今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは週初からイタリア予算案が修正されるのか否かの懸念が、大きくじり安の展開を辿り水曜には1.1267レベルの安値をつけたものの、パウエルFRB議長の講演で「政策金利は中立金利をわずかに下回る」、「政策金利に既定路線は無い」との2つの発言から来年以降の利上げ思惑が急速にしぼみ対ユーロでのドル売りが目立つ結果となりました。その後、週末に向けては米中首脳会談期待によるドル買いでユーロが下げる動きとなり、方向感のはっきりしない月末を迎えたという印象です。
まず、欧州の材料ですが、相変わらずのイタリア予算案は当初のEUの財政規律を超えた2.4%からは見直す方向ではあるものの、EU側は2.0%を守れ、イタリア側は2.2%程度で決着したいと依然として両社の溝は深そうな印象です。すでにEU側はイタリアに対する制裁を前提にイタリアに対して見直しを迫っていますが、G20から戻ったイタリアの経済相は制裁回避の時間はまだあると発言していますので、今週当たりに何か動きが出てくる可能性は高そうです。しかし今まで通り規律を守るという結果を見るまではユーロにとって悪材料です。
そして、週末にはドイツの与党であるCDUの党首選が行われます。最近の地方議会選挙でCDU・CSUが大敗している責任を取って、メルケル首相は党首選には出ないと述べています。誰がなったとしても長期政権後の新顔という印象は拭い去れませんし、党首でないメルケル首相という地位が果たして安定して続くのかどうかも未知数です。これもユーロにとっては悪材料と考えてよいでしょう。
さらに来週になりますが、11日に英国議会で英国政府とEUとの間で合意したブレグジット案に対する採決が行われます。現状では、通らない可能性もかなり高く、EU側はその場合にはハードブレグジット(合意無き離脱)か離脱せずに残るか、2択しかないと述べています。さすがに残るという選択肢は改めて国民投票を実施しない限りありえないでしょうから、そうなるとハードブレグジットが唯一の選択肢です。これもハードブレグジットの可能性がある以上、ユーロにとっては悪材料です。
材料的にはユーロにとって好材料を探すことが難しいため、基本的な流れはこれまで同様にユーロの上値が抑えられやすい展開と考えざるを得ません。
そうした前提でチャートも見てみましょう。
日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
9月高値1.1815を起点とした下降トレンドは現在も継続中で、9月安値から引いたラインとともに下降チャンネルの中での動きと見ることもできます。先週の戻り高値をレジスタンスラインで止められたことから、このチャンネルの中で先週安値をいつトライしてもおかしくないユーロの悪材料に囲まれている状況と見て良さそうです。
来週に向け、引き続き好材料が出ない限りは戻り売り、今週は1.1250レベルをサポートに1.1400レベルをレジスタンスと上値の重たい展開を見ておきます。
今週のコラム
先週はポンドドルの週足を見ましたが、今週はポンドドルの日足チャートを見てみましょう。
というのも、大きな話題となっていた武田によるシャイアー買収の賛否を問う株主総会が今週5日に開かれるためです。シャイアーはロンドン証券取引所に上場している企業ということもあり、今回の買収にあたってポンド買いが出るのではとの思惑があります。
こうした買収においては、社債発行、足りない分は借り入れというのが一般的ですが、相手が海外の企業の場合、その国の通貨が買われる可能性があることも事実です。おそらく株主総会では賛成多数で買収が決定されるとは思いますが、実際には噂のような巨額の為替が発生するようなことは無いはずです。ただ、そうは言っても思惑で動くことはよくありますし、金曜もユーロポンドでのポンド買いが出ていますし、ポンドの悪材料の割には底堅い印象です。
現在のポンド円は8月安値からのサポートに乗っていて、レジスタンス側は149円台半ばで何度も上値を抑えられている水準を考えることが出来ます。短期定期には11月後半のフラッグ状のパターンを考えることもできます。実際にはまだ先の話ですが、思惑的にあるいは勝手に勘違いを含めてポンド円での買いが今後出てくる可能性があるかもしれません。
ただ、長期的には先週も書いた通りで、ポンドは下落リスクの方がはるかに大きいという見方には変化ありません。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
12月3日(月)
17:50 フランス11月製造業PMI改定値
17:55 ドイツ11月製造業PMI改定値
18:00 ユーロ圏11月製造業PMI改定値
18:30 英国11月製造業PMI
**:** ユーロ圏財務相会合(〜4日)
12月4日(火)
18:15 英中銀総裁議会証言
18:30 英国11月建設業PMI
19:00 ユーロ圏10月PPI
12月5日(水)
17:50 フランス11月サービス業PMI改定値
17:55 ドイツ11月サービス業PMI改定値
18:00 ユーロ圏11月サービス業PMI改定値
18:30 英国11月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏10月小売売上高
24:15 パウエルFRB議長議会証言
28:00 ベージュブック
12月6日(木)
16:00 ドイツ10月製造業新規受注
16:30 クーレECB理事講演
12月7日(金)
16:00 ドイツ10月鉱工業生産
16:45 フランス10月貿易収支、鉱工業生産
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP確報値
22:30 米国11月雇用統計
**:** ドイツCDU党首選
前週のユーロレンジ
上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
前週のユーロ
11月26日(月)
ユーロドルは東京市場では株高によるリスクオンからユーロ円の買いがユーロドルもじり高の動きとさせていました。欧州市場に入りイタリア政府が予算案の見直しを検討とのニュースにユーロ買いが強まったものの、実際には出てみないとわからないというこれまで同様の懸念も残り買いが収まると、ドラギ総裁のハト派発言もあって結局は東京朝方の水準へと行って来いの動きとなりました。
11月27日(火)
基本的にドル高の動きとなり、ユーロドルは東京市場から戻しを挟みながらも安値を切り下げていく展開が続きました。イタリア予算案の不透明感が引き続き重石となっていてNY市場では1.1277レベルの安値をつけ若干戻しての引けとなりました。
11月28日(水)
ユーロドルは東京市場では動意薄の展開が続いていましたが、相変わらずイタリア予算案の懸念などを材料に、欧州市場序盤には1.1267レベルの安値をつけていました。しかしパウエル議長の「政策金利は中立金利をわずかに下回る」発言をきっかけとしたドル売りの動きにユーロドルは1.1388レベルまで急反発し、若干押して引けました。
11月29日(木)
ユーロドルは、1.13台後半で上下する神経質な展開を続けました。英国議会でブレグジット案が通らない思惑でポンド売りが先行し、ユーロも追随しての売りが出ましたが、その後はドル円同様にNY市場に入ってから週末の米中首脳会談に向けての期待からドルが買い戻され、引けにかけては細かく上下するも方向感が出ないままに終わりました。
11月30日(金)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場に入ると週半ばに買った向きの月末を控えてのポジション調整と思われる売りが散見されました。その後も上値の重たい流れが続く中、ロンドンフィックスで月末実需のユーロ売りが出たことで、G20を控えて参加者が少ない中をずるずると水準を下げ、1.1306レベルまで下げた安値圏で引けました。
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