ドル円 イベント過ぎても短期的方向感は出ず(週報6月第3週)

夏以降は円高方向への調整が始まるというのが、現時点での長期的な見通しになってきたと言えそうです。

ドル円 イベント過ぎても短期的方向感は出ず(週報6月第3週)

イベント過ぎても短期的方向感は出ず

〇先週のドル円、FOMC当日のCPIが予想よりも弱く、157円台前半から155円台後半へと急落
〇FOMCドットプロット年内利下げ見通し3回から1回へ後退で、翌日東京市場は行って来い
〇日銀会合、国債購入額の具体的な減額は7月会合としたことで、一時158円台前半乗せ
〇その後の植田総裁会見、7月会合での利上げもあり得るとの発言から行って来い
〇FOMC後、市場コンセンサスは年内2回利下げ増加、米景気後退リスクあれば大統領選前の利下げ視野
〇7月以降日銀政策正常化なら日米金利差縮小で円安収束が材料に、円高方向へ調整開始が長期的見通し
〇米サービス価格CPIの3か月連続上昇が総合CPI下げ止まり要因。サービス価格や雇用関連数字重要度増す
〇今週は156.25レベルをサポート、先週高値に重なる158.25レベルをレジスタンスとする週を見る

今週の週間見通し

先週のドル円は、FOMC当日に発表されたCPIが予想よりも弱かったことで157円台前半から155円台後半へと急落するという動きがあってからのFOMCでのドットプロットで12月時点で前回3回から1回利下げへと見通しが後退したことで、翌日東京市場では行って来いという最初の大きな動きを見ました。

そして金曜の日銀会合では一部で今会合での国債購入額減額が発表されるのではとの見方もでていたせいで、具体的な減額は7月会合という発表で円安に振れ一時158円台前半乗せを見ましたが、植田総裁会見で減額規模が大きくなること、また7月会合での利上げもあり得るとの発言から行って来いという2度目の大きな動きを見ることとなりました。

FRBとしてはCPIの数字は事前に報告を受けていると思いますし、FOMC前のCPIが予想よりも弱い程度でそれまでのタカ派なスタンスに変化は無いでしょうから、FOMC前の下げは余計だった気もしますが、逆にFOMC後に市場参加者のコンセンサスは年内2回利下げが増えたという点で、今後弱い数字が出てくる可能性と米景気後退のリスクがあれば、大統領選前に利下げはあり得るという見方をしていることとなります。

また日銀会合では最近になってQT思惑が急速に広がりましたが、7月以降のほうがこれまでの展開に沿ったものだったと思います。それでもそれなりの規模でQTを進めて行くであろうことが示されたことは為替市場にとっては円安を止めたという点で良かったかと思います。ただ、7月の利上げの可能性はその時の状況次第でしょうから、この部分をあまり期待しすぎると改めて円安に動く可能性もあり、期待のし過ぎは禁物でしょう。

ただ6月の金融政策ウィークにおいて、米国の緩和後退はあるものの、可能性としては2回利下げもあるという見方を市場参加者がしていることや、日銀の金融政策が7月以降正常化に向かうことで日米金利差縮小に繋がっていくであろうことを考えると、それまで円安の動きがおさまるのかどうかが今後の材料となっていき、夏以降は円高方向への調整が始まるというのが、現時点での長期的な見通しになってきたと言えそうです。

一点気になったのは米国CPIが予想よりも弱いとは言っても、カテゴリー別で見て行くとサービス価格のCPIが3か月連続で上昇していて、それが総合CPI下げ止まりの要因となっていますので、しばらくはサービス価格やその要因となる雇用関連の数字の重要度が増していくと見られます。主要国の会合は夏休み前は7月で最後となるため、それまでの経済指標は日米とも注視していく必要があります。

テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。

これまでの4月高値からのレジスタンスライン(ピンク)と5月安値からのサポートライン(青)によるトライアングルは先週のじり高の動きの中で上抜け、現在はサポートラインと平行に引いたライン(青)とで構成される上昇チャンネル内での動きになってきたと言えます。

ただ、上昇の勢いが強いわけではなく、短期的には上昇というよりは横方向の動きを経て、動き次第ではサポートラインまでの下押しもあるという展開でしょう。5月高値と6月安値との78.6%(61.8%の平方根)戻しが158.39で先週の高値が同水準で止められたことも、一方的な円安の動きにはならないひとつの根拠となります。今週サポートラインは155円台後半から156円台前半へと上がって来ることから156円台前半がサポートとなってきそうです。

これらの水準を考慮して、今週は156.25レベルをサポートに、先週高値に重なる158.25レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。

イベント過ぎても短期的方向感は出ず

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

6月17日(月)
**:** シンガポール市場休場
11:00 中国5月鉱工業生産、小売売上高
17:00 レーンECB理事講演 ☆
18:00 ラガルドECB総裁講演 ☆
20:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
21:30 米国6月NY連銀製造業景況指数
22:15 アイルランド中銀総裁講演
25:00 NY連銀総裁講演 ☆
26:00 (フィラデルフィア連銀総裁講演)

6月18日(火)
13:30 豪中銀政策金利発表
18:00 ドイツ6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏6月ZEW景況感
18:00 ユーロ圏5月CPI
21:30 米国5月小売売上高 ☆
22:15 米国5月鉱工業生産 ☆、設備稼働率
22:30 デギンドスECB副総裁講演
23:00 リッチモンド連銀総裁講演 ☆
23:00 米国4月企業在庫
25:00 フランス中銀総裁講演 ☆
26:00 クーグラーFRB理事講演 ☆、(ダラス連銀総裁講演)
27:00 (シカゴ連銀総裁講演)

6月19日(水)
**:** NY市場休場
08:50 日銀4月会合議事要旨公表
08:50 本邦5月貿易収支(通関)
15:00 英国5月CPI ☆
17:30 ポルトガル中銀総裁講演
18:00 ユーロ圏4月建設支出
23:00 米国6月NAHB住宅指数 ☆

6月20日(木)
15:00 ドイツ5月PPI ☆
16:30 スイス中銀政策金利発表 ☆
20:00 英中銀MPC ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国6月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
21:30 米国5月住宅着工 ☆・建設許可
23:00 ユーロ圏6月消費者信頼感速報値 ☆
24:00 週間原油在庫統計

6月21日(金)
08:01 英国6月消費者信頼感
08:30 本邦5月CPI ☆
15:00 英国5月小売売上高
15:45 フランス6月企業景況感
16:15 フランス6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
22:45 米国6月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
23:00 米国5月中古住宅 ☆、景気先行指数

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

6月10日(月)
週明けのドル円はユーロが下げた動きを受けてドル買いが先行、東京昼過ぎには157.19レベルの高値をつけましたが、その後はFOMCを控えて157円挟みでの小動きとなりました。

6月11日(火)
ドル円は底堅く157.40レベルまで水準は上げたものの、FOMC前ということもあり、そのまま買い進められることもなく157円を挟んだもみあいとなりました。

6月12日(水)
FOMCを前にドル円は小動きであったもののNY市場まではじり高、157.37レベルと前日高値に迫る動きとなりました。しかし米国CPIが予想よりも弱かったことから大きく反落し155.72レベルの安値をつけ、若干戻してのFOMC結果待ち。FOMCは予想通り政策金利は現状維持、金利見通しも年末時点で1回へと後退したことで買い戻しが入り、156円台後半へと戻して引けました。

6月13日(木)
ドル円はFOMC後の底堅い流れを継続し欧州市場序盤には157.31レベルの高値をつけました。その後は157円台半ばには売りオーダーが見えていたところ、予想よりも弱い米国PPIに反応し156.58レベルと東京早朝安値に近づきましたが、すぐに戻し157円前後で底堅い地合いで引けています。

6月14日(金)
ドル円は日銀会合の結果発表までは若干底堅い程度の動きを続けていました。結果は現状維持と国債購入額の減額を決定したものの、具体的な減額については7月会合としたことで、この点も予想通りではあったものの一部に今回会合で具体的な内容が示されるとの見方もあったため、円安に振れることとなりました。

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