米国発の貿易戦争に円高傾向継続か
先週のドル/円相場は、ドル安・円高。2016年11月10日以来となる105円割れを記録しただけでなく、週末NYも104円台のドル安値圏で大引けている。
ドル/円は前週末のNYクローズレベルと大差ない105.90円レベルで寄り付いた。マーケットでは週明け19日に実施される「森友問題における、文書改ざんに関する集中審議」への関心が高かったが、結果として大きな変動には繋がらなかった。週の半ばまでは105.60-106.60円といった1円レンジでの揉み合いに。
しかし、形成していた保ち合いを下放れると、一気にドル安・円高が進行。105.24円の年初来安値や心理サポートの105円も割り込む展開となり、一気に104.64円まで値を下げた。そののち、小戻したが続かず、ドルは再び軟化し、104.70-75円の週間を通したドル最安値圏で週末の取引を終え、越週している。
一方、先週は週間を通して材料が多く、週初から「19日に実施されたロシア大統領選挙の開票」や前述した「森友問題」、米朝韓の当局者らがヘルシンキで非公式会合を行った「北朝鮮情勢」、「G20財務相・中銀総裁会議」「米FOMCとパウエルFRB議長の会見」−−など盛り沢山。
ただ、そうしたなかでも、とくに注視されていたものは大きく2つ。ひとつは「米輸入制限」に絡む動きやニュースなどで、もうひとつは「米政権運営不安」。前者については、23日に米国による鉄鋼・アルミニウム輸入制限が正式に発動するなか、米中貿易戦争の激化懸念が一気に高まった。それに対し後者は、先月末から相次いでいる米政権要人の辞任や解任がついに、「マクマスター大統領補佐官の交代」にまで広がり、米政権の「さらなる内向き志向」を強める懸念も取り沙汰されていたようだ。
<< 今週の見通し >>
先週発表された米経済指標は総じて良好、3月期末をにらんだ需給的な円買い要因もさすがに一巡した。また、サイクルをメインにしたテクニカル面からも、そろそろ本格的なドルの反発が期待されるものの、材料面を考慮すると、とてもそうは思えない。むしろ、今週についても、リスクは依然として円高方向にバイアスがかかる。状況次第では、さらなる円高の進行についても想定しておく必要がありそうだ。
なお、米国発の貿易戦争は、対中を中心に、日本についてもトランプ米大統領が「もうだまされない」などと強く非難しており、新たな火種となることが確実視されている。一方で、米NYダウは先週末22-23日に記録的な暴落をたどっており、その原因のひとつが前記した「米国発の貿易戦争」にあることは確か。いずれにしても、これ以上の米株下落は米国の企業や金融機関に打撃となるほか、株式市場での運用比率が高い米国の年金などにマイナス影響を及ぼすだけに、どこかでトーンを弱めるといった期待感を滲ませた見方も聞かれるが、個人的にそこまで楽観視は出来ない気がしている。
テクニカルに見た場合、2月16日安値の105.55円と今月2日の105.24円、そして今回安値でトリプルボトムを形成し底入れ、ドルは反発に転じる−−というシナリオを予想していたのだが、今回の局面で105円を割り込んできており、前記シナリオは崩壊した感を否めない。リスクは依然としてドル安・円高方向にバイアスがかかる。
そんなドルの下値メドだが、久しぶりに推移する104円台ということで、明確なレベルを指摘することは難しい。ただ、それでも敢えて指摘をすれば、2016年のドル安値98.65円を起点とした上げ幅の76.4%押しに当たる103.35-40円が一応のターゲットになりそうだ。
一方、材料的に見た場合、3月の消費者信頼感指数をはじめ重要な米経済指標の発表が相次ぐうえ、週初から米地区連銀総裁などによる講演が相次ぐ予定となっている。
また、それとは別に、「森友問題」に関連し、27日には佐川前国税庁長官の証人喚問が実施される予定であるほか、週末1日からは「米韓合同軍事演習の開始」などの要因も観測されており、状況如何ではマーケットの波乱要因となっても不思議はない。さらには、日本勢にとって名実ともに3月期末最終週にあたることで、最後の最後、駆け込み的な需給要因にも一応注意を払っておきたい。
そんな今週のドル/円予想レンジは、103.50-106.50円。ドル高・円安については、これまでサポートだった105.30-60円の攻防にまずは注視。その少し上には、年明け以降、おおむねドルの上昇を阻んできた移動平均25日線も位置している。
対するドル安・円高方向は、ピボットを参考にした104.05-10円が最初の下値メドで、割り込めばフィボナッチを参考にした103.35-40円などがターゲットとなりそうだ。(了)
オーダー/ポジション状況
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