今週の週間見通し
先週のドル円は、米国の追加関税とホワイトハウスの強硬派人事を材料にリスクオフの円高が加速しました。追加関税は日本をはじめとする対象国には通商拡大法232条にもとづき鉄鋼とアルミに対する追加関税が課され、中国には加えて通商法301条にもとづいた制裁措置として1300品目(4月上旬に詳細が決定される)にも25%の追加関税が課されることとなります。
中国は即座に対抗措置として米国からの輸入品128品目に25%の追加関税を課すことを発表しましたが、一番気になる発言としては週末に出た中国の駐米大使が米国債購入減額も排除しないと述べたことです。既に米国債は大規模減税等の財源確保のため大きく売られて悪い長期金利上昇の芽が見えています。ここに中国の米国債購入が現実のものとなったら長期債利回りが急騰し債券安に加え株安とドル安のトリプル安につながるリスクが出てきます。
現状の為替市場では最大の米国債保有国である中国が自らの首を絞めるような動きには出ないであろうという考え方がコンセンサスとはなっていますが、今年1月にも同様の発言が出てきたことを考えると中国の長期的な外貨準備見直しに着手するきっかけを与えることになるという点には注意が必要です。1月時点では後から考えていないといった否定発言が出ましたが、その時にも外貨準備の見直しの中で米国債購入減額はあり得るという点までは否定されていません。さらに、対米貿易摩擦が米国債購入減額の理由になるかもしれないというまさに今回の駐米大使の発言と重なるコメントが出ていました。
外貨準備の見直し自体長期的な作業で短期的にどうなるといったものではありませんが、実際に検討に着手するといった話が聞こえて来るだけでもインパクトは絶大です。これかた始まる米中間の貿易戦争と平行して、中国の外貨準備見直しは長期的なテーマとして忘れないようにしておきたいものです。
また今週は本邦期末にあたり、レパトリ(日本企業海外支店の利益送金による円買い)の懸念があります。大台105円にあった大口の買いオーダーを下抜けたことから、今後は大きな買いが出て来ると思われる水準はそう多くはありません。また今週金曜はグッドフライデー、来週月曜はイースターマンデーと欧米ではクリスマスと並んで市場参加者が減る一大休暇シーズンとなります。欧米の参加者が減り流動性が低下する中で、本邦企業の円買いが思いのほか効いてくるといったことも考えられるために週後半は特に注意すべき時期になります。
テクニカルには先週23日のFX羅針盤コラムで長期的なターゲットを一足先に示しましたが、ここから下の水準ではテクニカルなターゲットとして103.22と102.08が、またトランプ大統領当選直後の101.20というあたりが大台100円の手前のターゲットとなりますが、103円台前半まで目立ったターゲットが無いという点は要注意です。上記の通りマーケットが薄い中で大きく振れるような場面があっても不思議ではありません。
繰り返しになりますので簡単に日足チャートの各線を示しておきます。
ターゲットとなる103.22をピンクの水平線で示し、2月高値と3月高値を結んだレジスタンスラインとそれに平行に引いた下降チャンネルをピンク太い平行線で示しました。また最も緩やかな下降チャンネルは先週引いたものですが、これもピンクの細い平行線で示してあります。動きとしてはピンクの舗装平行線を下抜けるとピンクの太い平行線で示す下降チャンネルへと角度を急にし、103円台前半のターゲットを目指す展開という流れが想定できます。
今週も下方向にバイアスをかけ、105.40レベルをレジスタンスに、103.20レベルをサポートと円一段高の懸念がある一週間とします。
ドル円(日足)チャート
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。
3月26日(月)
06:45 NZ2月貿易収支
15:45 フランス10〜12月期GDP確報値
18:30 ドイツ連銀総裁講演
21:30 米国2月シカゴ連銀全米活動指数
23:30 米国3月ダラス連銀製造業活動指数
25:30 NY連銀総裁講演
29:30 クリーブランド連銀総裁講演
3月27日(火)
08:10 クオールズFRB副議長講演
18:00 ユーロ圏3月消費者信頼感確報値
22:00 米国1月ケースシラー住宅価格指数
24:00 アトランタ連銀総裁講演
3月28日(水)
09:00 NZ3月ANZ企業信頼感
15:00 ドイツ4月GFK消費者信頼感
15:45 フランス3月消費者信頼感指数
**:** 南ア政策金利発表
21:30 米国10〜12月期GDP確報値
21:30 米国2月卸売在庫
23:00 米国2月中古住宅販売保留件数指数
23:30 米国週間原油在庫
25:00 アトランタ連銀総裁講演
3月29日(木)
08:01 英国3月消費者信頼感
16:00 トルコ10〜12月期GDP
16:55 ドイツ3月失業率
17:30 英国10〜12月期GDP確報値
18:30 南ア2月PPI
21:00 ドイツ3月CPI速報値
21:00 南ア2月貿易収支
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国2月個人所得・消費支出
22:45 米国3月シカゴ購買部協会景気指数
23:00 米国3月ミシガン大消費者信頼感指数確報値
26:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)
3月30日(金)
**:** グッドフライデー(東京を除く主要市場は休場)
08:30 本邦2月失業率・有効求人倍率
08:30 本邦3月東京区部CPI
3月31日(土)
10:00 中国3月製造業・非製造業PMI
前週の主要レート(週間レンジ)
始値 高値 安値 終値
ドル円 105.96 106.65 104.65 104.72
ユーロ円 130.13 131.71 129.17 129.38
ユーロドル 1.2281 1.2388 1.2240 1.2353
日経平均 21537.90 21659.04 20559.61 20617.86
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
前週の概況
3月19日(月)
東京市場では森友問題を嫌気した株安と実需のドル売りも重なって円買いが先行、後場には105.68レベルの安値を付けました。しかし、105円台半ばでは買いも残っていてそこまで、欧州市場ではユーロ円の買いに引っ張られて106.32レベルまで上昇しました。しかしNY市場では個人データの不正使用によるフェイスブック株の急落が株価全体を押し下げ、ダウが一時500ドル近い下げとなったことからドル円も再び下げに転じ105.78レベルへと押した後、引けにかけては株価の反発とともに106円台に戻しての引けとなりました。
3月20日(火)
東京市場ではドル円が実需買いも伴って堅調な動きとなり欧州市場序盤には106.61レベルの高値をつけました。しかしその後は細かい上下を挟みながらもFOMCを前にして106円台半ばでのもみあいに終始しました。G20では通貨安競争の回避に言及はあったものの直近の為替市場では気になる通貨も無く特に反応は見られませんでした。
3月21日(水)
東京市場が休場となり動意薄の状態がNY市場まで続いたものの、FOMCを前にしたポジション調整によりじり安の展開となりました。注目のFOMCは予想通り0.25%の利上げが行われましたが、発表直後から上下に振れる展開。内容に強弱あるため直後は106.65レベルの高値をつけたものの、年内の利上げ見通しが計3回とこれまでと変化が無かったことに為替市場は反応し、105.88レベルまで売られた後に106円台へとやや戻して引けました。
3月22日(木)
東京市場ではFOMC後のドル売りが継続していましたが、NY時間に公表予定の対中関税を警戒しドル円は上値を抑えられる展開が続きました。NY市場の朝方には年初来安値に近づいたもののいったんは買い戻しが入り105円台後半まで水準を上げましたが、米国の中国への関税が500億ドルと発表されたことを嫌気し引けにかけてNYダウが急落、終値も700ドルを超える下げとなったことから再び安値圏に近づいての引けとなりました。
3月23日(金)
NY市場の流れを受けリスクオフの円買いが強まりました。大口の買いがあると言われた105円台の大台もあっさりと割り込むと104.65レベルの安値まで急落。その後も上値の重たい展開を続けましたが、海外市場に移ると週末前に買い戻しも出てNY市場前場には105円台前半を回復。しかしダウが続落する動きに追随し、再び安値圏に押しての引けとなりました。
オーダー/ポジション状況
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