ユーロは上値が重く年初来安値をトライする流れ
〇先週のユーロドル、仏解散総選挙の動きの影響で、週を通してユーロの上値が重たい展開が続く
〇フランス国債、利回り上昇する流れが続きドイツ国債との利回り差が急拡大
〇6/30の1回目投票に向け極右が現在のリード維持ならフランス国債急落、ユーロ一段安も
〇4月安値と6月高値の78.6%押しの水準1.0668下回ると、年初来安値更新する動きに
〇今週は年初来安値1.0600レベルをサポート、1.0750レベルをレジスタンスとする週を見る
〇年初来安値を下回ると一時的に大幅安となるリスク
今週の週間見通しと予想レンジ
先週はFOMCと日銀会合という2大金融政策決定会合がありましたが、それらでの動きは鈍く、FOMC前の予想よりも弱かったCPIでドル売りによるユーロ買いで週間高値をつけた以外は前週末のマクロン大統領による解散総選挙の動きが影響し、週を通してユーロの上値が重たい展開が続きました。
その後、ルペン氏と仲が悪かった姪の極右政党と総選挙では共闘して戦うとのニュースが入り、それを受けて左派政党も共闘というニュースが入ったことで、マクロン大統領率いるRE(再生)は総選挙発表時点よりも難しい状況になってきたと言えます。世論調査でもこの状況は明確で極右が35%、左派が26%、再生は19%となっていて、フランス政治で初めて極右政権が誕生する可能性が出ています。
これまでのフランスでは極右政権は誕生させないという動きがあったのですが、今回もルペン氏の極右政党と姪の政党を合わせても過半数までは行かなそうですが、果たして極右以外が手を結ぶことが可能なのかは疑問で、フランス国債は利回りが上昇する流れが続いています。この一週間でドイツ国債との利回り差が急拡大してきました。
6月30日の1回目の投票に向けて、極右が現在のリードを維持し、かつその他の政党の無見合わせで極右の議席数を超えることが出来ないとフランス国債は急落、そしてユーロ一段安という動きが出てくることになりそうです。
テクニカルには日足チャートをご覧ください。
既に4月安値と6月高値との78.6%押しの水準まで下げてきていますが、この1.0668が最後の砦となり、ここを下回ってくると4月安値にトライし年初来安値を更新する動きにつながります。6月30日に向けて約2週間、マクロン大統領が総選挙の賭けに負ける可能性が高まっていることから、方向はユーロが対ドルだけでなく他のクロスでも弱くなるという動きがメインシナリオです。
今週は年初来安値1.0600レベルをサポートに、1.0750レベルをレジスタンスとする週を見ておきますが、年初来安値を下回ると一時的に大幅安となるリスクはあります。
今週のコラム
今週はドイツ10年債とフランス10年債の利回り差(フランス国債利回り―ドイツ国債利回り)のチャートを確認しておきます。チャートで青のラインがフランス国債の利回り(右軸)で、オレンジのラインが利回り差(左軸)となっています。
先週はドイツ国債が買われ(利回り低下)、フランス国債が売られ(利回り上昇)と、方向に違いがあったことから利回り差(オレンジ)が急拡大していることがよくわかるチャートです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
6月17日(月)
17:00 レーンECB理事講演 ☆
18:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
20:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
22:15 アイルランド中銀総裁講演
6月18日(火)
18:00 ドイツ6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏5月CPI
22:30 デギンドスECB副総裁講演
25:00 フランス中銀総裁講演 ☆
6月19日(水)
15:00 英国5月CPI ☆
17:30 ポルトガル中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏4月建設支出
6月20日(木)
15:00 ドイツ5月PPI ☆
16:30 スイス中銀政策金利発表 ☆
20:00 英中銀MPC ☆
23:00 ユーロ圏6月消費者信頼感速報値 ☆
6月21日(金)
08:01 英国6月消費者信頼感
15:00 英国5月小売売上高
15:45 フランス6月企業景況感
16:15 フランス6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東 京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
6月10日(月)
ユーロドルは欧州議会選におけるフランスの議席で与党連合が極右に大敗したことを受け、マクロン大統領が解散総選挙の演説を週末に行いました。この発表を受け週明けのユーロドルはギャップダウンして始まり、NY昼前には1.0733レベルまで下値を広げました。しかしラガルドECB総裁講演において金利は直線的に低下するわけではないと次回利下げは先と取れる発言をしたことから1.0765レベルへと戻して引けました。
6月11日(火)
ユーロドルは東京市場では動かず、欧州市場入りとともにフランスの政局が流動的となってきたことから前日に続いて続落、1.0719レベルの安値をつけた後に若干戻して引けました。
6月12日(水)
ユーロドルはNY市場まではドル円とともにユーロ円もじり高となったことからユーロドルも底堅い動きとなっていました。CPI発表後には1.0852レベルまで上昇しましたが、FOMC後には押しも入り1.08近くに押して引けました。
6月13日(木)
ユーロドルはFOMC後のドル買いの流れから上値が重たい流れが続き、欧州市場に入ってからは欧州株が下げたことも重なって一段安。NY市場ではユーロ円をはじめユーロクロスでの売りも広がったことで1.0733レベルまで下押しし安値引けとなりました。
6月14日(金)
ユーロ円はドル円と歩調を揃えて上下していましたが、ユーロドルはフランスの政局不安を材料にした売りが連日強まり、1.0668レベルの安値をつけました。引けにかけては買い戻しも出て、1.07台に乗せての引けとなりました。
注:ポイント要約は編集部
ディスクレーマー
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