トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁解任による暴落一服も長続きせず一段安を伺う(21/3/24)

23日夕刻には14.13円まで戻り高値を若干切り上げたが24日早朝にかけては再び軟調推移でり安値では13.58円まで下げている。

トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁解任による暴落一服も長続きせず一段安を伺う(21/3/24)

トルコ中銀総裁解任による暴落一服も長続きせず一段安を伺う

〇トルコリラ円、23日夕刻に14.13まで高値を少し切り上げるも24日早朝は13.58まで安値を下げる
〇アーバル総裁が市場の信頼を回復してきたが、突然の解任により市場の失望も大きく信任回復は難しいか
〇対ドルは24日朝時点で7.95まで下落、リラ売り攻勢となれば昨年のように連日最安値を更新の可能性も
〇EU首脳会議ではトルコ問題も扱われるため内容にも注目
〇トルコ海外観光客入国数は前年同月比マイナス68.96%、主力の来訪国及び欧州の感染拡大深刻化が影響
〇13.33以上で推移中は上昇余地あり、14.13超えから14.20前後への上昇を想定
〇13.33割れから13円前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円は週末のトルコ中銀総裁解任報道から3月22日朝に13.34円へ暴落、その後13.33円まで安値を切り下げた後は売り一巡からの買い戻しで暴落一服となり22日夕刻には14.12円まで戻し、23日夕刻には14.13円まで戻り高値を若干切り上げたが24日早朝にかけては再び軟調推移で安値では13.58円まで下げている。
11月に就任してから三度の利上げを行いインフレ抑制と通貨防衛に寄与してきたアーバル総裁に対して利上げを望まないエルドアン大統領が3月18日の三度目の利上げを許容できないとして突然の解任に踏み切ったようだが、アーバル総裁が市場の信認を回復してきたことを一挙に打ち消すものとなったために市場の失望も大きく、信任回復はもはや難しい印象だ。

【トルコリラ暴落ショックは長期化の懸念】

対ドルでのトルコリラは3月18日の中銀による三度目の利上げから上昇基調を継続して3月20日早朝には7.18リラまで上昇していたが、中銀総裁解任騒動から22日午前に8.17リラへ暴落した。リラ売り一巡から22日夕刻には7.68リラまで戻し、23日夕刻には7.66リラまで戻り高値を若干切り上げたがその後は再び軟調な推移となり24日朝時点では7.95リラまで下落している。
解任騒動による22日暴落に対して凡そ半値戻しをいったん見せたものの短期的な売り一巡で済まされない状況のため、新たな中銀総裁による今後の金融政策姿勢を見定めたいとしつつも市場の信認を回復するのは無理だろうとの思惑は増大しており、リラ売り攻勢が仕掛けられ始めれば昨年11月へ連日のように史上最安値を更新していた時のような展開に陥りかねない状況と思われる。

【EU首脳会議に注目】

EUは3月25日から26日にかけて首脳会議を開催するが、トルコ問題も取り扱われるようだ。報告書ではトルコとの通商関係の強化に向けた交渉を開始するべきとする一方でトルコがEUの利益に反する行動を取った場合は経済制裁を科すという内容となっている。EUはトルコが数百万人のシリア難民を受け入れていることに対しては好意的な立場を示しており、この問題に関するトルコへの財政支援を増やすことを報告書では提案している。またトルコとのビザなし渡航や関税同盟の拡大への提案もあるようだ。その一方でトルコのキプロス島問題や東地中海のガス田開発によるギリシャとの対立問題などにおいては批判的立場にあり、これらの問題がEUの利益を損なう場合には制裁を課すとしている。EUは昨年12月に東地中海ガス田開発問題で資産凍結や渡航禁止措置を提案したが、制裁実施は見送られている。
トルコ中銀総裁の解任騒動による不信感が強まった状況の中にあってはトルコリラへの売り材料への反応も大きくなりやすいため今回のEU首脳会議内容にも注目しておきたい。

【観光客減少続き回復のめど立たず、感染第三波の影響も懸念】

【観光客減少続き回復のめど立たず、感染第三波の影響も懸念】

トルコ文化観光省が3月22日に発表した2月の海外からの観光客入国数は53万7976人で前年同月比マイナス68.96%となった。昨年3月のコロナショック第一波により昨年3月に前年同月比67.83%減、4月には99.26%減となりその後も70%減前後での推移が続いている。来訪者の上位5か国で最大はロシアで8万7046人、次いでイランが4万3413人、イラクが3万6188人、ブルガリアが3万3668人、ドイツが3万2787人となっている。

トルコの新規感染者数は3月22日に2万2216人増となり第二波が落ち着いた1月24日の5277人から4倍となり、第二波のピークだった12月8日の3万3198人に迫った。3月23日も2万6182人増となった。
ドイツも3月18日には1万7860人増となり第三波に入り、ロックダウンの延長が決まった。イラクは第二波だが、3月17日に5663人増となり第一波のピークだった9月23日の5055人を超えている。イランも増加傾向にあり、主力の来訪国及び欧州の感染拡大が深刻化していることの影響は今後も長引きそうだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月22日朝の暴落とその後の反発を踏まえて23日午前時点では22日朝安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避のうちは24日から26日にかけての間への上昇余地ありとしたが、戻りが短命の可能性があると警戒して13.50円割れからは下げ再開注意とした。
 3月23日夕刻へ戻り高値を若干切り上げたもののその後の失速で13.50円をいったん割り込んでいるため既にサイクルトップを付けて下落期入りしている可能性があるが、底割れ回避のうちは23日夕高値超えからの上昇余地ありとし、22日朝安値割れからは新たな下落期入りとみて25日から29日午前にかけての間への下落で22日朝安値割れを目指すとみる。

60分足の一目均衡表では3月22日朝の暴落から戻したことで遅行スパンが好転していたが23日夕高値からの下落で再び悪化しているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。先行スパン突破からは上昇再開とするが先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後の悪化からは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は22日朝の暴落時に10ポイントまで急落した後は50ポイント手前へ戻したが、その後は50ポイント以上へ切り返しきれずにいるため、50ポイント超えからは戻りを試す流れを続けるとみるが、50ポイント以下での推移中は下向きとして30ポイント割れを目指すとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月22日午前安値13.33円を下値支持線、23日夕高値14.13円を上値抵抗線とする。
(2)13.33円以上での推移中は上昇余地ありとし、14.13円超えからは14.20円前後への上昇を想定するが、14.20円以上は反落警戒とみる。
(3)13.33円割れからは13円前後への下落を想定する。13円前後では買い戻しも入りやすいとみるが13.33円を割り込んだ後も13.50円以下での推移なら25日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

3月24日
 16:00 3月 消費者信頼感指数 (2月 84.5、予想 81.0)
3月25日 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨公表
 20:30 週次外貨準備高 (3/12時点 526.6億ドル)
3月26日
 16:00 3月 製造業景況感 (2月 109.3、予想 107.0)
 16:00 3月 設備稼働率 (2月 74.9%、予想 75.0%)
3月31日
 16:00 2月 貿易収支 (1月 -30.3億ドル) 
4月 1日
 16:00 3月 イスタンブール製造業PMI(2月 51.7、予想 52.3)


注:ポイント要約は編集部

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