トルコリラ円レポート月曜版
〇20日エルドアン大統領が2%の利上げを行ったアーバルトルコ中銀総裁を解任
〇週明けのトルコリラ円は12.65レベルへと暴落してのスタート
〇週末高値の15.10レベルから考えると2.45円、率にして16.2%もの暴落
〇トルコに対する格付け見直しなど長期的には再びトルコリラ安に向かうリスクに注意
〇今週は大台13.00レベルをサポートに、大台14.00レベルをレジスタンスとする
まず、先週の振り返りですが、「利上げ実施シナリオで、大台14.00レベルをサポートに、14.75レベルをレジスタンスと横方向に動きながら底割れは回避する週」を見ていました。実際のレンジは、安値が14.26レベル、高値が15.10レベルとなり、予想以上にトルコリラ高での推移となりました。
先週のトルコリラは、木曜のトルコ中銀会合まではほとんど動きが見られず、14円台前半から半ばにかけての狭い範囲でのもみあいを続けました。これはトルコ中銀の会合において現状維持と利上げとで市場参加者の意見が分かれていたことが大きかったためですが、直前では1%程度の利上げを考える参加者が増えていました。
つまり現状維持となった場合には米金利が上昇する中でトルコリラが下がるリスクがあるという状況で中銀会合の結果が出ましたが、予想を大きく超える2%の利上げとなり政策金利19%となりました。また中銀の声明でも引き締めスタンスを維持するという、これまでの最近の中銀のスタンスを更に強化するものとなりました。
この結果を受けトルコリラは対ドル、対円で大幅高となり、翌金曜にはドルトルコリラは7.1855レベル、トルコリラ円は15.10までトルコリラが上伸し、トルコリラの高値引けで週末を迎えることとなったのですが、まさかその後に更なるサプライズがあるとは誰も思わずの展開です。
以前からエルドアン大統領は中銀による引き締め政策を好ましく思わず、低金利がトルコ経済にとって良いという独自理論を展開していましたが、20日の官報で2%の利上げを行ったアーバルトルコ中銀総裁を解任しました。この時点で市場は閉まっていますので、週明け早朝のトルコリラ相場がどこまで崩れるのかという懸念とともに週明け待ちとなりましたが、トルコリラショック再現となりました。
ドルトルコリラは早朝大きくギャップアップして8.2879レベルとトルコリラ暴落でのスタート。そしてトルコリラ円のカバーのためドル円では円買い方向にギャップダウンして始まったことで、トルコリラ円は12.65レベルへと暴落してのスタートです。おそらくはほぼ気配だけが下がる中でもっと低いレートもついていそうですが、ここでは安値12.65レベルとして話を進めます。
つまり、週末高値の15.10レベルから考えると2.45円、率にして16.2%もの暴落を演じたこととなります。主要通貨ではここまでの変動はありませんし、新興国通貨でもここまでの変動は稀な出来事です。2019年の正月明けのトルコリラ暴落時も17.3%程度の暴落であったことを考えると最近では最大級の暴落と言ってもよいでしょう。
その後市場は落ち着きを戻しつつありますが、トルコ中銀が市場の信頼を得る動きを続けていたことに対し、エルドアン大統領は3人連続で中銀総裁を更迭したことで市場の信頼を大きく損なわせました。エルドアン大統領の顔色を伺いながらの金融政策では中銀の独立性はありませんし、投資資金も逃げていくいっぽうになるリスクが高いと言わざるを得ません。
テクニカルにも見てみましょう。まずはトルコリラ円日足チャートです。
先週の高値引けから大きくギャップダウンして始まり、その後落ち着きを戻して買いが続いている地合いがわかるチャートです。昨年11月安値と今年2月高値との78.6%(61.8%の平方根)押し水準が安値となったこともテクニカルには反発の材料になりましたが、ここまでの暴落があると、さすがに先週までの3月安値だった13.94レベルが大きなレジスタンスとなってくるでしょう。
また今後のトルコに対する格付け見直しや一段の投資回避の動きを考えると長期的には再びトルコリラ安に向かうリスクには注意しなくてはなりません。いつもの4時間足チャート(上からトルコリラ円、ドルトルコリラ、ドル円)もご覧ください。
執筆中に一段の買い戻しが出ていますが、上述の通りで現行水準13.94レベルはいったんレジスタンスとなる水準です。多少の誤差を考えても14円の大台を超えてどんどん上がっていくとは考えにくい状況です。
ただ、早朝の乱闘で既に短期的な安値も見たでしょうから、今週は大台13.00レベルをサポートに、大台14.00レベルをレジスタンスと、上値は限定的という見方をしておきます。
注:ポイント要約は編集部
関連記事
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:田代 昌之
2024.11.22
東京市場のドルは154円台後半で推移、日銀による追加利上げ観測が円安のブレーキ役に(24/11/22)
東京時間(日本時間8時から15時)のドル・円は、日本株のしっかりとした推移を材料にじり高の展開となり154円台後半で推移した。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:斎藤登美夫
2024.11.22
ドル円 値動きそのものは激しいが、結果レンジ内か(11/22夕)
東京市場はドルが小高い。やや激しめの乱高下をたどるなか、最終的にドルは高値引け。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:編集人K
2024.11.22
ドル円154円台前半、本邦CPI高止まり等で一時154円割れ (11/22午前)
22日午前の東京市場でドル円は「往って来い」。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2021.03.23
トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁解任による暴落一服だが、暴落再開懸念を抱えた状況(21/3/23)
トルコリラ円は3月22日朝に暴落、安値で13.34円を付けた。ベンダーによっては13円割れの水準まで一時急落した。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:上村 和弘
2021.03.22
トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁突然の解任で暴落(21/3/22)
3月20日にエルドアン大統領はトルコ中銀のアーバル総裁を突然解任したと報じられた。突然の解任劇に22日朝の取引開始時には13.34円へ急落した。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。