とでユーロは対ドル、対円ともに下げやすいということになりますが、万が一北京オリンピックで親密な関係を見せた中国が同時期に台湾に圧力をかけるような動きが出てくると、その場合には近場のリスクで円売りになる可能性もあり、かなり読みにくい流れが続くこととなりそうです。
テクニカルにも非常に悩ましいのですが、ユーロの日足チャートも見てみましょう。
非常に難しい拡散型のもみあいを続けています。年初来安値から年初来高値へと上げた後の今度は年初来安値更新の可能性もとなると、トレンドなどあったものではありません。12月の耳会い上抜け以降は全てがダマシの連続で値幅も大きいという展開です。
ここで今の水準を考えるには年初来安値と高値との押しを考えることとなりますが、金曜安値はほぼ38.2%押しの水準、ここからの下げを考えるならば半値押しの1.1307、61.8%押しの1.1263というあたりがターゲットとなってきそうです。現状ではまだウクライナは緊迫しつつも主要国がなんとかロシアに行動しないよう説得中ということから後者のターゲットと重なる1.12台半ばがいいところにも思えます。
今週は1.1250レベルをサポートに1.1400レベルをレジスタンスと引き続き上値は重く下げ余地がある一週間を見ておこうと思います。
今週のコラム
今週はウクライナフリブニャの月足チャートを見ます。
ウクライナ問題が起きてからウクライナの通貨はなんだろうと調べた方も多いと思いますが、フリブニャでドル・フリブニャはUSDUAHで表示されます。通貨記号はアルファベットのSを左右反転させた記号(キリル文字)に横2本線でした。
流動性は低そうですが、テクニカルな観点から見ると2018年のドル高値を上抜けつつあり、一段のフリブニャ安の可能性があること、ターゲットは2015年のドル高値を考えておくべきこと、といったところではないかと思います。
2月16日(水)
16:00 英国1月CPI ☆
19:00 ユーロ圏12月建設支出
28:00 FOMC議事録公表 ☆
2月17日(木)
23:00 レーンECB理事講演 ☆
2月18日(金)
16:00 英国1月小売売上高
16:45 フランス1月CPI
19:00 ユーロ圏12月建設支出
24:00 ユーロ圏2月消費者信頼感速報値 ☆
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
2月7日(月)
ユーロドルは雇用統計後のドル買いの動きから上値が重くなるいっぽうでECB理事会後のユーロ買いの余波も残っていて高値圏でもみあいの一日となりました。ラガルドECB総裁の講演ではインフレリスクに言及しつつも資産買い入れ終了前の利上げは無いと若干理事会後の会見よりもトーンダウンした感じでしたが、やや売られた程度で引けにかけては買い戻しも見られました。
2月8日(火)
ユーロドルは東京市場では米金利上昇の動きからドル買いの動きでユーロの下押しが先行、欧州市場序盤には1.1396レベルの安値をつけました。その後は1.14台前半の狭い値幅でもみあいのまま引けました。
2月9日(水)
ユーロドルは前日のレンジの中で上下ともにトライしきれず動意薄のままで一日を終わる週の中休みといった状態でした。
2月10日(木)
ユーロドルはユーロ円の買いもありNY市場までは底堅い展開、NY市場ではCPIの発表を受けたドル買いからユーロ売りとなったものの、ドル円の買いとともにユーロ円も買われた動きに引っ張られてユーロドルは1.1495レベルの高値をつけました。しかし、1.15の大台を試せなかったことからその後は急速にCPI発表前の水準へと押して引けました。
2月11日(金)
ユーロドルは前日NY後場の下げを受け売りが先行してスタートし、東京午後には1.1368レベルと前日安値をやや下回りました。その後NY市場までは買い戻しが入っていましたが、後場のウクライナ緊迫による株価急落でドル円同様にユーロ円も大幅安となったことから1.1330レベルまで水準を下げ、安値圏での引けとなりました。
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