ドル上値トライは仕切り直し、基調見極めへ
〇先週のドル円、米消費者物価指数の強い内容に一時ドル高進行、年初来高値に迫る116.34を記録
〇週末にかけウクライナ情勢を嫌気した調整売りなどで一転し急反落、115円前半まで値を下げる
〇10日発表の1月米消費者物価指数は前年比プラス7.5%と約40年ぶりの高い伸びを示す
〇今週は1月小売売上高や1月25-26日開催分のFOMC議事録要旨公開などに注目
〇今週のドル/円予想レンジは114.00-116.40、ドル高・円安は115.70-80が最初のターゲット
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場は、一時ドル高が進行するも「行って来い」。ザラ場ベースで年初来高値に面合わせしたが続かず、週末にかけ反落している。
先週末は、オランダやフィンランドの中銀総裁から「ECB年内利上げ」を予想する発言が聞かれるなか、米補佐官から「ロシアが北京五輪開催中でもウクライナ侵攻の可能性がある」との発言が聞かれると思惑を呼ぶ。
そうした状況下、ドル/円は115.25円前後で寄り付いたのち、週間安値の114.91円を示現。しかし、以降はドル買いが目立つ展開をたどると、年初来高値にあと1銭に迫る116.34円を記録している。強い内容となった米消費者物価指数の内容が好感され、米長期金利の上昇もドル買いを支援していたようだ。ただ、週末にかけてはウクライナ情勢を嫌気した動きが調整売りを誘うと、ドルは一転して1円を超える急反落。115円前半まで値を下げ、週末NYは115.40円台で取引を終え、越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「ウクライナ情勢」と「米金融政策」について。
前者は、前述した米補佐官の発言に加え、米紙による「米当局はロシアが『2日間でウクライナ制圧が可能』と分析していることがわかった」との内容が市場の警戒感をさらに高める。そうしたなか、局面打開を目指して仏露首脳や米仏首脳、英露外相などによる会談が相次ぎ実施されるも、特段目立った進展はなし。それどころか、「ロシアがウクライナとの国境沿いで軍備を増強している」や「バイデン氏が米国民に、ウクライナからの退避呼びかけ」といった危機感を抱かせるニュースが相次ぐ。果ては米国のサキ報道官から「ウクライナ侵攻はいつ開始されてもおかしくはない」、「首都キエフへの奇襲もあり得る」としたコメントも聞かれていたようだ。
対して後者は、一時後退した感もあった「米積極利上げ」見通しだが、4日の米雇用統計好数字を受けて再び勢いを増している。さらに先週10日に発表された1月の米消費者物価指数も、前年比プラス7.5%と約40年ぶりの高い伸びを示すと米10年債利回りは一時2%台を回復している。そうした状況を受け、バイデン米大統領が「物価上昇が家計を圧迫」などと懸念を表明したうえ、ブルームバーグはセントルイス連銀総裁がインタビューで「7月1日までに100bpの利上げ実施を望む」と述べたと報じるなど、市場の強気ムードはさらに強まりつつある感も否めない。
<< 今週の見通し >>
ドル/円は1月28日の115.68円を上限としたレンジ取引をたどっていたが、先週同レベルを上抜け。さらに116円台も一時回復している。これだけ見ればリスクはドル高方向にバイアスがかかりそうだが、週末にかけての1円を超える急反落でドルの上値トライは元の木阿弥に。再びドル高方向へと向かう展開となるのか、それとも1月高値と先週高値でダブルトップを付けたこともあり、ドルはさらなる下値トライをたどるのか、次の方向性を見極めるなかなか重要な一週間となる可能性もある。
前述したように、米雇用統計や同消費者物価指数が非常に強い内容となったこともあり、米金利先高観に変化はない。つまり、日米金利差といった観点だけで考えると、ドル安進行にも限界がありそうだが、問題のひとつは先週末に金融市場全体に広がった「ウクライナ情勢懸念」だ。以前から一部で囁かれていたことながら、「平和の祭典」オリンピック期間中のロシアによる軍事侵攻観測がさらに高まった感もあり、為替市場においてもリスク回避志向が一段と強まる可能性も取り沙汰されていた。そうでなくとも、週間を通してドルの上値を抑制する一因となりかねないかもしれない。
テクニカルに見た場合、先週のドル/円は年初来高値116.35円に一時面合わせするも、週末には115円前半まで押し戻されている。ドルの上値トライが目先は失敗した感を否めず、次なる動意に注目だ。
ちなみに、ドル高方向へと再び振れ、先週超えられなかった116.35円を超えれば次のターゲットは118円台。それに対するドルの下値メドは、移動平均の90日線も近い114.16円など。それを下回ると113円台突入も。
材料的に見た場合、中長期的には、抑え込んでいた政治だけでなく経済、金融リスクが北京五輪後に噴出するとの懸念も聞かれる「中国情勢」、チャールズ英皇太子再感染など欧州王室での感染情報が多く伝えられている「新型コロナ・オミクロン株蔓延問題」−−などに注目。
そうしたなか今週は、1月の小売売上高や1月25-26日開催分のFOMC議事録要旨公開などにまずは注目。また、今週も独露首脳会談などウクライナ情勢をめぐる要人による協議が幾つか予定されており、そちらを注視している向きも少なくないようだ。対話継続方針などが維持されれば、リスク回避的な取引は縮小する可能性もある。
そんな今週のドル/円予想レンジは、114.00-116.40円。ドル高・円安については115.70-80円が最初のターゲット。抜ければ再び116円台回復、そして116.35円も意識されそうだ。
対するドル安・円高方向は、先週末安値の115.02円をめぐる攻防に注目。その少し下、114円台後半には移動平均の21日線が位置しているほか、前半には同90日線も。ドル下値は意外に堅い感もある。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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