ドル円見通し 108円台後半でやや右肩下がりの小動き(21/3/23)

ドル円は3月22日朝に108.57円まで下落して3月15日午後高値109.36円以降の安値を更新した。

ドル円見通し 108円台後半でやや右肩下がりの小動き(21/3/23)

ドル円見通し 108円台後半でやや右肩下がりの小動き

〇ドル円、3/22朝108.57まで下落、3/15午後高値109.36以降の安値を更新
〇トルコ中銀総裁の突然の解任によりトルコ金融政策への信認揺らぐ、トルコリラ暴落
〇3/22朝に急落した後主要通貨は持ち直す、様子見ムード続きドル円は動意付けないまま
〇米10年債利回りは低下するも、高水準を維持
〇米長期債利回り上昇トレンドの継続=ドル高継続となりやすい環境か
〇109以下での推移のうちは一段安余地あり、108.57割れからは108.30から108.00試しへ向かうとみる
〇109.12超えからは上昇期に入るとみて、3/15高値109.36から109.50を試すとみる

【概況】

ドル円は3月22日朝に108.57円まで下落して3月15日午後高値109.36円以降の安値を更新した。22日朝に為替市場全般が手仕舞い売りに一斉に下げたが、3月19日にトルコ中銀のアーバル総裁が突然解任された(19日付け、20日の官報で発表)ことでトルコリラが暴落、トルコリラ円が昨年11月6日底12.03円から今年2月16日高値15.26円まで上昇してきた上げ幅に対して一瞬で凡そ3分の2を削る暴落規模となったことでトルコリラショックとして為替市場全般がいったんリスク回避的な動きをとったことが原因のようだ。トルコリラは暴落一服で4割程度を戻したものの中銀利上げにより上昇してきた流れが利上げ否定派のエルドアン大統領による中銀総裁解任という独裁的な行動でトルコ金融政策への信認が再び揺らいだ。

しかし、3月22日朝に一斉に急落した後の主要通貨は持ち直した。米長期債利回りが低下してからも落ち着いた動きにとどまったことでFOMCからの米長期債利回りの乱高下に一服感が出たため、ユーロドルは18日からの下げ幅の半値戻し以上へ切り返し、ポンドドルも下げ止まり、豪ドルもやや持ち直しの動きとなった。米長期債利回りは下がったとはいえFOMC前の水準を超えた一段高状態は変わらないため様子見ムードが続き、ユーロ以外の戻りは鈍く、ドル円も動意付けないままとなった。

【米10年債利回りは低下するも高水準を維持】

米10年債利回りは3月18日未明のFOMC前時点では1.69%で、FOMC後にいったん1.62%まで低下したものの18日夜に1.75%へ一段高となった。19日夕に1.67%へ反落してから19日夜に1.74%まで再び上昇という乱高下で先週を終えたが、週明けの22日は午前から軟調推移で夕刻には1.66%まで低下した。その後は下げ渋りで22日夜には1.70%まで戻したが1.70%超えでは抵抗感が出て落ち着いている。
米長期債利回りの上昇は、FOMCにおいて長期債利回り上昇を抑えようとする姿勢が見られずに容認と受け止められたことがきっかけとなった。日銀が長期金利抑制目標を従来のゼロ%程度としていたところからプラスマイナス0.25%程度まで幅を広げたことや豪中銀による通常以上の国債買い入れによる利回り抑制の動き、ECBも国債買い入れペースを加速して利回り抑制へ動く姿勢を示すなど、米連銀の容認姿勢との差も顕著になっており、米長期債利回りが景気回復による消費拡大と物価上昇及び大量国債発行が続く情勢を反映して上昇基調を続けやすい中では米長期債利回り上昇トレンドの継続=ドル高継続となりやすい環境といえる。

米財務省は3月23日に2年債600億ドル、24日に5年債610億ドル、25日に7年債620億ドル、今週は合計で1830億ドルの米国債入札予定であり、応札が旺盛なら利回り低下に貢献するが、応札不調なら利回りが跳ね上がる可能性もあるところだ。
パウエル議長は23日に議会証言を行うが、その冒頭発言のテキストが公開された。その中では「景気回復は想定よりも速く足取りは強くなりそうだ」が「景気が完全に戻る状況には程遠い」、「FRBは経済が必要とする限り金融緩和による支援を続ける」という内容で従来のスタンスと変わらず金融緩和の継続姿勢を強調するものとなっているが、長期債利回り抑制姿勢も引き続き見られない。
米リッチモンド地区連銀のバーキン総裁は3月22日の講演で「米連銀の物価・雇用目標達成に向けて著しい進展は見られていない」とし「向こう数カ月間で物価は前年比の伸びが大幅に拡大する見込みだがそれは前年の水準が非常に低かったり個人が一時的な消費行動に走るといった要因の影響にすぎない」とし、金融緩和政策判断において「重視しない」と述べた。まだ物価上昇が続いて長期債利回りが上昇することも構わない姿勢だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月17日深夜に3月15日夕高値へ迫ったところから失速したために3月18日朝時点では3月15日夕と3月17日深夜の両高値をダブルトップとした下落期入りとし、3月16日深夜安値を基準として安値形成期を19日夜から23日夜にかけての間と想定した。
22日朝安値の後は新たな安値更新を回避しているもののその後の戻りも鈍いため、109円以下での推移中は一段安余地ありとするが、19日昼の戻り高値109.12円を超えてくるところからはいったん上昇期に入るとみて23日の日中から24日深夜にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では小幅なレンジでやや軟調な推移が続いているため遅行スパンは実線と交錯を繰り返しているが、先行スパンを上抜け切れない状況が続いている。109円を超えてくれば先行スパン突破となるので上昇再開の可能性を優先して遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、先行スパンを上抜ききれないうちはもう一段安余地ありとみる。

60分足の相対力指数は50ポイントを挟んでの揉み合いが続いている。60ポイント超えからは上昇に勢いがつくとみるが、60ポイントを超えないうちは一段安警戒として40ポイント割れからは30ポイント以下を目指す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
中勢は1月6日底からの上昇基調の継続とみるが、短期的には上昇一服による調整期にあるところと考える。
(1)当初、3月22日午前安値108.57円を下値支持線、19日昼高値109.12円を上値抵抗線とする。
(2)109円以下での推移か一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、108.57円割れからは108円台序盤(108.30円から108.00円)試しへ向かうとみる。108.20円以下は反騰注意とするが、109円以下での推移なら24日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)3月19日昼高値109.12円超えからは上昇期に入るとみて3月15日高値109.36円から109.50円を試すとみる。109.50円以上は反落注意とみるが、109円以上での推移なら24日は高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

16:00 (英) 2月 失業率 (1月 7.2%)
16:00 (英) 2月 失業保険申請件数 (1月 -2.00万件)
16:00 (英) 1月 失業率・ILO方式 (12月 5.1%、予想 5.2%)
17:40 (英) ホールデン英中銀理事、講演
18:55 (英) カンリフ英中銀副総裁、講演
19:00 (仏) ヴィルロワ・ド・ガロー仏中銀総裁、講演
20:50 (英) ベイリー英中銀総裁、講演

21:30 (米) 10-12月期 経常収支 (7−9月 -1785億ドル、予想 -1885億ドル)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数・年率換算件数 (1月 92.3万件、予想 87.5万件)
23:00 (米) 2月 新築住宅販売件数 前月比 (1月 4.3%、予想 -5.5%)
23:00 (米) 3月 リッチモンド連銀製造業指数 (2月 14、予想 16)
25:00 (米) パウエル米FRB議長、下院金融委員会証言
27:45 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
28:45 (米) ブレイナードFRB理事、講演
29:20 (米) ブラード・セントルイス連銀総裁、討論会参加

3/24(水)
06:45 (NZ) 2月 貿易収支 (1月 -6.26億NZドル)
08:50 (日) 日銀金融政策決定会合議事要旨(1月20-21日分)
08:50 (日) 2月 企業向けサービス価格指数 前年同月比 (1月 -0.5%、予想 -0.5%)
16:00 (英) 2月 消費者物価指数 前月比 (1月 -0.2%、予想 0.5%)
16:00 (英) 2月 消費者物価指数 前年同月比 (1月 0.7%、予想 0.8%)
16:00 (英) 2月 消費者物価コア指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.4%)
16:00 (英) 2月 小売物価指数 前月比 (1月 -0.3%、予想 0.6%)
16:00 (英) 2月 小売物価指数 前年同月比 (1月 1.4%、予想 1.5%)

17:15 (仏) 3月 製造業PMI速報値 (2月 56.1、予想 56.4)
17:15 (仏) 3月 サービス業PMI速報値 (2月 45.6、予想 45.5)
17:30 (独) 3月 製造業PMI速報値 (2月 60.7、予想 60.6)
17:30 (独) 3月 サービス業PMI速報値 (2月 45.7、予想 46.5)
18:00 (欧) 3月 製造業PMI速報値 (2月 57.9、予想 57.9)
18:00 (欧) 3月 サービス業PMI速報値 (2月 45.7、予想 46.0)
18:30 (英) 3月 製造業PMI速報値 (2月 55.1、予想 55.0)
18:30 (英) 3月 サービス業PMI速報値 (2月 49.5、予想 51.0)

21:30 (米) 2月 耐久財受注 前月比 (1月 3.4%、予想 0.8%)
21:30 (米) 2月 耐久財受注・輸送用機器除く 前月比 (1月 1.4%、予想 0.6%)
22:45 (米) 3月 製造業PMI速報値 (2月 58.6、予想 59.5)
22:45 (米) 3月 サービス業PMI速報値 (2月 59.8、予想 60.1)
23:00 (米) パウエルFRB議長、イエレン財務長官、米上院銀行委員会公聴会で証言
23:30 (米) EIA週間石油在庫統計
24:00 (欧) 3月 消費者信頼感 速報値 (2月 -14.8、予想 -14.5)
26:00 (米) 米財務省5年債、2年物変動利付債入札
26:35 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、討論会参加
28:00 (米) デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演


注:ポイント要約は編集部

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