トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁解任による暴落一服で様子見の持ち合い(21/3/25)

トルコ円、24日夕刻に13.43円へ失速、25日午前序盤は13.74円近辺での低空飛行となっている。

トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁解任による暴落一服で様子見の持ち合い(21/3/25)

トルコ中銀総裁解任による暴落一服で様子見の持ち合い

〇トルコリラ円、暴落一服するも上値の重い状況での揉み合い
〇対ドルでも暴落一服、25日午前序盤は7.88近辺での推移
〇イスタンブール100株価指数、買い戻し及びリラ安による通貨インフレ分のかさ上げで2.64%高と反発
〇24日発表の3月トルコ消費者信頼感指数は86.7で2月より改善、市場予想上回る
〇カブジオール新総裁、13%前後への利下げの可能性も
〇23日夕高値14.13超えからは14.25前後への上昇を想定
〇22日午前安値13.33割れからは13円前後への下落を想定

【概況】

トルコリラ円は週末のトルコ中銀総裁解任報道により3月19日終値15.07円から3月22日安値13.33円へ暴落した。その後は暴落一服となっているものの、23日夕刻に14.13円まで戻した後は上値の重い状況での揉み合いとなっており、24日夕刻には13.43円へ失速、25日午前序盤は13.74円近辺での低空飛行となっている。

対ドルでのトルコリラは3月18日の中銀利上げからの上昇で3月20日早朝には7.18リラまで上昇していたが、中銀総裁解任騒動から22日午前に8.17リラへ暴落し、その後は暴落一服で23日夕刻に7.66リラまで戻したものの24日夕刻には8.04リラへ下落し、25日午前序盤は7.88リラ近辺での推移となっている。

イスタンブール100株価指数は3月17日から下落していたが、22日は前日比9.79%安の暴落となった。23日は0.13%安となり3月17日から5日続落となったが、24日は暴落一服からの買い戻し及びリラ安による通貨インフレ分のかさ上げで2.64%高と反発した。

トルコ中銀総裁解任による暴落一服で様子見の持ち合い

3月24日に発表された3月のトルコ消費者信頼感指数は86.7となり2月の84.5から改善、市場予想の81.0を上回った。トルコ国内の感染第三波が拡大しているもののエルドアン大統領は経済活動への規制強化はしないとしており、今のところは経済活動再開による景気改善感はあるのだろうが、リラ暴落の発生によりトルコ経済指標の改善がリラ暴落情勢を解消するようなきっかけにはなり難いところだ。

【2018年の通貨危機や昨年11月への史上最安値更新時の下落規模となるか】

トルコリラ暴落に対してトルコ金融当局では翌日物の借入金利を極端な水準へ引き上げてリラ売りの抑止に動いているようだ。22日の暴落後、海外投資家がトルコ株式や債券を売った際のリラを外貨へ買い替える際の貸し出し額を規制し、23日には翌日物借入金利が一時1400%に達していたとの報道もある。
2018年のトルコ通貨危機や2020年5月にかけてのリラ暴落時にも為替取引の規制強化がみられたが、11月にアーバル総裁が就任してからはそうした裏口的な規制強化によるリラ防衛策はとっていなかった。アーバル総裁解任により、再び中銀及び金融当局は各種裏口的な規制強化をせざるを得なくなっているのだろうと推察される。

アーバル総裁解任は3月18日に19%へと政策金利を引き上げたことへのエルドアン大統領の不満が理由と市場は見ており、エルドアン大統領による利下げ要求圧力を踏まえてカブジオール新総裁は利下げに動くのではないかとの観測も強まってきており、市場では13%前後への利下げの可能性も取り沙汰されている。またリラ暴落が継続すれば通貨インフレ圧力が物価上昇率をさらに押し上げて政策金利を物価上昇率が上回る実質マイナス金利状態に転落する可能性も危惧されている。そうしたリスクを踏まえて新総裁も市場に対して迂闊なメッセージは出せないと思われるが、市場の不信任を解消する姿勢を示さなければ金融政策正常化を催促する形でリラ安が続きやすいというのが2018年及び2020年のリラ暴落時の教訓でもある。

トルコリラ円の日足は3月22日の大陰線後、23日と24日は大陰線レンジの下半分での推移となっている。一時的な狼狽売りによる急落で発生する日足大陰線は、翌日以降にその半値を解消する反騰へ入ればふるい落とし的な売り物一巡により上昇再開へ向かうケースもあるが、概ね大陰線の下半分にとどまる状況が数日続く場合は下げ渋りにすぎずにさらに一段安へ向かいやすい状況と思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月22日朝の暴落とその後の反発を踏まえて23日午前時点では22日朝安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避のうちは24日から26日にかけての間への上昇余地ありとしたが、戻りが短命の可能性があると警戒して13.50円割れからは下げ再開注意とした。
3月23日夕刻へ戻り高値を切り上げた後は13.50円割れは買い戻されて揉み合いでの推移となっており、既に22日朝安値から3日を経過しているので、23日夕高値を超える場合は新たな強気サイクル入りとするのを妥当とみて23日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りと仮定する。ボトム形成期は22日朝安値を基準として25日朝から29日午前にかけての間と想定する。23日夕高値超えからは新たな強気サイクル入りとして26日午後から30日夕にかけての間への上昇を想定する。

60分足の一目均衡表では3月22日朝の暴落一服で揉み合いとなっているので遅行スパンは実線との交錯を繰り返しているが、先行スパンからの転落が続いている。23日夕高値を超えないうちは遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、23日夕高値超えからは先行スパン突破も重なるので遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は22日朝の暴落一服での揉み合いのため50ポイント台では上値が重く、40ポイント割れは買い戻される展開となっている。23日夕高値を超えてくれば70ポイントを目指す上昇を想定するが、50ポイントを超えても維持できない展開が続くうちは下向きとし、次の40ポイント割れからは20ポイント台を目指す下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月22日午前安値13.33円を下値支持線、23日夕高値14.13円を上値抵抗線とする。
(2)13.33円以上での推移中は上昇余地ありとし、14.13円超えからは14.25円前後への上昇を想定するが、14.20円以上は反落警戒とみる。
(3)13.33円割れからは13円前後への下落を想定する。13円前後では買い戻しも入りやすいとみるが13.33円を割り込んだ後も13.50円以下での推移なら26日以降も一段安へ進みやすいとみる。

【当面の主な予定】

3月25日 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨公表
 20:30 週次外貨準備高 (3/19時点 526.6億ドル)
3月26日
 16:00 3月 製造業景況感 (2月 109.3、予想 107.0)
 16:00 3月 設備稼働率 (2月 74.9%、予想 75.0%)
3月31日
 16:00 2月 貿易収支 (1月 -30.3億ドル) 
4月 1日
 16:00 3月 イスタンブール製造業PMI(2月 51.7、予想 52.3)

注:ポイント要約は編集部

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