トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁解任による暴落一服だが、暴落再開懸念を抱えた状況(21/3/23)

トルコリラ円は3月22日朝に暴落、安値で13.34円を付けた。ベンダーによっては13円割れの水準まで一時急落した。

トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁解任による暴落一服だが、暴落再開懸念を抱えた状況(21/3/23)

トルコ中銀総裁解任による暴落一服だが、暴落再開懸念を抱えた状況

〇トルコリラ円、3/22昼13.33まで下落したところで暴落商状一服、夕刻反動で14.12まで戻す
〇その後3/23早朝高値14.03からはややジリ安の推移、午前序盤は13.90を割り込む
〇対ドル、3/22午前の暴落後売り一巡で夕刻に7.68まで戻すがその後新たな高値更新ならず
〇トルコリラ暴落ショックにより、3/22朝主要通貨も一段安となる
〇中銀新総裁、即時の政策転換は考えていないと述べたが、今後暴落の可能性への懸念も
〇13.50以上での推移中は上昇余地あり、14円超えからは14.20から14.50への上昇を想定する
〇13.50割れからは、13円前後への下落を想定する

【概況】

トルコリラ円は3月22日朝に暴落、安値で13.34円を付けた。ベンダーによっては13円割れの水準まで一時急落した。
3月18日のトルコ中銀による利上げ発表から15.13円まで上昇して2月16日高値15.26円に迫った状況で先週を終えたのだが、エルドアン大統領がトルコ中銀のアーバル総裁を19日付けで解任したと20日の官報で示されたことで週明けのトルコリラは暴落開始となった。22日昼には13.33円まで安値を切り下げたところで暴落商状は一服となり、夕刻には売られ過ぎの反動で14.12円まで戻したが、14円以上では22日夜と23日早朝に戻り売りで押されており、23日早朝高値14.03円からはややジリ安の推移で23日午前序盤は13.90円を割り込んでいる。

【トルコリラ暴落ショックで22日朝は主要通貨も下げる】

対ドルでのトルコリラは18日の中銀利上げ後の上昇を継続して20日早朝には7.18リラまで上昇していたが、中銀総裁解任騒動により22日午前には8.17リラへ暴落した。売り一巡で22日夕刻には7.68リラまで戻したもののその後は新たな高値更新へ進めずに23日序盤は7.82リラ近辺での推移となっている。

トルコリラ暴落発生により、主要通貨も軒並みリスク回避からの手仕舞い売りで22日午前に下落した。ドル円は22日朝に108.57円まで下げて3月15日以降の安値を更新、ユーロドルやポンド/ドル、豪ドル米ドルなども週末安値を若干割り込んだ。クロス円全般はドル円の下落も重なったことで下げが目立ち、ユーロ円が129円割れへ一段安、ポンド円も150円台序盤へ一段安していずれも18日高値以降の安値を更新した。南アランド円やメキシコペソ円も早朝の下落でFOMC前水準を割り込む一段安となった。いずれもトルコリラ暴落一服後は買い戻されているが、米長期債利回りの上昇によるドル高圧力が高まる中で新興国も利上げを強いられる状況に入ってきており、利上げにより景気回復の足が引っ張られることと通貨防衛の必要性が天秤にかけられる状況にあるが、新興国通貨への不安心理を煽る要因となった印象だ。

【トルコ中銀の新総裁のスタンスを探る】

トルコ中銀は3月18日の金融政策会合で主要政策金利を2.0%引き上げて19.0%とし、市場予想の18%を上回る利上げを決定したばかりだ。
トルコ中銀はエルドアン大統領による「政策金利と物価上昇率の一桁を目指す」方針により通貨防衛のための利上げが続いていた2019年7月にウイサル総裁を就任させ、同総裁は就任早々に当時の24.0%から19.75%へ利下げを行い、その後の連続的な利下げにより2020年5月には政策金利は8.25%まで引き下げられてきた。しかしトルコの物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態に陥り、通貨防衛のための市場介入により外貨準備高が大幅に低下したことでトルコリラは2020年11月に史上最安値を更新し続けていった。
利上げを欲しないエルドアン大統領も利上げ止む無しとして昨年11月にアーバル総裁へ交代させて、アーバル総裁は11月、12月と連続利上げし、3月18日に三度目の利上げを行ったばかりであった。しかし三度目の利上げがエルドアン大統領にとってはやりすぎの一線を超えたのだろう。

新総裁は政権与党の元議員であるカブジオール氏だが、同氏は3月21日のトルコ市中銀行トップらとの電話会談において大幅なリラ売りや利下げへの政策方針変更をめぐっての市場の懸念を和らげるために即時の政策転換は考えていないと述べたと通信社が報じている。この発言報道もあって暴落が一服した状況にあると思われるが、仮に利上げはもうせずに利下げの機会をうかがう姿勢へとトルコ中銀の金融姿勢が変わったのだと市場が受け止めれば22日朝の暴落のような状況が繰り返され、昨年11月にかけての通貨危機的暴落による史上最安値更新へ向かう可能性も大いに懸念される状況となったのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月22日朝の暴落とその後の反発を踏まえて22日朝安値を直近のサイクルボトムとする。高値形成期は24日から26日にかけての間と想定されるが、戻りが短命の可能性があると警戒し、13.50円割れからは下げ再開注意、13.25円割れからは弱気サイクル入りとみて25日朝から29日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では3月22日朝の暴落から戻したことで遅行スパンは好転したが再び悪化しやすい位置にある。先行スパン突破にはまだ至っていないが14円台を回復してくれば先行スパン突破となる。暴落後の反動高から今後の展開を見定める必要もあるので、14円以上での推移が続く場合は遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、13.50円以下での推移からは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は22日朝の暴落時に10ポイントまで急落した後は50ポイント手前へ戻している。50ポイント超えからは戻りを試す流れを続けやすいとみるが、40ポイント割れから続落し始める場合は下げ再開を警戒する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.50円を下値支持線、14.00円を上値抵抗線とする。
(2)13.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、14円超えからは14.20円から14.50円にかけての上昇を想定するが、14.25円以上へ上昇した後に13.75円を割り込むところからは下げ再開とみる。
(3)13.50円割れからは13円前後への下落を想定する。13円前後では買い戻しも入りやすいとみるが13円割れをスルーで続落して行く場合は22日安値13.33円試しとし、底割れからは13円を目指す流れを想定する。

【当面の主な予定】

3月24日
 16:00 3月 消費者信頼感指数 (2月 84.5、予想 81.0)
3月25日 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨公表
 20:30 週次外貨準備高 (3/12時点 526.6億ドル)
3月26日
 16:00 3月 製造業景況感 (2月 109.3、予想 107.0)
 16:00 3月 設備稼働率 (2月 74.9%、予想 75.0%)
3月31日
 16:00 2月 貿易収支 (1月 -30.3億ドル) 
4月 1日
 16:00 3月 イスタンブール製造業PMI(2月 51.7、予想 52.3)


注:ポイント要約は編集部

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