ドル高転換はフェイクで終了(7月第4週)

わずか10日前にドル高へと転換したドル円はドル安方向へと軌道修正をする流れとなっています。

ドル高転換はフェイクで終了(7月第4週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、週前半はドル高基調を継続、パウエルFRB議長が議会証言でタカ派寄りの発言を行ったことも重なり、木曜には週間高値となる113.18レベルをつけました。しかし木曜に突然にトランプ大統領がドル高牽制発言を行い、翌日にも重ねてドル高に対する不快感を示したことで、わずか10日前にドル高へと転換したドル円はドル安方向へと軌道修正をする流れとなっています。

為替市場のファンダメンタルにおいて、もっとも強力なものは為替政策の変更、あるいはそれにつながる発言です。変動相場制移行後、もっとも凄まじかった政策変更は2015年のスイス中銀による介入放棄です。個人的にはそれまでの絶対介入も、突然の介入放棄も当局としてやってはいけないことだったと思いますが、それ以外にも為替の大きな変動は良くも悪くも当局による政策変更が原因です。

今回のトランプ大統領の発言は、そこまで強力なものではありませんが、先週水曜まで通商政策における主な武器は関税であり、為替水準がどうのという話はほとんど出てきませんでした。つまり、自由貿易下であるならば為替調整による不均衡是正も有力な選択肢となりますが、現在の保護主義を邁進する流れの中では、為替はあまり重要な政策では無くなった可能性が高いと私自身も考え、そのようなコメントをFX羅針盤でも書いたのです。

しかし、トランプ大統領の横暴ともいえる発言は、関税に加えて更には為替にまで言及する方向へと舵を切って来たようです。追加関税と為替調整の両輪での不均衡是正で11月の中間選挙に向けて一気に公約実現へ結びつけようという意思が感じられます。こうなると、先週水曜までのドル高見通しも大転換させる必要が出てきます。現段階ではまだ大きなドル安までをも見込む段階ではありませんが、少なくともドル高見通しは取り下げる必要があります。

今週の週間見通し

さらには、テクニカルにも大いなるダマシが出てしまったと考えられます。上の週足チャートをご覧ください。


左上から延びている長期レジスタンスライン(ピンク)を7月11日に上抜け、週足終値でも上抜けを確定させる強い上抜けのチャートとなりましたが、先週後半の2日連続の下げで再びレジスタンスの下側へと下げてきていることがわかります(黄色のラインマーカー)。

通常、こうした重要なラインは2期間連続(この場合、2週連続)で抜けると確定してそちら(今回は、ドル高)へ進むことになりますが、上記の通り先週後半の下げで取り消し、大いなるダマシとなってしまった可能性が高いと言えます。こうなるとドル売りで耐えてた向きはポジションがありませんし、買いで攻めていた向きもかなり切らされているものの、まだポジションは残っているという状況が想定されます。そうなると週明けもドルの上値は重くならざるを得ず、ドル買いの投げが見られる週前半が予想されるでしょう。

こうなると値幅観測も組み直すこととなりますが、先週高値113.18は2016年12月高値と2018年安値の38.2%戻しにあたる113.32(青のターゲット)ともほぼ重なり、高値としても今後重要な高値となってきそうです。現状は2018年安値104.69とこの高値との押しを計算することになりますが、38.2%押しが109.91、半値押しが108.91(それぞれピンクのターゲット)と、まずは110円の大台を伺う可能性が考えられます。

そして、今後の米国の為替に対する政策次第では、これらの水準に留まらず再び年初来安値を見に行く可能性をも考えなくてはならないでしょう。ただ、現状ではまだそこまでの急激な値動きは考える必要は無さそうです。

今週の週間見通し 2枚目の画像

次にいつもの日足チャートもご覧ください。

レジスタンス(ピンク)を上抜けた後に再び中へと戻してきている様子がよくわかります。現在は年初来安値から延ばしたサポートライン(青)が効いているはずですが、週明けも売りが先行していますので、ここを抜けて来ると先ほど示した38.2%押しの水準(ピンクのターゲット)がすぐにでも視野に入ってくる流れとなります。

今週はまだドル下落への転換が早い段階ということもあり、基本的には戻り売りしか出て来ないイメージです。再び過去の長期レジスタンスを持ち出しますが、111.50レベルをレジスタンスに、大台110.00をサポートとする週を見ておきます。

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2018年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

7月23日(月)
23:00 米国6月中古住宅販売件数
23:00 ユーロ圏7月消費者信頼感速報値
26:00 英中銀副総裁講演

7月24日(火)
15:45 フランス7月企業景況感
16:00 フランス7月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ7月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏7月製造業・サービス業PMI速報値
20:00 トルコ中銀政策金利発表
22:00 米国5月住宅価格指数
22:45 米国7月製造業・サービス業PMI速報値
23:00 米国7月リッチモンド連銀製造業景況指数

7月25日(水)
07:45 NZ6月貿易収支
07:45 NZ6月失業率
10:30 豪州4〜6月期CPI
15:45 フランス6月PPI
17:00 ドイツ7月ifo企業景況感
**:** EU財務相会合
23:00 米国6月新築住宅販売件数
23:30 週間原油在庫
**:** 米欧首脳会談

7月26日(木)
10:30 豪州4〜6月期輸入物価指数
15:00 ドイツ8月GFK消費者信頼感
15:45 フランス7月消費者信頼感
18:30 南ア6月PPI
20:45 ECB理事会
21:30 ドラギECB総裁会見
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:30 米国6月耐久財受注
**:** BRICSサミット(〜27日)

7月27日(金)
08:50 本邦7月東京区部CPI
10:30 豪州4〜6月期PPI
14:30 フランス4〜6月期GDP速報値
15:00 英国6月住宅価格指数
21:30 米国4〜6月期GDP速報値
23:00 米国7月ミシガン大消費者信頼感確報値

前週の主要レート(週間レンジ)

       始値    高値    安値    終値
ドル円   112.40   113.18   111.38   111.45
ユーロ円  131.27   131.99   130.55   130.63
ユーロドル 1.1679   1.1745   1.1575   1.1721
日経平均  22605.73  22949.32  22541.35  22697.88

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

7月16日(月)
週明け月曜は、東京市場が休場ということもありドル円は終日小動き、目立った材料も無く112円台前半で30銭強の狭い値幅での取引に終始しました。

7月17日(火)
ドル円は東京市場から欧州市場序盤にかけては112円台半ばのもみあいを続け動意薄の展開となりました。パウエルFRB議長の議会証言を前に動きにくいものの、タカ派発言を期待してドル買いで動く向きも見られました。議長発言は前回のFOMCに沿ったものでしたが、年内残り2回の利上げも含め米国経済が強いことに言及、ドルは一段高となり112.93レベルの高値をつけ高値圏でのクローズとなりました。

7月18日(水)
東京市場では、前日のパウエルFRB議長議会証言がタカ派寄りの発言となったことを受けドル買いが先行しました。後場には113.14レベルの高値をつけたものの勢い自体は弱く失速、海外市場ではユーロ円の売りに引っ張られる形で水準を下げ112円台後半へと押しそのまま高値もみあいの1日となりました。

7月19日(木)
東京市場では様子見気分が広がりあまり動きは見られなかったものの、欧州市場に入ると米金利上昇をきっかけにドル買いの動きとなりました。ドル円はNY市場朝方の経済指標が強かったことを受け一時113.18レベルの高値をつけましたが、113円台では積極的に買う向きも見られませんでした。ドルの上値が重たくなってきたところに、トランプ大統領が米金利上昇に対して好ましくない、ドル高は我々に不利益を与えるとの発言を行ったことでドルが急落、一時112.06レベルの安値をつけました。しかし、ホワイトハウスがFRBの独立性を尊重と述べたこともあり、引けにかけては112円台半ばまで戻して引けました。

7月20日(金)
 前日のトランプ大統領発言の影響からドルの上値は重たい流れは続いたものの、週末を前に積極的に売り仕掛ける向きも見られず、NY市場までは基本的にもみあいが続きました。しかし、NY朝方にトランプ大統領が改めて中国とEUが通貨安誘導をしている旨の発言をしたことからドル安の動きが再開、前日のドル安値を下回るとストップオーダーも巻き込みながら続落。セントルイス連銀総裁がハト派発言をしたことも手伝ってドル円は111.38レベルまで水準を下げ、安値圏での引けとなりました。

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