今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは1.22台半ばと1.23台半ばでの振幅を繰り返し、週末は1.23台半ばと高値圏での引けとなったもののレンジは週を通して150ポイントにも満たず、往復の距離を稼いだのみで全く方向感の出ない一週間となりました。
材料的にはブレグジット協議の前進からポンドが強含みとなる中でユーロも連れ高となる動きと、ユーロ円をはじめクロス円でのリスクオフの円買いからユーロが売られる動きとに挟まれ、ユーロ独自の材料がはっきりとしない中で大きくは横方向への動きになったと考えられます。
ただ週末になかなか決まらなかったイタリアの両院議長が決まったことで、今後の連立協議の方向性が見えてきた一方で、昨年の欧州選挙では現実路線となってきた流れにイタリアだけは水を差す連立のゴールを迎える可能性が出てきました。イタリアも二院制を取っていますが、週末の議長選強で上院は中道右派連合のフォルツアから下院は最大得票となった5つ星運動がそれぞれ議長を出し選ばれました。
今一度イタリアの議会派閥をまとめておくと、第1党が単独政党の5つ星、第2グループが中道右派連合(政党として第2党となっている同盟を含む)、第3グループが中道左派連合(現与党の民主党を含む)となっていて、誰も過半数とならない状態です。その後、連立協議に向け各党が多少の妥協を示したことで、この週末の両院議長選出につながりましたが、議長の出身政党を見ると5つ星+中道右派による連立となりそうですが、中道右派の中には極右政党と見られる同盟も含まれていて、反EUという点では5つ星と同じです。
今回の選挙では中道右派を構成する政党のうち、極右の同盟が元ベルルスコーニ首相率いるフォルツアを議席数で上回ったことから、ベルルスコーニ元首相率いるではなく極右の同盟が率いる中道右派という立ち位置に変化しました。まだ両院議長が決まったばかりで今後の連立協議には時間がかかるものと思われますが、リスクシナリオは反EUが政策として実行に移されることです。
EUの中でもイタリアは第4位で、第2位の英国は来年に離脱することが決まっています。英国と違って通貨も共通のユーロを使っていますので、離脱にまではならないまでもEU中心国のひとつが足並みを揃えない動きになってくるとユーロにとっても良い状況とはなりえません。中道右派連合内、特に上院議長を取ったフォルツアあたりが急進的な動きにならないよう出来るかどうかが焦点となりそうです。
他にもユーロにとっての悪材料となりそうなのが、ユーロ円の下げです。先週は米国が仕掛けた貿易戦争からリスクオフの動きとなり、ユーロ円はユーロドルの方向感が見えない中、ドル円でのリスクオフの円買いがユーロ円の売りに繋がり火曜高値の131.71から金曜にはドル円の105円割れとともに129.17まで水準を切り下げました。
ドル円の上値が重たい地合いが継続しやすい中、今週は欧州主要市場がグッドフライデー〜イースターマンデーとクリスマスに並んで参加者が少ない時期であり、更には月末も重なっています。月末の実需の動きがどちらに出るかはわからない面もあるものの、円に関して言うならば円買いに動きやすく、マーケットが薄くなる中でユーロ円の売りがユーロドルに波及する可能性も考えておく必要はあるでしょう。ただ、先週のユーロ円の長期シナリオで書いた通り「128円台半ばあたりが今回の2月からの下げのターゲットになる」という見方には変化が無いため、ユーロドルの方向感が出るには至らないというのが現在のユーロドルです。
テクニカルな観点から日足チャートを見てみましょう。
*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
先週も示した三角もちあいの中で、週初の水準はこうど上のレジスタンスに接している水準です。もちろん上抜けという可能性も否定できませんので抜けた方向についていくことが正解ですが、どちらかというとユーロ売りの材料が多いことから多少抜けたとしても上方向は短期的には限定的な抜けに留まる可能性が高く、先週の三角もちあいを抜ける準備段階というには補強材料が見当たらず3月高値1.2446を明確に抜けて来るまでは、もみあいを継続すると見ていたほうが良いと思います。ということで今週も引き続きもみあい、1.2250レベルをサポートに、1.2400レベルをレジスタンスとします。
今週のコラム
米国が震源地となっている株安の動きは日経平均だけでなく当然のように世界の株価指数にも波及しドイツ株価指数のDAXもそのあおりを受けています。それどころかダウは発射台が高かっただけにいまだ高水準にあると言えますし、日経平均は昨年後半の上昇前の水準です。いっぽうDAXを既に昨年後半の上昇前の水準を下回り、一番弱い流れとなっています。
今回は週足ベースでDAXのチャートを見てみることとします。
DAX週足
ここ数年間で考えると安値は2016年安値の8699.29、高値は今年1月の13596.89です。現状はこの間の38.2%押しにあたる11726.01をターゲットとする動きとなっていますがそのすぐ下には昨年安値もあり、状況次第では半値押しの11148.09も視野に入れておいた方がよさそうなチャートです。イタリアの状況次第ではDAXにも影響が出やすいため、なかなか微妙な水準に下げてきたと考えられます。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
3月26日(月)
15:45 フランス10〜12月期GDP確報値
18:30 ドイツ連銀総裁講演
3月27日(火)
18:00 ユーロ圏3月消費者信頼感確報値
3月28日(水)
15:00 ドイツ4月GFK消費者信頼感
15:45 フランス3月消費者信頼感指数
3月29日(木)
08:01 英国3月消費者信頼感
16:55 ドイツ3月失業率
17:30 英国10〜12月期GDP確報値
21:00 ドイツ3月CPI速報値
3月30日(金)
**:** グッドフライデー(東京を除く主要市場は休場)
前週のユーロレンジ
始値 高値 安値 終値
ユーロドル 1.2281 1.2388 1.2240 1.2353
ユーロ円 130.13 131.71 129.17 129.38
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
前週のユーロ
3月19日(月)
ドル円の円買いの動きがドル売りとなったユーロ買いに加え、英国とEUがブレグジットの移行期間で合意のニュースを好感しポンドが大幅高、その動きに引っ張られてユーロドルも東京後場の安値1.2258レベルから1.2360レベルへと100ポイントほどの上昇となり、そのまま高値圏での引けとなりました。
3月20日(火)
東京市場では動意薄となっていたものの欧州市場に入り発表された弱い経済指標をきっかけに売りが強まり、その後は引けまで売り一色の展開、1.2240レベルの安値をつけそのまま安値圏での引けとなりました。
3月21日(水)
東京市場が休場となったアジア市場ではFOMCを前にじり高の流れが続きました。FOMCでは2018年内の金利見通しが変更なかったことに反応しドル安の動きからユーロドルは1.2350レベルまで上昇後にやや押して引けました。
3月22日(木)
東京市場ではドル円同様にドル売りとなり一時1.2388レベルまで買われましたがその後は失速。欧州市場ではユーロ円の売りが強まったこともあって1.23台前半へと下押し。NY市場ではダウ急落からユーロ円が129円台半ばまで下押ししたため、ユーロドルも1.2286まで下げた後にやや戻しての引けとなりました。
3月23日(金)
東京市場ではドル円で円が急騰した動きから、この日はドルの動きで足並みを揃えユーロドルは勢いこそ無いもののユーロがじり高の展開を辿りました。海外市場に移ってからはユーロ円の買い戻しや、改めてユーロ買いに動く向きも見られ前日高値圏に近づいての引けとなりました。
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