ドル円104円台に突入今年の円高はしぶとい(3月第四週)

NYダウは22日に724.42ドル安、23日も424.69ドル安と暴落した。

ドル円104円台に突入今年の円高はしぶとい(3月第四週)

【概況】

3月1日にトランプ大統領が鉄鋼・アルミに関税を導入すると表明した直後の3月2日に105.24円まで下落、13日に107.29円まで戻してからの下落では16日に105.60円まで下げたものの、その時点では新たな安値更新は回避していた。
3月22日未明の米連銀FOMCが今年1回目の利上げを決定し、利上げペース加速の可能性を強めたが、発表当初に106.63円まで戻したところで材料消化、イベント通過感から売られて106円割れとなった。さらにトランプ政権の関税強化、特に中国に対する大規模な関税拡大により貿易戦争懸念が拡大、22日のNYダウが724.42ドル安と下げたことでドル円は米連銀利上げ云々ではなく貿易戦争リスクによる円買い戻しによる一段安へ走り、23日午前には104.635円まで下落した。
104円台は2016年11月のトランプ大統領誕生ショックの前後以来である。
23日夜には105.28円まで若干戻したもののNYダウがこの日も424.69ドル安と大幅続落したため24日未明には104.66円まで下落、新たな底割れに余裕なしの状況で週を終えた。

【保護主義拡大不安のリスク回避】

3月22日、トランプ大統領は500億ドル規模の中国製品に対する関税賦課の大統領令に署名した。 米USTRは関税引き上げ対象リストを15日以内に取りまとめるとした。3月23日には鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置が発動された。NAFTA再交渉中のメキシコとカナダのほか、EUや韓国が除外されたが日本は対象となり、トランプ大統領は対日赤字解消に対して厳しい姿勢を示した。
23日、中国は対抗措置として米国産豚肉などに報復関税を課すと発表した。米国の農業団体は中国の報復を恐れて関税導入に反対しているが、トランプ大統領の姿勢は一貫しており、また法的な関税導入のため、大統領が翻意したからといってすぐに状況が解消することはなく、この問題は長引くことが懸念される。米国は最大の農業輸出国でもあり、中国は米国産大豆の3分の1を輸入する得意先だが、大豆等への報復関税等を導入し始めると、米中の貿易摩擦は全面的な貿易戦争へと発展しかねない。

中国の対米黒字は、米国資本による中国工場での製品が再輸入されていることの比率も大きい。本来なら持ちつ持たれつの関係性にあるのだが、トランプ保護主義の根幹には米国国内の雇用が流出していることを問題視しているため、金融市場が懸念している米国に対する負のブーメラン効果はさほど考慮されていないと思われる。また北朝鮮問題で米朝首脳会談実現間近まで状況が改善してきたことに対しても段階的な強硬姿勢が効果的だったと総括していると思われるので、米中の貿易戦争的状況についても段階的に強気度合いを高めてゆく可能性が懸念される。

【米連銀の利上げペース云々ではなく世界株安リスク】

NYダウは22日に724.42ドル安、23日も424.69ドル安と暴落した。日経平均は23日の下落で年初来安値を割り込み、一時は千円以上の下落となった。
日経平均は本来的に米国株高に依存した他力本願的な上昇相場であったが、1月23日高値から2月序盤にかけての下落はアベノミクス相場といわれてきた中での下落規模としては2015年6月天井から2016年前半へと大幅下落した時に匹敵するが、2012年からの長期上昇後の下落という意味では、2015年からの下落規模を超えてくる可能性が懸念される。

NYダウもまだ2月9日の安値を割り込んでいないものの、2月序盤の暴落的な下落では前日比千ドルを超える下落を二度入れているが、それでは底打ちにはなっていなかった印象がかなり強まっており、安値更新の場合は1月天井からの二段下げ局面となり、下げがさらに下げを呼ぶ連鎖暴落へと発展しかねない状況に入っていている印象だ。
トランプショックをトランプラリーに転じて、半ばバブル的に大上昇してきた米国株高が世界株高をけん引してきたのであり、これがはじけるとなると金融市場全般に大きな動揺が走る可能性がある。

株安が本格化すればリスク回避的に米国長期債は買い戻されて結果的には米長期債利回りは低下する。米連銀が短期金利を緩やかに引き上げても長期金利が低下すればドル安が進み、株安とともにドルも売られる弱気の連鎖となりかねない。米国長期債とともに金融市場のリスク回避先となるゴールドは上昇、円も買い戻されてきている。

【5か月周期のリズムでは戻せなくなった=より中長期的な円高圧力】

2016年6月24日の英国EU離脱ショックで99.04円の安値をつけて以降、2016年11月9日のトランプ大統領誕生ショック、2017年4月17日底、同年9月8日底と概ね5か月周期で重要な底をつけては上昇してきた。しかし今回は昨年9月底からすでに6か月を経過しているものの、これまでのようなリズムでは戻せず、1月26日安値、2月16日安値、3月2日安値、3月23日安値と2円以上3円に満たない小反発の後に一段安を繰り返し、ずるずると安値更新が続いている。これまでの循環的なリズムが崩れ、より中長期的なレベルで円高が進んでいることを示していると思われる。

ドル円は概ね10か月から1年周期の底打ちサイクルで推移してきた。昨年9月まではこのサイクルの半分の周期で循環的な戻りも入れてきた。しかし2015年11月から2016年6月への下落時にはそうした半分の周期での顕著な戻りはなく、数週の小反発をいれつつもほぼ一本調子の下落が続き、2015年6月天井からの下落幅は26.8円安となった。
今のところ昨年11月からの下落幅は10.08円幅で、2016年12月から2017年4月への10.54円幅となった下落時並みである。しかし同時に2015年11月から2016年6月への下落と比較しても同レベルのベクトルで推移している点を認識しておくべきと思う。

【下値目途、切り返しの条件】

【下値目途、切り返しの条件】

2017年4月への下落幅並みとすれば、今回の下値目途はN波計算値=104.18円前後となる。104円前半からは突っ込み警戒、反騰注意だが、仮に104円を割り込んでも明確な切り返しが見られない場合は、2016年6月への下落時並みに発展してゆく可能性を警戒すべきということになるのではないか。その場合、昨年9月から11月への戻り幅の倍返しはV波計算値=99.92円であり、チャート上の下値目途とすべき重要な安値は2016年11月のトランプショック時安値101.19円、2016年6月の英国EU離脱決定ショック時の99.04円まで見当たらなくなっているという認識も各所で論じられているが、それらの水準を試しにかかってゆく可能性も現実味が出てくるのではないかと思う。

2017年4月への下落幅並みとすれば、今回の下値目途はN波計算値=104.18円前後となる。104円前半からは突っ込み警戒、反騰注意だが、仮に104円を割り込んでも明確な切り返しが見られない場合は、2016年6月への下落時並みに発展してゆく可能性を警戒すべきということになるのではないか。その場合、昨年9月から11月への戻り幅の倍返しはV波計算値=99.92円であり、チャート上の下値目途とすべき重要な安値は2016年11月のトランプショック時安値101.19円、2016年6月の英国EU離脱決定ショック時の99.04円まで見当たらなくなっているという認識も各所で論じられているが、それらの水準を試しにかかってゆく可能性も現実味が出てくるのではないかと思う。

【当面の主な予定】

3/26(月)
06:45 (NZ) 2月 貿易収支 (1月 -5.66億NZドル、予想 -1.00億NZドル)
18:30 (独)ワイトマン独連銀総裁、講演
25:30 (米) ダドリー米NY連銀総裁、講演

3/27(火)
05:30 (米) メスター米クリーブランド連銀総裁、講演
08:10 (米) クオールズFRB副議長、講演
08:50 (日) 2月 企業向けサービス価格指数 前年比 (1月 0.7%、予想 0.7%)
22:00 (米) 1月 ケース・シラー米住宅価格指数 前年比 (12月 6.3%、予想 6.1%)
23:00 (米) 3月 リッチモンド連銀製造業指数 28 22
23:00 (米) 3月 消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード) 130.8 131.0
24:00 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

3/28(水)
未 定 (南ア) 南アフリカ準備銀行政策金利 (現行 6.75%、予想 6.50%へ引き下げ)
09:00 (NZ) 3月 NBNZ企業信頼感 (2月 -19.0)
21:30 (米) 10-12月期 四半期GDP、確定値 前期比年率 (改定値 2.5%、予想 2.7%)
23:00 (米) 2月 住宅販売保留指数 前月比 (1月 -4.7%、予想 2.0%)
25:00 (米) ボスティック米アトランタ連銀総裁、講演

3/29(木)
米債券市場 短縮取引(グッドフライデー前日)

06:45 (NZ) 2月 住宅建設許可件数 前月比 (1月 0.2%)
16:00 (土) 10-12月期 四半期GDP 前年比 (前期 11.1%)
16:55 (独) 3月 失業率 (2月 5.4%、予想 5.3%)
17:30 (英) 10-12月期 四半期GDP、確定値 前期比 (速報 0.4%、予想 0.4%)
17:30 (英) 10-12月期 四半期GDP、確定値 前年比 (速報 1.4%、予想 1.4%)

21:00 (独) 3月 消費者物価指数 速報値 前月比 (2月 0.5%、予想 0.5%)
21:30 (米) 2月 個人消費 前月比 (1月 0.2%、予想 0.2%)
21:30 (米) 2月 個人所得 前月比 (1月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 2月 PCEコア・デフレーター 前月比 (1月 0.3%、予想 0.2%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 22.9万件、予想 23.0万件)
22:45 (米) 3月 シカゴPMI (2月 61.9、予想 62.0)
23:00 (米) 3月 ミシガン大学消費者信頼感指数 確報 (速報 102.0、予想 102.0)
26:00 (米) ハーカー米フィラデルフィア連銀総裁、講演

3/30(金)
グッドフライデー 豪、NZ、シンガポール、香港、英、仏、独、瑞、、南ア、カナダ休場
グッドフライデー 米 株式・債券市場 休場

08:30 (日) 2月 失業率 (1月 2.4%、予想 2.6%)
08:30 (日) 2月 有効求人倍率 (1月 1.59、予想 1.60)
08:30 (日) 3月 東京都区部消費者物価コア指数 前年比 (2月 0.9%、予想 0.9%)
08:50 (日) 2月 鉱工業生産・速報 前月比 (1月 -6.8%、予想 5.0%)
19:00 (日) 外国為替平衡操作の実施状況


3/31(土)
10:00 (中) 中国3月製造業PMI (2月 50.7、予想 50.3)
10:00 (中) 中国3月非製造業PMI (2月 54.4)

4/1(日)
米韓合同軍事演習開始

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