ウクライナ情勢緊張による円高とフィッチの格下げで下落
〇トルコリラ円、2/12早朝8.51まで急落、ウクライナ情勢緊迫による円高に押される
〇対ドル、情勢緊迫とフィッチの格下げで13.53まで反落、終盤買い戻され2/8以降の底上げ基調続く
〇トルコ外為準備高急増、UAEとの通貨スワップ協定拡大が背景
〇鉄工業生産回復基調の一方、小売売上高は低迷、リラ暴落と物価高騰の影響か
〇2/17トルコ中銀会合を予定、政策金利は現状維持予想
〇8.57を下回るうちは下向きとし、8.48割れからは8.40円台序盤を試す流れとみる
〇8.57超えからは8.60円台への上昇を想定、8.60から8.63にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる
【概況】
トルコリラ円の2月11日は8.63円から8.51円の取引レンジ、12日早朝の終値は8.53円で前日終値の8.57円からは0.04円の円高リラ安となった。
2月3日に8.40円まで下げたところから持ち直しに入り、2月11日未明には8.61円へ上昇、8.60円台をいったん売られて11日夕刻には8.55円まで下げていたが、11日夜にかけての反騰で8.60円台を回復して8.63円まで高値を伸ばしていた。11日深夜にかけては8.60円を挟んだ高値圏の揉み合いとなっていたが、米大統領補佐官によるロシアの軍事侵攻が迫っているとの報道から有事リスクを避けようとしてNYダウが大幅下落、株売り債券買いで米長期債利回りが低下、クロス円全般の下落で円の買い戻しが進んでドル円は10日深夜高値116.33円から12日早朝安値115.00円まで1円を超える下落となり、トルコリラ円も円高に押されて12日早朝には8.51円(ベンダーによっては8.47円等の安値が見られた)まで急落した。
2月14日の午前序盤は8.55円まで戻してからやや下落気味。
【対ドルでは2月8日からのジリ高基調続く】
ドル/トルコリラの2月11日は13.56リラから13.43リラの取引レンジ、12日早朝の終値は13.51リラで前日終値の13.46リラからは0.05リラのドル高リラ安だった。
2月8日夜に13.66リラまでドル高リラ安が進んでいたところから反騰に転じて連日戻り高値を切り上げてきたが、2月11日未明高値13.46リラから11日夕刻安値13.57リラまでいったん売られたものの切り返して11日夜には13.43リラまでこの間の高値を切り上げた。ウクライナ情勢における緊張感拡大とフィッチレーティングによる格下げ報道から12日早朝には13.53リラまで反落したが、終盤に買い戻されて2月8日以降の底上げ基調を維持して週を終えた。週明けの2月14日午前序盤は13.53リラ近辺での推移となっている。
中勢としては1月10日安値13.36リラまで下げた後は新たな安値更新を回避して日足レベルでほぼ横ばいの推移であり、1月14日以降は13.60リラ台では買い戻され、13.20リラ前後では売られる狭いレンジでの持ち合いが続いている。
格付け大手フィッチ・レーティングスは2月11日にトルコのソブリン格付けを「BB−」から「B+」に引き下げた。高インフレが続いており見通しは「ネガティブ」のままとした。
【トルコの外貨準備高が急増、UAEとの通貨スワップを反映】
2月10日夜に発表されたトルコの外貨準備高は2月4日時点のネットで163.3億ドルとなり前週の105.3億ドルから急増した。グロスでも757.2億ドルで前週の716.4億ドルから急増した。
外貨準備高のネットは昨年11月時点の326.4億ドルをピークとして急減して75.5億ドルまで低下していたが、2週連続で急増した。12月にかけてのリラ暴落に対するドル売り介入により激減していたところ、UAE等との通貨スワップ協定の拡大により40〜70億ドル規模が加算されたことや、トルコ国内の輸出企業がトルコ中銀に対して外貨保有額の一定比率を預託させられていることが背景と思われるが、リラ暴落→外貨準備高の激減→リラの先安不安という負の連鎖にはひとまずブレーキがかかっている印象だ。
【トルコ鉱工業生産は堅調だが小売低迷続く】
2月11日にトルコ統計局が発表した12月のトルコ鉱工業生産は前月比1.6%増となり11月の3.3%増から伸びが鈍化したが、前年同月比では14.4%増となり11月の11.35%増及び市場予想の11.2%増を上回った。ウイズコロナ政策による製造業の回復基調は継続している印象だ。
一方で12月の小売売上高は前月比2.7%減となり11月の1.4%増から悪化、前年同月比は15.5%増で11月の17.0%増から鈍化したが、12月にかけてのリラ暴落と物価高騰の影響が出ているのだろうと思われる。
エルドアン大統領は2月13日にトルコ国内の食料品に対する付加価値税(消費税)を現行の8%から1%へと大幅に引き下げ、2月14日から実施すると表明した。物価高騰による国民からの批判に対処する減税と思われるが、先週は医療従事者数千人規模の待遇改善要求の1日ストが発生しており、国民の不満が高まっている。
【2月17日にトルコ中銀金融政策決定会合】
2月17日にトルコ中銀の金融政策決定会合がある。
トルコ中銀は9月から12月までの4会合連続で利下げを強行し、政策金利の週間レポレートは19%から14%まで引き下げられてきた。9月後半から12月にかけてのリラ暴落は、高インフレが続く中での利下げ強行に対する不信任を示したものだったが、12月20日にエルドアン大統領がリラ預金の為替差損補填政策を発表したことと、トルコ中銀や財務相等が1-3月期は様子を見るとし、エルドアン大統領自身も利下げ継続姿勢を維持しつつも追加利下げを急がないとしたことで落ち着いている。
今回も政策金利は現状維持と予想されているが、先行きの利下げ継続姿勢を改めて強調するような大統領らの発言が出てくるようだと先行き不安からリラ売りのきっかけとなる可能性も警戒される。
【当面のポイント 1/12以降は三角持ち合い】
1月3日に8.13円から9.00円までいったん戻した後はこの高安レンジ内での推移であり、1月10日以降はやや底上げ基調にある一方で戻り高値は1月12日の8.70円から1月31日の8.67円と切り下がり、2月11日夜高値も切り下がっているため、現状は上値抵抗線がフラットからやや右肩下がり、下値支持線が切り上がり気味の三角持ち合いの様相であり、その中心値が8.55円あたりにある状況だ。
2月17日のトルコ中銀金融政策決定会合を通過しながら持ち合い放れを試す可能性があるが、そこも大きな動きにつながらない場合は2月28日のトルコ10-12月期GDP、3月3日のトルコ物価統計、3月17日のトルコ中銀金融政策決定会合にかけて持ち合いを続ける可能性もある。
8.40円台前半へ下落して持ち合い中心の8.55円前後へ切り返せなくなる場合は右肩上がりの下値支持線から下抜けるが、その際は8.20円前後まで支持線を切り下げて、レンジ縮小型からややレンジを広げてボックス型の持ち合いの推移に入る可能性も考えられる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8.48円を下値支持線、8.57円を上値抵抗線とする。
(2)8.57円を下回るうちは下向きとし、8.48円割れからは8.40円台序盤(8.43円から8.40円)を試す流れとみる。8.40円以下は反発注意とするが、8.48円以下での推移が続く場合は週の中盤にかけて安値試しを続けやすいとみる。
(3)8.57円超えからは8.60円台への上昇を想定するが、8.60円から8.63円にかけてのゾーンは戻り売りにつかまりやすいとみる。
【当面の主な予定】
2月15日
17:00 1月 財政収支 (12月 -1457.4億リラ)
2月17日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 14.00%)
20:30 週次 外貨準備高・グロス 2/11時点 (2/4時点 757.2億ドル)
20:30 週次 外貨準備高・ネット 2/11時点 (2/4時点 163.3億ドル)
2月18日
16:00 2月 消費者信頼感指数 (1月 73.2)
2月21日
17:00 1月 観光客数 前年比 (12月 170.6%)
23:30 1月 中央政府債務 (12月 2兆7477億リラ)
2月22日
16:00 2月 製造業景況感 (1月 109.5)
16:00 2月 設備稼働率 (1月 77.6%)
注:ポイント要約は編集部
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