ドル円 109円台前半から後半が重要な長期の節目(週報3月第3週)

先週のドル円は週初からドル買いが強まり火曜の東京市場では一気に109.23レベルまで水準を切り上げ昨年6月以来のドル高・円安を見ることとなりました。

ドル円 109円台前半から後半が重要な長期の節目(週報3月第3週)

109円台前半から後半が重要な長期の節目

〇先週のドル円、109.23レベルまで水準を切り上げ昨年6月以来のドル高・円安に
〇米10年債利回りは1.62%台まで上昇し、昨年2月以来の水準
〇今週は主要国の金融政策イベントが集中、注目はFOMCと日銀会合
〇日銀会合の結果と黒田総裁の会見で金曜後場は荒っぽい展開となる可能性
〇長期ドル安トレンド継続かドル高トレンドへ転換か109円台半ばが正念場の水準
〇今週は108.50レベルをサポートに、109.70レベルをレジスタンスとする流れ

今週の週間見通し

先週のドル円は週初からドル買いが強まり火曜の東京市場では一気に109.23レベルまで水準を切り上げ昨年6月以来のドル高・円安を見ることとなりました。先週からのドル高トレンドを続ける中で金曜高値を上抜けたテクニカルな要因もありますが、米金利は月曜欧州市場以降に既に下げていたにもかかわらず、ドル円が追随したのは火曜に高値をつけてからですから、約1日遅れての反応となりました。

その後米金利は11日木曜の欧州市場まで下げ続け週初月曜の水準から0.14%ほど下げていましたが、米国の追加経済対策への署名が行われることもあり、財政赤字拡大による債券売りという面が米金利の上昇圧力となりました。それ以降は週末まで景気回復期待によるインフレ思惑という面が米金利上昇の材料とされました。10年債利回りは1.62%台まで上昇し、昨年2月以来の水準となり、その動きに沿ってドル円も109円台を回復する動きとなりました。

相変わらず米金利の上下がドル円の動きに与える影響が大きいようです。今週は主要国の金融政策イベントが集中しますが、注目はFOMCと日銀会合です。FOMCではこれまで同様に長期金利上昇は自然な動きであり、FRBのインフレ目標実現には望ましいといった発言を繰り返すでしょうし、ここでのサプライズは無いでしょう。

いっぽうで日銀は、長期金利が上昇する動きに対して黒田日銀総裁は変動幅拡大は考えていないとしながらも、他の会合メンバーからは変動幅拡大を容認しても良いとする意見がありそうな会合です。結論は多数決なのでおそらくは黒田総裁発言は現状の会合メンバーの多数派であると考えることができますが、そうだとすると長期金利低下のためのイールドカーブコントロールを強化し、国債購入規模を増額するという流れになりそうです。

これは先週のECB理事会でも緊急購入プログラムを増額するという発表後に金利低下の動きが見られましたが、同様の反応が見られるとするとFOMCでは米金利上昇容認、日銀会合では円金利上昇抑止と日米の金利差は拡大する方向となり、為替市場ではドル高・円安で反応する可能性が高いと言えます。しかし、もし金利上昇は容認しないものの実際にはしばらく経過を見ていくといったような実質的な容認姿勢となると、円買いの動きにつながるでしょうから、どちらにしても日銀会合の結果と黒田総裁の会見で金曜後場は荒っぽい展開となる可能性があります。

それ以外は材料視されないでしょうが、もうひとつの大きなテーマは長期テクニカルです。3月10日にドル円の月足のコラムを載せましたが、現在2015年高値からのレジスタンスラインと2017年高値からのレジスタンスラインが、それぞれ109円台前半と109円台後半に位置しています。ざっくりと109円台半ば前後はドル円が引き続き長期ドル安トレンドを継続するのか、あるいはドル高トレンドへと転換するのか、正念場の水準です。

重要なことなので再度月足チャートを載せておきます。

109円台前半から後半が重要な長期の節目

早ければ今週19日の日銀会合がきっかけとなるでしょうし、遅くとも期末の動きで決まってきそうです。ただ月足と長期の水準で考えていますので、それなりの誤差を考える必要もあり、110円の大台に明確に乗せるか乗せないかが判断基準とされるのではないでしょうか。

日足チャートもご覧ください。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

現在は先ほどの月足チャートにおける109円台前半のレジスタンスライン(ピンク)で上値を抑えられていますが、日足では先週高値まであとわずかですから、このレジスタンスで止められると考えることは無理がありそうです。そしてもう一つのレジスタンスラインは、ほぼ昨年6月高値109.84と重なりますので、現在はこの109円台後半の水準が強いレジスタンスと見てよいでしょう。

金曜の日銀会合までは動きにくいでしょうし、それまでに調整が入って既に下げている可能性もありますが、下値は先週の108.35レベルが強いサポートとなります。それぞれの水準を考慮して上下の値幅を考えると、今週は108.50レベルをサポートに、109.70レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2021年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

3月15日(月)
**:** 米国夏時間開始
08:15 豪中銀総裁講演
09:01 英国3月住宅価格
11:00 中国2月鉱工業生産、小売売上高
21:30 米国3月NY連銀製造業景況指数
**:** ユーロ圏財務相会合

3月16日(火)
**:** 黒田日銀総裁挨拶
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表
09:30 豪州10〜12月期住宅価格
16:45 フランス2月CPI
17:00 南ア1〜3月期消費者信頼感
19:00 ドイツ3月ZEW景況感
21:30 米国2月小売売上高
22:15 米国2月鉱工業生産、設備稼働率
23:00 米国3月NAHB住宅市場指数
23:00 米国1月企業在庫
**:** EU財務相会合
**:** FOMC(〜17日)

3月17日(水)
06:45 NZ10〜12月期経常収支
08:50 本邦2月貿易収支(通関)
19:00 ユーロ圏2月CPI
19:00 ユーロ圏1月建設支出
20:00 南ア1月小売売上高
21:30 米国2月住宅着工・建築許可件数
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC結果発表
27:30 パウエルFRB議長会見
**:** 英中銀MPC(〜18日)

3月18日(木)
06:45 NZ10〜12月期GDP
**:** 日銀会合(〜19日)
09:30 豪州2月失業率
19:00 ユーロ圏1月貿易収支
20:00 トルコ中銀政策金利発表
21:00 英中銀MPC結果発表
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:00 デギンドスECB副総裁講演
23:00 米国2月景気先行指数
27:00 シュナーベルECB理事講演

3月19日(金)
08:30 本邦2月CPI
09:01 英国3月消費者信頼感
09:30 豪州2月小売売上高
**:** 日銀会合結果発表
15:30 黒田日銀総裁会見
16:00 ドイツ2月PPI

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

3月8日(月)
週明けのドル円は東京市場から底堅い動きとなっていましたが、欧州市場昼過ぎに金曜高値を上抜けると改めて買いが強まることとなりました。米金利は高止まりで更なる上昇は見られませんでしたが、NY市場では108.94レベルまで高値を切り上げ高値圏での引けとなりました。

3月9日(火)
ドル円は早朝からドル買いが先行し、東京前場には109.23レベルの高値をつけました。しかしドル円と相関が高い米金利は既に下げ始めていてドル円も米金利相場に追随する流れとなりました。欧州市場序盤に108.56レベルまで下げたあとはNY市場で108.97レベルまで買い戻しも見られたものの、109円台が目先の高値となったことから利食い売りに押され108.42レベルへと押して安値圏での引けとなりました。

3月10日(水)
東京市場のドル円は前日の下げに対する調整と値頃感によるドル買いの動きに実需買いも加わり後場には108.92レベルの戻り高値をつけました。しかし109円台に戻せなかったこともあり、日計りの利食い売りと改めてドル売りから入る参加者も出てくる中、NY市場では来週の日銀会合で長期金利に対する点検の話が金利上昇容認と取られ108.34レベルまで円買いの動きに。その後買い戻しも見られたものの引けにかけてはじり安となり安値圏に押して引けました。

3月11日(木)
ドル円は東京市場では前日と似た動きを見せ下げに対する調整と値頃感によるドル買いの動きから後場には108.81レベルの高値をつけました。しかし欧州市場序盤以降米金利が急速に低下すると朝方の水準へと下押し。その後金利上昇とともに買い戻しが見られましたが、高値は着実に切り下げ、また安値も108.35では買いが出るという前日からの動きが続き、徐々に値動きを狭めての引けとなりました。

3月12日(金)
ドル円は東京早朝から欧州市場前場まで一本調子でドル買いの動きが続きました。主要因は前日海外市場から上昇していた米金利が一段高となったことですが、日経平均株価の上昇、テクニカルにそれまで高値を切り下げていたレジスタンスラインを上抜けた動きもありました。109.17レベルの高値を付けたあとの海外市場ではユーロドルでユーロ買い・ドル売りに転じたこともあって高値圏でもみあいのまま引けました。

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