ユーロは短期もみあい局面(週報3月第一週)

週末のイベントとして、まずドイツのSPD党員投票結果で大連立が賛成多数で承認され、今月中旬には4期目のメルケル政権が誕生します。

ユーロは短期もみあい局面(週報3月第一週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、大いなるダマシの週となりました。木曜NY市場まではユーロ売りが広がり、1.2200を明確に下回ったことでテクニカルにはダブルトップの完成と見て、インターバンク等短期筋を中心に売り仕掛け、一時1.2155レベルの安値をつけましたが、トランプ大統領に追加関税発言によるドル安はユーロドルも急反騰させ週末には1.23台半ばと週初の水準まで戻して引けています。

週末の政治イベントも万が一を考えるとユーロ売りということもあって、短期筋は余儀なくストップアウトさせられたことになりますが、イベントを前にして随分と激しい買い戻しになったものだというのが正直なところです。

週末のイベントとして、まずドイツのSPD党員投票結果で大連立が賛成多数で承認され、今月中旬には4期目のメルケル政権が誕生します。この大連立はさすがにどんでん返しは無いだろうとの見方が大勢でしたが、今朝の早朝市場ではようやくドイツの政治空白が終わることを好感し、ユーロドルが1.2365レベルまで上伸後に週末クローズレベルへと押す動きとなりました。

もうひとつの注目イベントはスペインの総選挙ですが、こちらは東京時間7時に投票を締め切り、出口調査の結果では政党別では「5つの星運動」が第1党、またグループ別ではベルルスコーニ元首相のフォルツアを中心とした中道右派連合が最大派閥となっています。与党民主党を中心とする中道左派は予想通り伸び悩みとなっていますが、どの政党も過半数を取れず、選挙後は連立を模索するというドイツで見たような風景が繰り返されそうです。

イタリア総選挙は前回までは最大得票政党が自動的に過半数を与えられる仕組みでしたが今回の選挙から仕組みが変わり、執筆時点(5日13時半)のRAIイタリア(公共放送)のニュースサイトでは中道右派が下院で36.95%、上院で37.37%となっています。中道右派だけで4党のグループですが、ここに言われているのが現与党の民主党が加われば、過半数に行くという見方です。

民主党は下院で19.92%、上院で19.77%とたしかに過半数には届きますが、中道右派とは移民政策などで政策の一致が見られないため、連立模索にはしばらく時間がかかりそうであるとの予想です。それでも、事前予想に沿った動きとはなっていますので、最終的に獲得議席が決まれば、当面は連立の組み合わせ待ちということになるでしょう。

また今週のトピックスとしてはECB理事会とドラギ総裁の会見が8日にあります。現在のECBの金融政策は9月まで債券購入を続け、その間の金利変更無しというスタンスを明確にしていますので、その次の10月以降のどの段階で金利正常化(マイナス金利からゼロ金利へ)と動くのかを示唆するような文言があるかどうか、その後の総裁会見でハト派のドラギ総裁はどのような発言をするのかが注目材料です。

ここに至るまでのユーロの動きは結局下げが大きなダマシとなったことから、再び1.25台半ばを目指す動きとなるのか、あるいは米国の保護主義に持ち上げられたユーロの上げが失速するのか、ドイツとイタリアの政治イベントを経て早くも次の注目材料がECB理事会へと移っている感じもします。正直言って材料面では方向感がはっきりしません。

チャートはどうでしょうか。

今週の週間見通しと予想レンジ

*日足チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

長期的な上昇トレンドにまでは変化は無いものの、中期的には横方向の動きです。またチャートのパターンとしてもいったんは下抜け失敗したものの、ダブルトップのチャート型を否定するほどの買い戻しでもありません。現在の水準は年初来高値1.2555と先週安値1.2155の半値にあたる1.2355にほぼ一致しますし、その上61.8%戻しの1.2402水準までは下方向への動きにいつまた切り返してもおかしくない状態です。

テクニカルには先週安値と上記61.8%戻しとの間の中でもみあいの展開というイメージで考えています。今週は1.2200レベルをサポートに、1.2400と上下ともに限定的な値動きでしょうか。

今週のコラム

今週はノルウェークローネの話題です。

先週2日、ノルウェー中銀が物価目標を2.5%から2.0%に引き下げました。ここからが解釈が難しい部分ですが。物価目標引き下げがノルウェークローネの買いに繋がっています。これは物価目標を引き下げたことで、早期に目標に近づく、つまりの句表に近づけば利上げ環境が整う、という論法でノルウェークローネの買いになったとのことです。

また、ノルウェーにおける利上げ環境が整うことで、ECBを中心とした欧州全体の緩和局面が終わりに近づきつつあるとの見方もありますので、時には北欧通貨の動きも気にしてみるとよいかもしれません。本日はユーロとノルウェークローネのチャートで見てみましょう。日足チャートで上段がUSD/NOK、下段がEUR/USDです。

        上段USD/NOK、下段EUR/USD 日足

        上段USD/NOK、下段EUR/USD 日足

ドルに対する方向は異なるものの、ドルに対してだいたい似たような方向性で動きていることがわかります。今回のようにノルウェークローネがきっかけでユーロが底堅くなる可能性もありますし、ノルウェーの利上げタイミングがユーロやECBに与える影響も出て来ることがあるかもしれません。

色々と見る通貨が多くなりますが、何か会った時くらいは見る癖をつけておきたいものです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

3月5日(月)
**:** メイ首相ブレグジットについて議会演説
17:50 フランス2月サービス業PMI確報値
17:55 ドイツ2月サービス業PMI確報値
18:00 ユーロ圏2月サービス業PMI確報値
18:30 英国2月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏1月小売売上高
19:00 ギリシャ10〜12月期GDP確報値

3月6日(火)
 特になし

3月7日(水)
19:00 ユーロ圏10〜12月期GDP確報値
28:00 ベージュブック

3月8日(木)
16:00 ドイツ1月製造業受注
21:45 ECB理事会結果発表
22:30 ドラギECB総裁会見

3月9日(金)
15:30 黒田日銀総裁会見
16:00 ドイツ1月鉱工業生産
18:30 英国1月鉱工業生産
18:30 英国1月貿易収支
22:30 米国2月雇用統計

前週のユーロレンジ

       始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.2289 1.2355 1.2155 1.2318
ユーロ円  131.59 132.18 129.58 130.27

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

2月26日(月)
 週明けのユーロドルは、ドル円同様ドル売り先行からスタート、欧州市場序盤まではユーロ買いとなりました。海外市場に移ってからはそれまでのポジション調整も見られユーロ売りの動きとなりましたが、週末の政治イベントを前にして方向感が出にくい様子が続きました。

2月27日(火)
 ユーロドルはNY市場までは様子見が続いていましたが、パウエル新議長の発言を市場参加者はタカ派寄りと取りドル買いの動きとなり、ユーロは前週安値を下抜け安値1.2222レベルまで続落しました。しかし週末の政治イベントに対する懸念もあり引けにかけても目立った戻しは見られませんでした。

2月28日(水)
 ユーロドルは、2月安値の1.2205を下回る動きとなったことからテクニカルにダブルトップ完成し、週末の政治イベントを前に下落することとなりました。特にユーロ円はドル円とユーロドル双方が下げたことから130円大台目前の水準まで下げ安値圏での引けとなりました。

3月1日(木)
ユーロドルは前日からの売りが継続しNY市場前場までじり安、一時1.2155レベルまで水準を切り下げました。しかし、トランプ大統領が鉄鋼とアルミの関税に言及したことをきっかけにドルが全面安となり急反発、1.2273レベルまで上伸後に高値圏での引けとなりました。

3月2日(金)
前日NY市場流れを受けドル安の動きからユーロドルはじり高、NY市場まではドル円と歩調を合わせていました。しかし、引けにかけてもユーロ買いの動きは止まらず、米国対欧州の貿易戦争(トランプ大統領も貿易戦争と表現し、EUは対抗措置を考慮)の懸念がユーロ買い材料とされました。引けにかけてユーロは1.2336レベルまで上伸後に高値圏での引けとなりました。

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