米長期債利回り低下でも全般ドル高
〇ドル円、24日深夜に108.95まで上昇し上値抵抗線上抜ける
〇24日の米10年債利回りは前日比0.01%低下の1.61%、低下基調が続く
〇パウエル米FRB議長は議会証言で金融緩和策の長期継続姿勢を改めて強調
〇ドル高の主因は欧州の感染第三波によるリスク回避的なドル買い戻しへと変化
〇ドル高基調でユーロドル、ポンドドル、豪ドル米ドルは下落基調
〇新興国通貨も22日に暴落したトルコリラやメキシコペソ、南アランドなどが下落基調継続
〇109円超えからは3/15高値109.36試しを想定、109.25以上は反落注意
〇108.39割れからは下げ再開とみて108円前後を目指す動きを想定
【概況】
ドル円は3月15日高値109.36円と3月17日深夜高値109.32円の両高値をダブルトップとして右肩下がりの展開が続いてきたが、23日夜に108.39円まで下げた後の24日午前安値は108.43円にとどまって安値更新を回避し、24日深夜には108.95円まで上昇して3月18日以降の戻り高値を結んだ上値抵抗線から上抜けた。しかし109円には届かずに25日未明に108.60円台まで小反落するなど勢い付く状況には至っていない。
3月16日安値から18日、19日、23日夕への安値ラインはほぼ一直線だが、この安値ラインとの平行線を18日夕高値から描けばちょうど24日深夜高値とぶつかるため、現状はまだ下降チャンネルの範囲にある。109円を超えてくれば上昇に勢いもついて上記ダブルトップからの下落基調から脱却して109円台後半を目指す可能性も出てくるところだが、精彩を欠いて23日夕安値を割り込むようだと逆に下げ足が早まる可能性も残っているところだ。中勢レベルでは3月9日に109円台へ到達して以降は109円台序盤を上値抵抗帯、108円台前半を下値支持帯としたボックス型持ち合いの範囲であり、1月6日安値からの上昇一服による調整期にあるところだ。
【米10年債利回り低下、株安ドル高】
3月24日の米10年債利回りは前日比0.01%低下の1.61%となり、3月18日に1.75%を付けたところからの低下基調が続いている。24日は米5年債610億ドルの大量入札があったものの応札倍率2.36倍と堅調な入札となり23日の2年債600億ドルの入札も応札倍率2.5倍で良好だったことで債券市場も落ち着きを見せている。しかし昨年3月以降の高水準にとどまっている。
3月24日のNYダウは前日比3.09ドル安、ナスダック総合指数は265.81ポイント安と下落した。この日は米経済指標もさえない内容だったが、やはり欧州の感染拡大第三波への影響を意識した動きと思われる。
パウエル米FRB議長は23日に続いて議会証言を行ったが、前日同様に「インフレ率の上昇は一時的」として「金融緩和策の長期継続姿勢」を改めて強調した。
IHSマークイットが発表した3月の米製造業PMI速報値は59.0で2月の58.6から上昇したが市場予想の59.3を下回った。サービス業PMI速報値は60.0で2月の59.8から上昇したが市場予想と同じだった。
米商務省が発表した2月の耐久財受注は前月比1.1%減で10か月振りのマイナスとなり市場予想の0.8%増を下回った。設備投資の先行指標である航空機を除く非国防資本財受注は前月比0.8%減で市場予想の0.5%増を下回った。
【テーマを変えてドル高続く】
3月18日未明の米FOMC後に米長期債利回りがいったん低下したところでドル全面安となったが、この上昇は短命に終わって米長期債利回りの再上昇により早々にドル高基調を再開した。3月19日夜以降は米長期債利回りが低下傾向に転じて急上昇騒動は落ち着いたが、それでもドル高基調は変わらない。ドル高の主因が米長期債利回り上昇問題から欧州の感染第三波によるリスク回避的なドル買い戻しへと様変わりしたためだが、ユーロドルは3月23日に19日深夜安値を割り込んで一段安に入り25日早朝にかけても安値更新が続いている。ポンドドルも24日夕へ安値を更新、その後も新たな安値更新への余裕が乏しくなっている。豪ドル米ドルも25日早朝に18日以降の安値を更新しており、新興国通貨においても3月22日に暴落したトルコリラの他にメキシコペソ、南アランドなどが18日以降の下落基調を継続している。
メジャー通貨の加重平均であるドル指数は1月6日安値で89.21ポイントの安値を付けたところからの上昇基調を継続しており、2月25日への反落を押し目として3月9日へ一段高となり、24日には3月9日高値を上抜いて上昇基調を維持している。1月6日からはドル円の上昇=円安が始まり、ユーロドルの下落も始まった。2月24日からポンドドルの下落が開始し、2月25日から豪ドル米ドルの下落も始まり、いずれも下落基調を続けている。
ユーロドルの1月6日からの下落規模は2018年2月16日天井からの下落時に近く、ユーロドルと逆相関のドル指数の上昇も2018年2月16日底からの上昇期入りに近い動きを見せている。中期的なドル高感が強まりやすい状況の中で、ドル高への主力エンジンを切り替えながらもドル高基調を継続しやすい時期にあるということなのだろう。こうした全般状況を踏まえるとドル円も現状はまだ軟調推移ではあるが、中期的には1月6日からの上昇基調を継続している中での調整として調整期から抜け出してゆく可能性があると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月24日深夜への上昇で3月18日以降の戻り高値を結んだ抵抗線を上抜いたため、23日夕安値で直近のサイクルボトムを付けて上昇期に入った印象だ。高値形成期は24日夜から26日夜にかけての間と想定されるのでまだ上昇余地ありとするが、23日夕安値割れからは新たな下落期入りとして26日から30日夕にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では24日夜の上昇で遅行スパンが好転、先行スパンも上抜いた。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、先行スパン転落からは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は50ポイント台序盤を抵抗とした横ばい推移が続いてきたが24日夜への上昇時に60ポイントを超え、その後も50ポイント以上を維持しているので70ポイント到達を目指す可能性があるとみるが、50ポイント割れから続落の場合は下げ再開を疑い30ポイント前後試しへ向かうとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、3月23日夕安値108.39円を下値支持線、109円を上値抵抗線とする。
(2)108.50円以上での推移中は上昇余地ありとし、109円超えからは3月15日高値109.36円試しを想定。109.25円以上は反落注意とするが、108.75円以上での推移なら26日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)108.39円割れからは下げ再開とみて108円前後を目指す動きを想定。108円以下は反騰注意とするが、108.39円を割り込んだ後も108.65円以下での推移なら26日も安値試しへ向かいやすい見立てとなる。
【当面の主な予定】
3/25(木)
バイデン米大統領、就任後初の正式記者会見、EU首脳会議(3月26日まで)
未 定 (南) 南ア準備銀行 政策金利 現行 3.50%、予想 3.50%)
16:00 (独) 4月 GFK消費者信頼感 (3月 -12.9、予想 -12.1)
17:30 (ス) スイス国立銀行 3か月物銀行間金利誘導目標中心値 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
18:00 (欧) 2月 マネーサプライM3 前年同月比 (1月 12.5%、予想 12.5%)
18:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、BIS講演
18:30 (英) ベイリー英中銀総裁、講演
21:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 77.0万件、予想 73.8万件)
21:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 412.4万人、予想 403.0万人)
21:30 (米) 10-12月期 GDP確定値 前期比年率 (改定値 4.1%、予想 4.1%)
21:30 (米) 10-12月期 GDP個人消費確定値 前期比年率 (改定値 2.4%、予想 2.4%)
21:30 (米) 10-12月期 コアPCE確定値 前期比年率 (改定値 1.4%、予想 1.4%)
23:30 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、オンライン討論会参加
25:00 (米) ボスティック・アトランタ連銀総裁、講演
26:00 (米) 米財務省7年債入札
26:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、講演
26:00 (欧) デギンドスECB副総裁、講演
28:00 (メ) メキシコ中銀 政策金利 (現行 4.00%)
28:45 (米) クラリダFRB副議長、講演
3/26(金)
08:00 デーリー・サンフランシスコ連銀総裁、講演
08:30 (日) 3月 東京区部消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (2月 -0.3%、予想 -0.2%)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前月比 (1月 -8.2%、予想 2.1%)
16:00 (英) 2月 小売売上高 前年同月比 (1月 -5.9%、予想 -3.5%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前月比 (1月 -8.8%、予想 1.7%)
16:00 (英) 2月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (1月 -3.8%、予想 -1.7%)
18:00 (独) 3月 IFO景況感指数 (2月 92.4、予想 93.2)
21:30 (米) 2月 個人所得 前月比 (1月 10.0%、予想 -7.0%)
21:30 (米) 2月 個人消費支出・PCE 前月比 (1月 2.4%、予想 -0.7%)
21:30 (米) 2月 PCEデフレーター 前年同月比 (1月 1.5%、予想 1.7%)
21:30 (米) 2月 PCEコア・デフレーター 前月比 (1月 0.3%、予想 0.1%)
21:30 (米) 2月 PCEコア・デフレーター 前年同月比 (1月 1.5%、予想 1.5%)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報値 (速報 83.0、予想 83.6)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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