ドル円 基本は揉み合い、地政学リスクに依然要注意(週報11月第3週)

先週のドル/円相場はドルが底堅い。しかし上値も重いようで、ザラ場ベースで一度も156円台を付けることはなく、前週高値を超えられなかった。

ドル円 基本は揉み合い、地政学リスクに依然要注意(週報11月第3週)

基本は揉み合い、地政学リスクに依然要注意

〇先週のドル円、153.28まで下落後はV字回復し155.89を示現、その後は揉みあい
〇先週形成した153.28-155のレンジをどちらに抜けるか要注目
〇今週は米10月PCEデフレーター、11月FOMCの議事録要旨、引き続き地政学リスクに要注意
〇ドル高・円安方向、先週一度もとどかなかった156円が最初の抵抗
〇ドル安・円高方向11/21安値153.91をめぐる攻防にまずは注目
〇ドル円予想レンジ:152.50-156.00

<< 先週の回顧 >>

先週のドル/円相場はドルが底堅い。しかし上値も重いようで、ザラ場ベースで一度も156円台を付けることはなく、前週高値を超えられなかった。

前週末は、石破首相が南米ペルーで中国国家主席らと相次ぎ会談を実施し、それが思惑を呼ぶ。一方、米新政権人事が引き続き取り沙汰されるなか、早くも一部で国防長官候補への醜聞が取り沙汰されていたようだ。
そうした状況下、ドル/円は154.20円レベルで寄り付いたのち、ややドル売り優勢。ウクライナにおける地政学リスクの高まりを受け、リスク回避の動きが強まったとされていた。週間安値の153.28円まで弱含んでいる。しかし下げ止まったあとは、一転してVの字型の回復。週の半ばには週間高値の155.89円を示現したが、その後は動意が途絶え揉み合いの様相に。週末NYは154.80円レベルで取引を終えていた。
なお、暗号資産(仮想通貨)ビットコインは先週も1週間を通して堅調裡。強気派から「年内に到達する」などと指摘されていた10万ドルにあと一息のレベル、99000ドル台を一時示現している。

一方、週間を通して注視されていた材料は、「ウクライナ情勢」と「トランプ新政権人事」について。
前者は、先週1週間を通してウクライナ情勢が相場の波乱要因に。早々に「米国が方針転換しウクライナによる長射程兵器の使用を容認した」との報道が観測されたことに続き、早速実戦投入されたことがそののち明らかになった。それに対し、ロシアサイドは対抗措置ともいえる核兵器の使用条件を示した「核ドクトリン(核抑止力の国家政策指針)の改定」を発表。いわゆる「核恫喝」のギアが一段上がったようだ。その後もウクライナの支援要因として、「米国防長官がウクライナに対人地雷を供与して使用を容認すると述べた」、「ロシア領内の軍事目標に対して英国製の長距離ミサイル・ストームシャドーを初めて発射」−−などの情報が聞かれた反面、ロシアはというとウクライナ軍が「大陸間弾道ミサイル(ICBM)を初めて発射した」と発表し、大いに物議を醸していた。ただし、ロシアは「新型の中距離弾道ミサイルを使用」と発表しており、ここまで公式にICBMの使用は認めていない。

対して後者は、次期米財務長官人事が難航しなかなか決まらないなか、人身売買疑惑が取り沙汰されていたゲーツ氏は米司法長官候補を辞退する旨を明らかにした。一部からは、「始動前にトランプ氏は人事でつまずいた」などと揶揄する報道も観測されている。そうしたなか、トランプ氏はこの週末、ついに次期財務長官人事を発表。著名投資家のベッセント氏を指名したうえで、「世界最高の国際投資家および地政学的、経済的戦略家の1人として尊敬されている」と絶賛していたようだ。

<< 今週の見通し >>

ドル/円相場の基本的なリスクは依然としてドル高方向か。しかし、15日高値156.76円を超えられなかっただけでなく、先週は一度も156円台に乗せることが出来なかった。日本の当局者による円安けん制発言なども予想されることで、ドルの上値はかなり重そうな雰囲気であることは間違いない。先週の動きをみると、若干広めではあるが153.28-155.89円というレンジを形成しつつあるようで、今週も基本的には上記レンジを中心にした一進一退をたどる可能性もある。
市場の関心は、依然として12月の日米金融政策発表に高い状況。今週も発表される米経済指標や要人発言に一喜一憂する展開が見込まれている。しかし、それとともに市場の変動要因として注目されているのがウクライナを中心とした地政学リスク。ロシアとウクライナの攻防がさらにエスカレートするようだと、再びリスク回避の動きが強まる展開などもありそうだ。また、それとは別に11月最終週にあたるうえ、途中に米サンクスギビングデーを迎えることで、様々な需給要因も場合によっては相場の波乱要因になりかねない。

テクニカルに見た場合、先週のドル/円相場は先で指摘したように153.28-155.89円というレンジを形成しており、今週はそんなレンジから果たしてどちらに抜けるのかをまずは注目したい。基本的なリスクがドル高方向に高いことを考えると、上抜けの公算の方が幾分高そうだが、底割れはサプライズで市場への影響が大きそう。移動平均の21日線が週末には154円近くまで上昇してくることが予想されることもあり、下方向に動くと思わぬレベルまで続落する危険性もある。

そうしたなか今週は、10月のPECデフレーターをはじめとする米経済指標が発表されるほか、今月上旬に実施されたFOMCの議事録要旨が公開される予定だ。後者については、0.25%の利下げが決定された会合だったが、先行きの見通し、つまり12月以降も継続的な利下げが見込まれるか否かを見極めたいとの向きが少なくない。

そんな今週のドル/円予想レンジは、152.50-156.00円。ドル高・円安については、先でも取り上げた先週一度もとどかなかった156円が最初の抵抗。抜ければ156.76円が視界内に。
対してドル安・円高方向は、移動平均の21日線もそれほど遠くない21日安値153.91円をめぐる攻防にまずは注目。しっかり下回ると下値余地が拡大しかねない。

基本は揉み合い、地政学リスクに依然要注意

ドル円日足


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