ユーロドルもドル安へ(週報7月第4週)

週半ばまでは全体的なドル高の動きに沿ってユーロドルは1.1575レベルの安値をつけました。

ユーロドルもドル安へ(週報7月第4週)

今週の週間見通しと予想レンジ

先週のユーロドルは、ドル円とは週初こそやや異なった動きを見せたものの、週半ばまでは全体的なドル高の動きに沿ってユーロドルは1.1575レベルの安値をつけました。しかし、トランプ大統領がドル高に対して否定的な発言を繰り返したことで、ユーロ買いの動きへと進路を戻し、火曜につけた週間高値こそ超えなかったもののほぼ週を通しての高値圏での一週間を終わることとなりました。

ユーロドルは、4月中旬から5月末まで大きなユーロの下げトレンドを形成した後に、ここに至るまでは、高値を切り下げ、安値を切り上げる三角もちあいのチャートパターンとなっていました。7月11日にはドル円が大きくドル高に振れたことで、ユーロドルも三角もちあいを下抜けする典型的なコンティニュエイション(継続)パターンを完成し、再度ユーロ安トレンドに戻る可能性がありましたが、先週後半のトランプ大統領の発言で、下抜けが困難となり、逆にもみあいを上抜けする可能性が高まっているのが現在の状況です。

今週は経済指標の発表も多いのですが、もっとも注目されるのはECB理事会です。理事会メンバーの中にもタカ派、ハト派ともいるものの、どうしてもドラギ総裁の発言が目立つのは当然ですが、同総裁はメンバーの中でももっともハト派のスタンスを貫いているといえ、時々タカ派の理事会メンバーの話が出て来ると、市場参加者はユーロ買いに反応するという流れが続いていました。

既に年末までの債券購入継続は決まっていますので、今回の理事会ではサプライズは出て来ないと思いますが、来年夏以降における利上げの動きが早まる可能性があるとすれば、ユーロ買いで反応しやすいと思われますし、逆に総裁会見で相変わらずのハト派発言が出てユーロが売られるようであれば、今後のドル安を懸念した絶好の押し目買いの場として考えられる可能性があるでしょう。

トランプ大統領(米国)としては、これまで対中報復関税等、中国に対しては貿易戦争と言えるほどの強硬策を取ってきたわけですが、交渉中のNAFTAも含め、今後の対日交渉、対EU交渉と、おそらく保護主義の手を緩めることはないでしょう。週末のG20でも米国の保護主義に端を発する貿易摩擦に対しての懸念と、さらには将来的な成長下振れリスクにも言及しています。議長国のアルゼンチンとしては、米金利上昇によるドル高がペソ急落の要因のひとつでもあり、なりふり構わぬ米国第一主義による将来的なリスクも声明に入れたかったということもありそうです。

G20後の米国ムニューシン財務長官の発言自体は、先のG7に比べて対話的ではありますが、これまでトランプ大統領もムニューシン財務長官も発言が一貫していたという訳ではありませんし、今後どうなるかはまったく見当がつきません。どちらかと言えば先週末に出てきた、世界的な低金利とドル高に対するトランプ大統領の懸念が今後も前面に出やすいと考えていたほうがよいと思われます。そして、その中でEUという具体的な地域名が出てきたことはやはり要注意というのが週明けのイメージです。

今週の週間見通しと予想レンジ

(EUR/USD日足)
チャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

ピンクの三角もちあいを上抜けする可能性を考えると、点線で示したようなトリプルボトムの値動きとなる可能性が高まります。この場合のネックラインは6月高値の1.1852レベルと考えられますので、三角もちあいのレジスタンス上抜け、ネックライン上抜けとなった場合には、長期的なユーロ高方向への動きが始まる可能性があり、最初のターゲットとしては年初来高値と年初来安値の38.2%戻しとなる1.1908(赤のターゲット)を見ておくとよいでしょう。

今週に関しては、押し目買いの動きを考えて、1.1670レベルをサポートに1.1850レベルをレジスタンスとする値動きを考えておきます。

今週のコラム

先週末の唐突に出てきた印象も強いトランプ大統領のドル高懸念ですが、元々は短期的に強すぎるドルは米国にとって望ましくないという立場でいたわけなので、その点ではそれほど違和感はありません。

ただ、なぜ先週だったのかという点についてはG20に向けての牽制という面もあったかもしれませんが、全体的なドル高の危険水域にいた可能性も考えておく必要があります。次のドルインデックス日足チャートをご覧ください。

今週のコラム

このドルインデックスは、上場ドルインデックスですからユーロのウェイトが高くユーロ安とドル高との相関がかなり高いのですが、先週の発言はドルインデックスが95を超えたところでの発言です。目立つように95.00前後の水準にラインマーカーを引いてみましたが、昨年10〜11月の高値圏も95の水準であることがわかります。

以前はドルインデックスが100を超えると反転しやすいという話がよく出ていましたが、今は95を参考にしている可能性もあるのではないかと思わせるチャートです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

7月23日(月)
23:00 ユーロ圏7月消費者信頼感速報値
26:00 英中銀副総裁講演

7月24日(火)
15:45 フランス7月企業景況感
16:00 フランス7月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ7月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏7月製造業・サービス業PMI速報値

7月25日(水)
15:45 フランス6月PPI
17:00 ドイツ7月ifo企業景況感
**:** EU財務相会合
**:** 米欧首脳会談

7月26日(木)
15:00 ドイツ8月GFK消費者信頼感
15:45 フランス7月消費者信頼感
20:45 ECB理事会
21:30 ドラギECB総裁会見

7月27日(金)
14:30 フランス4〜6月期GDP速報値
15:00 英国6月住宅価格指数
21:30 米国4〜6月期GDP速報値

前週のユーロレンジ

      始値  高値  安値  終値

ユーロドル 1.1679 1.1745 1.1575 1.1721
ユーロ円  131.27 131.99 130.55 130.63

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

前週のユーロ

7月16日(月)
ユーロドルは週末の流れを受けアジア市場から底堅い展開でスタートしました。東京市場が休場となる中、特段材料も無くじり高傾向は辿ったものの値幅は50pips弱とのパウエルFRB議長の議会証言を前に積極的には動きにくい様子でした。

7月17日(火)
ユーロドルは、東京後場から欧州市場序盤までは実需買いにも支えられて、ユーロは対ドル、対円でじり高の展開を辿りました。しかしNY市場に入り年内残り2回の利上げも含めて米国経済が強いことに言及したパウエル議長の発言が伝わると一転ドル買いの動きとなり、ユーロドルは1.1650レベルまで水準を切り下げ、安値圏での引けとなりました。

7月18日(水)
ユーロドルは、前日のパウエル議長の発言余波もあって東京市場から上値の重たい展開となっていましたが、ユーロに対ドル、対円で実需と思われる売りが出たことからNY市場まで一本調子での下げとなりました。NYの朝方にはユーロドルが1.1602レベル、ユーロ円も130.88レベルの安値をつけましたが、引けにかけてはポジション調整の買い戻しも出ての引けとなりました。

7月19日(木)
ユーロドルはドル円同様東京市場ではもみあい、欧州市場からNY市場前場にかけてはドル高の動きから一時1.1575レベルの安値をつけました。しかし、トランプ大統領がドル高は我々に不利益を与えるとの発言をしたことで急速に1.1678まで反騰し、引けにかけては1.16台半ばへ押して引けとなりました。

7月20日(金)
ユーロドルはNY市場までもみあいを続けていましたが、前日に続いてトランプ大統領が中国とEUが通貨安誘導をしている旨の発言をしたことからユーロ高の動きとなり、引けにかけてはセントルイス連銀総裁がハト派発言を行ったことも重なって、1.1739レベルまでのユーロ高となりユーロ高値圏での週末クローズとなりました。

ディスクレーマー

アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る