トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁解任による暴落一服だが安値更新への余裕乏しい
〇トルコリラ円、3/22の暴落一服、13.70を挟んでの小動き、レンジ取引続くが、レンジ幅は徐々に縮小
〇トルコリラ対ドルも下げ止まり、徐々にレンジを狭める三角持ち合いに近い形で膠着
〇イスタンブール100株価指数、3/24は持ち直しかけるも3/25は1.3%安と下げ再開の様相
〇前中銀総裁解任による海外及び国内投資家に信任失墜は簡単には回復困難か
〇エルドアン大統領、「あらゆるショックに耐性がある」と強気の姿勢崩さず
〇13.33以上での推移中は上昇余地あり、14.13超えからは14.25前後への上昇を想定する
〇13.33円割れからは、13円前後への下落を想定する
【概況】
トルコリラ円は3月22日の暴落一服での小康状態を続けている。
週末のトルコ中銀総裁解任報道をきっかけとして3月19日終値15.07円から3月22日安値13.33円へ暴落したが、その後は暴落一服で下げ渋り、3月23日夕刻に14.13円まで戻したところから24日夕安値13.43円へ再び下げた後は13.70円を挟んでの小動きとなっている。
3月24日は13.43円から13.83円までのレンジ内で、3月25日は13.58円から13.80円までのレンジで24日からさらにレンジが縮小している。3月22日に大陰線で急落後も大陰線の下半分以下での推移であり、パニック的な売りは一服しているが、前任者のアーバル総裁の金融引き締め姿勢で信任を取り戻していた海外及び国内投資家にとっては突然の解任による信任失墜は簡単には回復しないだろう。
対ドルでのトルコリラはも3月18日の中銀利上げ後に付けた3月20日早朝高値7.18リラから22日午前安値8.17リラへ暴落した後は、3月23日夕刻に7.66リラまで戻したものの24日夕刻には8.04リラへ下落し、3月24日は7.80リラから8.04リラまでのレンジにとどまり、3月25日は7.86リラから7.99リラまでのレンジへと値動き幅がさらに縮小している。
トルコリラ円同様に暴落一服ではあるが、日足大陰線の下半分以下での推移にとどまっており徐々にレンジを狭める三角持ち合いに近い形で膠着しているため、再び8リラ割れへ進むようだと3月22日安値試しへ向かい、さらに安値更新へと進みかねない状況と思われる。
イスタンブール100株価指数は3月22日に前日比9.79%安の暴落となり、3月17日から23日まで5日続落となったところから3月24日は暴落一服で前日比2.64%高と持ち直しかけたが、25日は1.3%安と下げ再開の様相だ。円安になれば日経平均が円安効果でかさ上げされるのと同様にリラ安が通貨インフレ的にトルコ株価指数を押し上げてもよいのだが、それ以上にトルコ金融市場混乱への懸念による手仕舞い売りで下げ基調から抜け出せなくなることも懸念される状況だ。
【エルドアン大統領は強気の姿勢】
トルコのエルドアン大統領は3月24日の与党・公正発展党(AKP)会議の演説で、3月22日のトルコリラ暴落や株安等の金融市場混乱について「トルコ経済の実情を反映していない」「国際投資家はトルコへの信頼を維持すべき」「外貨や金を抱え込んでいる国民は金融商品に投資し経済や生産を支えるべきだ」と述べた。また「財政規律や自由市場経済へのコミットによって我々はあらゆるショックに耐性があることは証明済みだ」と強弁した。
2019年7月に利上げ継続への不満から中銀総裁を解任してウィサル総裁を起用してから中銀は利下げを継続して政策金利が消費者物価上昇率を下回る実質マイナス金利状態に陥った。また娘婿である財務相によるリラ防衛での市場介入で正味の外貨準備が底をつくほどに低下した。
窮地の中で昨年11月に中銀総裁と財務相を解任してアーバル中銀総裁が就任し、三度の利上げとインフレ抑制への引き締め政策がとられてきたが、エルドアン大統領は利下げによるインフレ抑制論者であり、忍耐の限界となってアーバル総裁を解任してしまった。市場は再び中銀が利下げ志向へ向かい、物価上昇を抑えられずに実質マイナス金利状態に陥ると警戒している。為替取引への規制などにより海外投資家のトルコ資産売りや国内投資家の動きも制限されていると思われるが、流れとしてリラからより強いユーロやドル及び金への逃避も続きやすい状況だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月22日朝の暴落とその後の反発を踏まえて23日午前時点では22日朝安値を直近のサイクルボトムとし、底割れ回避のうちは24日から26日にかけての間への上昇余地ありとしたが、3月23日夕刻の戻り高値から揉み合いに入ったため、25日午前時点では23日夕高値を超える場合は新たな強気サイクル入りとするのを妥当とみて23日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は22日朝安値を基準として25日朝から29日午前にかけての間と想定した。その後も膠着状態が続いているので、23日夕高値超えからは新たな強気サイクル入りとするが、23日夕高値を超えないうちは26日の日中から29日午前にかけての一段安余地ありとみる。
60分足の一目均衡表では3月22日朝の暴落一服で揉み合いとなっているので遅行スパンは実線との交錯を繰り返している。先行スパンを上抜いてくれば戻り高値を試しに向かいやすくなるが、一時的に先行スパンを超えても再び転落するようなら膠着状態の継続とし、先行スパンからの転落と遅行スパンの悪化が重なるところからは下げ再開を警戒する。
60分足の相対力指数は22日朝の暴落一服での揉み合いのため50ポイントを挟んだ横ばい程度での推移が続いている。23日夕高値を超えてくれば70ポイントを目指す上昇を想定するが、50ポイントを超えても維持できない展開が続くうちは下向きとし、次の40ポイント割れからは20ポイント台を目指す下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)膠着状態が続いているため、強弱判断目安も前日までと変わらないが、暴落直後のためやや幅の広いレンジでの判断目安として3月22日午前安値13.33円を下値支持線、23日夕高値14.13円を上値抵抗線とする。
(2)13.33円以上での推移中は上昇余地ありとし、14.13円超えからは14.25円前後への上昇を想定するが、14.20円以上は反落警戒とみる。
(3)13.33円割れからは13円前後への下落を想定する。13円前後では買い戻しも入りやすいとみるが13.33円を割り込んだ後も13.50円以下での推移なら週明けも一段安へ進みやすいとみる。
【当面の主な予定】
3月26日
16:00 3月 製造業景況感 (2月 109.3、予想 107.0)
16:00 3月 設備稼働率 (2月 74.9%、予想 75.0%)
3月31日
16:00 2月 貿易収支 (1月 -30.3億ドル)
4月 1日
16:00 3月 イスタンブール製造業PMI(2月 51.7、予想 52.3)
4月5日
16:00 3月 消費者物価上昇率 前年比 (2月 15.61%)
16:00 3月 消費者物価上昇率 前月比 (2月 0.91%)
16:00 3月 生産者物価上昇率 前年比 (2月 27.09%)
16:00 3月 生産者物価上昇率 前月比 (2月 1.22%)
4月15日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合
注:ポイント要約は編集部
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