トルコリラ円レポート月曜版(2021年3月22日)

金融政策イベントに続き、週末には中銀総裁更迭と事件とも言えるイベントが起きていますので、今週もトルコリラ円を中心に書くこととします。

トルコリラ円レポート月曜版(2021年3月22日)

トルコリラ円レポート月曜版

〇20日エルドアン大統領が2%の利上げを行ったアーバルトルコ中銀総裁を解任
〇週明けのトルコリラ円は12.65レベルへと暴落してのスタート
〇週末高値の15.10レベルから考えると2.45円、率にして16.2%もの暴落
〇トルコに対する格付け見直しなど長期的には再びトルコリラ安に向かうリスクに注意
〇今週は大台13.00レベルをサポートに、大台14.00レベルをレジスタンスとする

まず、先週の振り返りですが、「利上げ実施シナリオで、大台14.00レベルをサポートに、14.75レベルをレジスタンスと横方向に動きながら底割れは回避する週」を見ていました。実際のレンジは、安値が14.26レベル、高値が15.10レベルとなり、予想以上にトルコリラ高での推移となりました。

先週のトルコリラは、木曜のトルコ中銀会合まではほとんど動きが見られず、14円台前半から半ばにかけての狭い範囲でのもみあいを続けました。これはトルコ中銀の会合において現状維持と利上げとで市場参加者の意見が分かれていたことが大きかったためですが、直前では1%程度の利上げを考える参加者が増えていました。

つまり現状維持となった場合には米金利が上昇する中でトルコリラが下がるリスクがあるという状況で中銀会合の結果が出ましたが、予想を大きく超える2%の利上げとなり政策金利19%となりました。また中銀の声明でも引き締めスタンスを維持するという、これまでの最近の中銀のスタンスを更に強化するものとなりました。

この結果を受けトルコリラは対ドル、対円で大幅高となり、翌金曜にはドルトルコリラは7.1855レベル、トルコリラ円は15.10までトルコリラが上伸し、トルコリラの高値引けで週末を迎えることとなったのですが、まさかその後に更なるサプライズがあるとは誰も思わずの展開です。

以前からエルドアン大統領は中銀による引き締め政策を好ましく思わず、低金利がトルコ経済にとって良いという独自理論を展開していましたが、20日の官報で2%の利上げを行ったアーバルトルコ中銀総裁を解任しました。この時点で市場は閉まっていますので、週明け早朝のトルコリラ相場がどこまで崩れるのかという懸念とともに週明け待ちとなりましたが、トルコリラショック再現となりました。

ドルトルコリラは早朝大きくギャップアップして8.2879レベルとトルコリラ暴落でのスタート。そしてトルコリラ円のカバーのためドル円では円買い方向にギャップダウンして始まったことで、トルコリラ円は12.65レベルへと暴落してのスタートです。おそらくはほぼ気配だけが下がる中でもっと低いレートもついていそうですが、ここでは安値12.65レベルとして話を進めます。

つまり、週末高値の15.10レベルから考えると2.45円、率にして16.2%もの暴落を演じたこととなります。主要通貨ではここまでの変動はありませんし、新興国通貨でもここまでの変動は稀な出来事です。2019年の正月明けのトルコリラ暴落時も17.3%程度の暴落であったことを考えると最近では最大級の暴落と言ってもよいでしょう。

その後市場は落ち着きを戻しつつありますが、トルコ中銀が市場の信頼を得る動きを続けていたことに対し、エルドアン大統領は3人連続で中銀総裁を更迭したことで市場の信頼を大きく損なわせました。エルドアン大統領の顔色を伺いながらの金融政策では中銀の独立性はありませんし、投資資金も逃げていくいっぽうになるリスクが高いと言わざるを得ません。

テクニカルにも見てみましょう。まずはトルコリラ円日足チャートです。

トルコリラ円レポート月曜版

先週の高値引けから大きくギャップダウンして始まり、その後落ち着きを戻して買いが続いている地合いがわかるチャートです。昨年11月安値と今年2月高値との78.6%(61.8%の平方根)押し水準が安値となったこともテクニカルには反発の材料になりましたが、ここまでの暴落があると、さすがに先週までの3月安値だった13.94レベルが大きなレジスタンスとなってくるでしょう。

また今後のトルコに対する格付け見直しや一段の投資回避の動きを考えると長期的には再びトルコリラ安に向かうリスクには注意しなくてはなりません。いつもの4時間足チャート(上からトルコリラ円、ドルトルコリラ、ドル円)もご覧ください。

トルコリラ円レポート月曜版 2枚目の画像

執筆中に一段の買い戻しが出ていますが、上述の通りで現行水準13.94レベルはいったんレジスタンスとなる水準です。多少の誤差を考えても14円の大台を超えてどんどん上がっていくとは考えにくい状況です。

ただ、早朝の乱闘で既に短期的な安値も見たでしょうから、今週は大台13.00レベルをサポートに、大台14.00レベルをレジスタンスと、上値は限定的という見方をしておきます。

注:ポイント要約は編集部

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