3月18日のトルコ中銀の金融政策決定会合から大きく動く展開か
〇トルコリラ円、12日は安値で14.28まで下げた後14.40で終了
〇対ドルでは12日反落の陰線で終わり、安値で7.61まで下げる
〇米10年債利回りが昨年8月以降の最高水準を更新、為替市場全般のドル高感強まる
〇製造業、鉱工業生産の統計は概ね回復して良好だが前月比での伸びは鈍化傾向
〇小売売上高は12月が下方修正、1月も前月比0.3%増で伸び悩み
〇トルコのコロナ感染者数は3/13に1万5082人へ増加、第三波に入り始めた印象
〇3/18のトルコ中銀会合、18%への追加利上げの可能性が浮上
〇利上げ決定で高値更新へ進む場合は15円を目指す上昇期に入るとみる
〇利上げ見送りなどで失望売りの場合は3/8深夜安値13.97試しへ向かう流れ
【概況】
トルコリラ円は2月16日と2月18日に15.26円の高値を付けたところをダブルトップとして下落に転じて3月8日には13.97円まで大幅下落してきたが、3月9日から11日にかけて日足は3日連続陽線で反騰して3月11日夕刻に14.61円まで高値を切り上げた。しかし連続陽線の3日目となった11日は上ヒゲの目立つ小陽線にとどまったために3日連続陽線でも「三兵先詰まり」の様相となった。12日は安値で14.28円まで下げてから14.40円で終了したが下ヒゲを付けた陰線で終わった。
一方、対ドルでのトルコリラは3月9日から3日連続の日足陽線で上昇して3月11日夕刻に7.42リラまで高値を伸ばしたが、12日は反落の陰線で終わり、安値では7.61リラまで下げた。
3月8日にかけては米長期債利回り上昇を背景として為替市場がリスク回避的なドルの買い戻しへ動き、新興国通貨が総じて下落する中でトルコリラも売られてきた。2月22日から2月26日へ5日連続陰線で下落し、3月1日に小反発を入れたものの3月2日から8日までは5日連続の陰線で下落してきた。米長期債利回り急上昇の一服で3日間の戻りを入れたものの3月12日には米10年債利回りが昨年8月以降の最高水準を更新する上昇となり、再び為替市場全般のドル高感が強まる展開となった。
トルコリラ円はドル円の上昇基調継続に支えられているものの、米長期債利回り上昇によるドル高・新興国通貨安の動きが強まると足を引っ張られやすい状況にあり、3月8日深夜以降はひとまず下げ渋っているものの、戻りが続かなくなると2月16日と2月18日のダブルトップからの下落基調がさらに進みやすくなりかねないところと注意したい。
【トルコの小売売上高、12月分が大幅下方修正】
3月12日に発表されたトルコの1月鉱工業生産は前月比1.0%増となり12月の1.2%増から伸びが低下した。前年同月比は11.4%増となり12月の9.2%増(速報の9.0%増から上方修正)から伸びが加速して市場予想の8.5%増を上回った。
1月の小売売上高は前月比0.3%増となり12月の7.0%減(速報の4.2%減から大幅下方修正)から改善したが市場予想の3.4%増を大幅に下回った。前年同月比は2.0%増で12月の1.6%増(速報の0.6%増からは上方修正)を上回ったが市場予想の2.3%増を下回った。
発表後にトルコリラは対ドルで直前高値7.46リラから下落して20時台には7.61リラの安値をつけたが、深夜以降のドル高一服によりやや持ち直した。トルコリラ円も直前高値14.52円から21時台安値14.28円まで下落したが、その後は下げ渋った。
トルコの製造業、鉱工業生産の統計は概ね回復して良好な数字が続いており、昨年7月以降は前年比10%前後の水準でのプラスを維持しているが、前月比での伸びは鈍化傾向にある。小売売上高は10月に12.8%増、11月も12.2%増だったが12月が予想外に下方修正されて1月も伸び悩みとなった。トルコ政府はコロナ不況対策として実施してきた企業のレイオフ禁止令について3月9日に3月17日までの期限から2か月延長すると発表したが、足元の景気回復感がまだかなり弱い状況を反映した措置であり、小売の伸びの鈍化にも表れているのかもしれない。
【トルコの感染拡大第三波】
トルコの新型コロナウイルス新規感染者数は第二波のピークが12月8日の3万3198人であり、1月25日には5642人まで減った。しかしその後は漸増傾向にあり、3月13日には1万5082人へと増加が続いている。いわゆる第三波に入り始めた印象であり、今後の経済活動への影響も警戒される。アクティブな患者数は昨年12月に22万人台まで急増後に1月2日には8万4308人まで減ったが、2月に入ってから増加に転じて3月13日には15万人を超えている。
3月13日時点で、トルコの累計感染者数は286万人でスペインに続き世界9位、死者累計は2万9421人となっている。
日本においても東京の減少傾向にブレーキがかかっているが、欧州でもイタリアでは第三波となる顕著な増加、フランスも2万人前後の増加ペースが続いている。ブラジルはインドを超えて世界2位の感染大国となっているが、3月10日には新規感染者数が8万人を超えてこれまでのピークであった1月7日の8万7134人に迫り、3月10日には過去最大の1日の死者数2349人を記録している。ワクチン普及や季節要因などで世界規模で感染者数の伸びが大きく鈍化したものの油断できない状況は続いており、トルコも懸念される状況と注意したい。
【3月18日、トルコ中銀は利上げするか?】
3月18日にトルコ中銀の金融政策決定会合がある。
11月の中銀総裁更迭から新総裁に就任したアーバル総裁は就任直後の11月会合で政策金利(週間レポレート)を当時の10.25%から15%へ引き上げ、12月会合でも17%へ2会合連続での大幅引き上げを実施した。消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態から脱却し、その後にトルコ消費者物価の上昇基調が続いている中で政策金利を現状維持としてきたが、必要に応じて追加利上げを行う用意があるとしてインフレ抑制と引き締め姿勢を強調してきた。
3月18日の中銀会合では、先週までは現状の17%で据え置くのではないかとの予想が大半だったようだが、3月15日朝時点では18%への追加利上げの可能性が浮上している。
そうした中、3月12日にトルコ10年債利回りが14.17%へ上昇した。11日時点では13.45%近辺の水準だったところからの急伸であり、1月中旬以来の水準となっているが、トルコ中銀による利上げの可能性を反映した動きと思われる。
今週は3月16-17日に米FOMC、3月17-18日に英MPC(金融政策決定会合)、3月18-19日に日銀金融政策決定会合と続く。米長期債利回りの上昇がドル高を助長し、新興国通貨安を招いてきたが、米連銀は景気回復を反映した動きとして現状の長期債利回り上昇を容認する姿勢を示しており、他の主要中銀は資金調達コスト増で景気回復の足が引っ張られるとして自国長期債利回りが米長期債利回りに連動して上昇することを抑制する姿勢を示している。トルコにとっても昨年の利上げによって通貨暴落から立ち直ってきた状況を維持するためには米長期債利回り上昇によるドル高・新興国通貨安の流れに抗する必要がある。
【当面のポイント】
当面、米連銀FOMCや英日の金融政策決定会合等を見ながら、特に18日のトルコ中銀金融政策決定会合で利上げに踏み切るのかどうかを見定めながら反応してゆく展開というところだが、2月16日と2月18日のダブルトップからの下落が3月8日深夜安値13.97円を割り込んで一段安へ向かうのか、持ち直しを継続してダブルトップに迫るのかにより、11月6日からの中勢レベルの上昇基調を維持できるのか、上昇一巡による下落期入りとなるのか、春から夏にかけての相場展開を決める重要局面に来ていると思われる。
(1)中勢としては、3月8日深夜安値13.97円割れからは2月のダブルトップからの二段下げとして13円台前半を目指す下落期入りとなる可能性が高まり、3月8日深夜安値割れ回避のうちは戻り高値を切り上げてダブルトップに迫る可能性があるとみる。
(2)短期的には、3月11日夕高値14.61円前後はトルコ中銀の政策金利発表前段階では戻り売りにつかまりやすい水準とみるが、仮に利上げ決定で高値更新へ進む場合は15円を目指す上昇期に入るとみる。
(3)14.20円前後は短期的には押し目買いされやすいとみるが、トルコ中銀の利上げ見送りなどで失望売りされる場合は3月8日深夜安値13.97円試しへ向かう流れとみる。
【当面の主な予定】
3月15日
17:00 2月 財政収支 (1月 -241.5億リラ、予想 160.0億リラ)
3月18日
19:30 2月 自動車生産台数 前年比 (1月 -3.3%、予想 4.5%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 週間レポレート (現行 17.0%、予想 18.0%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 翌日物貸出金利 (現行 18.5%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 翌日物借入金利 (現行 15.5%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 後期流動性貸出金利 (現行 21.5%)
20:30 週次 外貨準備高 グロス 3/12時点(532.5億ドル)
20:30 週次 外貨準備高 ネット 3/12時点(115.7億ドル)
3月22日
17:00 2月 観光客数 前年比 (1月 -71.48%)
3月24日
16:00 3月 消費者信頼感指数 (2月 84.5)
3月25日 トルコ中銀金融政策決定会合議事要旨公表
20:30 週次外貨準備高
3月26日
16:00 3月 製造業景況感 (2月 109.3、予想 107.0)7
16:00 3月 設備稼働率 (2月 74.9%、予想 75.0%)
注:ポイント要約は編集部
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3/18のトルコ中銀・金融政策決定会合では、現時点で追加利上げ派と据え置き派で市場の見方が割れている為、発表直後のボラティリティ上昇に注意が必要でしょう
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