ウクライナ情勢次第も上値は重い
〇先週のドル円、予想上回るCPI結果による米金利上昇を背景に、利上げ思惑が広がり一時116.34レベルに
〇ウクライナ情勢緊迫で株式市場大幅続落、ドル上値抑え115円目前に戻す
〇ハト派地区連銀総裁は急速引き締めに慎重姿勢、3月初回利上げに向けFRB関係者の発言に注意
〇今週は米1月PPI、FOMC議事録公表、ウォラーFRB理事講演など予定
〇今週は114.90レベルをサポートに115.90レベルをレジスタンスとする流れとみる
今週の週間見通し
先週のドル円は週初からドルじり高の展開が続きましたが、背景には米国の利上げペースがより早く大きくなるという強い思惑が存在しました。特に1月CPIがさらに上昇する予想の中で予想以上に強く7.5%となったことで、10年債利回りは2%を超え、FF先物も3月時点で2回の利上げを織り込み、年末時点で7回の利上げを織り込む(1回を0.25%として)ところまで利上げ思惑が広がり、ドル円も116.34レベルと年初来高値まで1銭と迫りましたが上がり切らずに反落。
ここまでは普通の流れであったと思いますが、東京が休場となった金曜には週末前のポジション調整でドルの上値が重くなる中で、日本の外務省がウクライナ在住の邦人に対して避難勧告を行いました。他の国も避難勧告を出し始めたことから週末に何かあるかもしれないと懸念が広がる中で米国も避難勧告を出したことで株式市場が大幅続落、リスクオフの流れでドル円も115円目前の水準にまで押すという荒れ模様の週末となりました。
現在の為替相場は米金利とウクライナ情勢の2つが大きな材料となっていますが、CPI発表に向けてタカ派の地区連銀総裁が0.5%の利上げや年内にこれまでの想定以上の利上げ回数を示唆する発言を行い、CPIが7.5%でピークを迎えた後にはハト派の地区連銀総裁が利上げのペースは慎重にといった発言を行うなど、FRB内部で発言の調整が行われているとしたら、年7回相当の1.75%までの利上げは現段階ではやや行き過ぎであることを示しているかもしれません。
利上げペース拡大思惑にウクライナ情勢への懸念が加わり株式市場は1200ドルを超える下げを演じたため、急速な利上げによってオーバーキルとなり景気が急減速するリスクを排除したいというところだと思われます。ただインフレは収まらないのみならずウクライナ情勢の悪化は更なるエネルギー価格の上昇につながっていますので、3月の初回利上げに向けてまだまだFRB関係者の発言には注意が必要そうです。
ウクライナ情勢については週前半にはマクロン仏大統領がロシア、ウクライナを訪問し調整に動いていたことからやや楽観的になっていたところ、急速に緊迫した状況となってきたことで驚きもあるのですが、たぶんに米国をはじめ欧州によるロシア牽制の面もあるかと思います。ロシアにとってはオリンピック開催期間など関係ないのかもしれませんが、強力な制裁を受けてでもウクライナに侵攻するのかとなると、早急な行動は控えて引き続き落としどころを探りたいというところではないかと思います。
また木曜に発表された日銀に0.25%での指値オペ発表は、その後金利がやや低下してきていることから本日の応札はゼロ、おそらくは現在の水準で留まっているでしょうから、次回の会合で変動幅の再拡大も含めてイールドカーブコントロールの点検作業を始めているのではないかと考えられます。指値オペはそれまでのつなぎで、もし長期金利が急上昇することがあれば無制限で買い入れるというアナウンス効果を狙っているものと見てよいでしょう。
米金利はいったん先週で上を見たと思いますし、ウクライナ情勢も今すぐでは無いにしても依然として懸念が大きいことを考えると、今週もリスクオフ地合いによる円高の動きが予想されます。テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
ドル円(日足)チャート
1月高値と2月高値がほぼ同水準で反転していることから短期的には高値を見たと言えるチャートです。金曜の安値は2月安値と高値の61.8%押し(114.98)とほぼ一致し、1月安値と2月高値の半値押し(114.89)ともかなり近い水準です。現状では115円の大台割れはいったん買い場となりますが、ここを下抜けてくると次のターゲットとして2月安値と高値の78.6%(61.8%の平方根)押し(114.62)、1月安値と2月高値の61.8%押し(114.56)と114円台半ばとなっています。
現状では114円台半ばの可能性も考えつつ115円割れはいったんサポートという立場を取りたいと思います。上値は116円が重たくなってきていると見て、今週は114.90レベルをサポートに115.90レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2022年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
2月14日(月)
25:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
2月15日(火)
08:50 本邦10〜12月期GDP速報値 ☆
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表
16:00 英国1月失業率
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP改定値 ☆
19:00 ドイツ2月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏2月ZEW景況感
19:00 ユーロ圏12月貿易収支
22:30 米国1月PPI ☆
22:30 米国2月NY連銀製造業景況指数
2月16日(水)
10:30 中国1月CPI・PPI ☆
16:00 英国1月CPI ☆
17:00 南ア1月CPI
19:00 ユーロ圏12月建設支出
22:30 米国1月小売売上高、輸入物価指数
23:15 米国1月鉱工業生産、設備稼働率
24:00 米国2月NAHB住宅指数
24:00 米国12月企業在庫
24:30 週間原油在庫統計
28:00 FOMC議事録公表 ☆
2月17日(木)
08:50 本邦1月貿易収支(通関)
09:30 豪州1月失業率
20:00 トルコ中銀政策金利発表
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国2月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:30 米国1月住宅着工・建築許可件数
23:00 レーンECB理事講演 ☆
25:00 セントルイス連銀総裁講演
30:45 NZ10〜12月期PPI
**:** G20(〜18日)
2月18日(金)
07:00 クリーブランド連銀総裁講演
08:30 本邦1月CPI ☆
16:00 英国1月小売売上高
16:45 フランス1月CPI
19:00 ユーロ圏12月建設支出
24:00 米国1月中古住宅販売、景気先行指数
24:00 ユーロ圏2月消費者信頼感速報値 ☆
24:45 (シカゴ連銀総裁講演)、ウォラーFRB理事講演 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
2月7日(月)
週明けのドル円は金曜雇用統計後のドル買いの動きを受け115.38レベルまで買われたものの金曜高値は超えられず、欧州市場では114.91レベルまで下押しする動きとなりました。その後は再び買い戻しが入ったものの114円台後半の買いと115円台半ばの売りに挟まれ動きにくそうな一日となりました。
2月8日(火)
ドル円は目立った材料が無い中、米国の利上げ前倒し思惑が米債利回りを押し上げたことからドル買いとなりました。値動きも米債利回りのミラー相場となり、東京市場で上昇後に欧州前場には下押し、NY昼前には1.97%と2019年7月以来の水準まで金利が上昇するとドル円も115.63レベルの高値をつけ、引けにかけては若干押しました。
2月9日(水)
ドル円は早朝に買い仕掛けと見られる動きが入り、前日高値を上抜け115.68レベルの高値をつけましたが1月28日高値を抜けられなかったことで急速に下の水準へと押しました。その後は東京からNY市場まで115円台半ばの狭いレンジでのもみあいに終始しました。
2月10日(木)
ドル円はNY市場まで強いCPIが出るのではないかとの思惑がドル高地合いを継続させました。米国CPIは予想を上回る7.5%となり、米長短金利が上昇しドル円も116.34レベルまで上昇しましたが、株式市場が売りで反応したこともありすぐに下押し。引けにかけてはあらためてじり高の動きとなりました。
2月11日(金)
東京市場が休場となった金曜は東京昼頃まではじり高となったものの116.17レベルまでで上値が重くなりその後はNY前場までじり安の展開が続きました。NY市場前場に日本の外務省がウクライナからの退避を勧告、また複数の地区連銀総裁が急速な引き締めには慎重な姿勢を示したこともドルの上値を抑えました。その後、米国もウクライナからの退避勧告を行ったことでNY後場に株式が急落、ドル円も115円の大台目前に水準を下げやや戻して引けました。
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