ドル円 感染拡大懸念からリスクオフが続きやすい(週報2月第1週)

先週のドル円は週初のイラク米国大使館へのロケット弾のヘッドラインには思いのほか反応が弱かった印象でした。

ドル円 感染拡大懸念からリスクオフが続きやすい(週報2月第1週)

ドル円 感染拡大懸念からリスクオフが続きやすい

今週の週間見通し

先週のドル円は週初のイラク米国大使館へのロケット弾のヘッドラインには思いのほか反応が弱かった印象でした。これまでは週初のギャップを埋めると更なるリスクオフの巻き返しが続くことが多かったのですが、逆に今回は上値の重さが目立ち、新型コロナウイルスの感染拡大懸念が徐々に広がっていきました。金曜にはNYダウが大幅安となる動きとともにドル円も108円台前半へと水準を下げました。

2002〜3年のSARSの時には初感染確認から終息宣言まで8か月かかりましたが、今回は人の移動に大幅な制限を加えることで、どの程度その期間を縮められるかというところだと思います。しかし、現時点では感染拡大がいつピークを迎えるのかがわからない状態ですし、旧正月の休みが終わっても中国内では武漢に留まらず多くの都市で、業務再開を遅らせる動きが出ています。


中国内での製造業の遅れは世界的に影響が出ますし、金曜のダウの下げはまさにそうした懸念を反映したものですが、問題はいつになったら感染拡大が留まるのかというところです。今週は各国のPMI改定値、米国では一連の雇用関連指標が発表されますが、もちろん予想からのズレによるある程度の振れはあるでしょうが、それ以上に日々公表される新型コロナウイルス関連のニュースに株式市場がどのように反応するのかを為替市場参加者も見ています。

旧正月明けで再開した中国の市場では空売り規制をしているものの大幅安となっていますので、最初のハードルはそれを見ての今夜の米国市場になるかと思います。東京時間の先物市場では金曜安値からやや反発してはいるものの、米国株式市場自体が昨年秋以降は調整らしい調整も無いままに史上最高値の更新を続ける流れだったことを考えると、今回の調整は長引く可能性もあります。

それ以外の材料も無視はできませんが、現時点では少なくともワクチン開発の目途が立つまではリスクオフにバイアスをかけ、株式市場も為替市場もリスクオフ状態が継続する前提で戻り売りのスタンスがよいでしょう。

また本日から米国ではいよいよ秋の大統領選に向けて選挙活動がスタートします。3日はアイオワ州での党員集会、11日にはニューハンプシャー州での予備選挙となります。現職のトランプ大統領は別として、民主党の場合はどちらの州でも負けた候補は指名レースに残れないとも言われているため、まずはアイオワ州で誰が勝利するのか、今後の指名レースを占う意味でも重要な一日となります。ただ、こちらも少なくとも11日のニューハンプシャー州の結果を見るまでは何とも言えないため、今週よりは来週のテーマとなります。

テクニカルな観点から、日足チャートも見てみましょう。

今週は少し拡大してありますが、引いてあるラインは先週と同じでピンクの上昇チャンネルは昨年8月安値を起点としたラインです。1月末時点でサポートラインの水準が1月安値と高値の78.6%(61.8%の平方根)押しとなる108.22とちょうど重なっていて、いったんは同水準で下げ止まっているのですが、戻しが弱いと改めて同水準、さらには年初来安値の107.65を視野に入れる展開になってくると考えられます。

今週はすべての金融市場が新型コロナウイルスの感染拡大状況に注目しますが、先行きが不透明な状況で戻りは限定的にならざるを得ないと見ています。また輸出を中心に実需筋のドル売りオーダーも下げてくると見ていますので、今週も上値の重たい流れが継続するとみて107.90レベルをサポートに、108.90レベルをレジスタンスとする一週間を見ておきます。

ドル円(日足)チャート

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2020年FOMCメンバー(ニューヨーク、フィラデルフィア、クリーブランド、ミネアポリス、ダラス)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

2月3日(月)
09:30 豪州12月住宅建設許可件数
10:45 中国1月MarkIt製造業PMI
16:00 トルコ1月CPI
16:00 トルコ1月製造業PMI
17:50 フランス1月製造業PMI改定値
17:55 ドイツ1月製造業PMI改定値
18:00 ユーロ圏1月製造業PMI改定値
18:15 デギンドスECB副総裁講演
18:30 英国1月製造業PMI改定値
23:45 米国1月製造業PMI改定値
24:00 米国1月ISM製造業景況指数
24:00 米国12月建設支出
30:00 (アトランタ連銀総裁講演)

2月4日(火)
06:45 NZ12月住宅建設許可件数
12:30 豪中銀政策金利発表
18:30 英国1月建設業PMI
19:00 ユーロ圏12月PPI
24:00 米国12月製造業新規受注
**:** 一般教書演説

2月5日(水)
06:45 NZ10〜12月期失業率
10:30 豪中銀総裁講演
10:45 中国1月MarkItサービス業PMI
17:10 デギンドスECB副総裁講演
17:50 フランス1月サービス業PMI改定値
17:55 ドイツ1月サービス業PMI改定値
18:00 ユーロ圏1月サービス業PMI改定値
18:30 英国1月サービス業PMI改定値
19:00 ユーロ圏12月小売売上高
22:15 米国1月ADP全国雇用者数
22:30 米国12月貿易収支
22:45 米国1月サービス業PMI改定値
24:00 米国1月ISM非製造業景況指数
24:30 週間原油在庫統計

2月6日(木)
**:** NZ市場休場
09:30 豪州12月貿易収支、小売売上高
16:00 ドイツ12月製造業新規受注
17:00 ラガルドECB総裁講演
21:30 米国1月チャレンジャー人員削減予定件数
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国10〜12月期単位労働コスト速報値
23:00 フランス中銀総裁講演
23:15 ダラス連銀総裁講演

2月7日(金)
09:30 豪中銀四半期金融政策報告書公表
**:** 中国12月貿易収支
16:00 ドイツ12月貿易収支、鉱工業生産
16:45 フランス12月貿易収支、鉱工業生産
22:30 米国1月雇用統計
24:00 米国12月卸売売上高・在庫

2月8日(土)
 **:** アイルランド総選挙

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

1月27日(月)
週明けの東京市場では、新型コロナウイルスの感染拡大懸念に加えて、イラクの米国大使館にロケット弾が着弾したとのヘッドラインに反応しリスクオフが強まってのスタートを切りました。しかし、早朝安値108.73レベルまでで、その後のドル円は109円を挟んでの様子見が続きました。

1月28日(火)
ドル円は前日からの比較的底堅かった流れを受け東京市場ではじり高となっていましたが、新型コロナウイルス感染者拡大の懸念が拭いきれずに欧州市場序盤には株安とともに円買いの動きとなりました。その後は108.76レベルまで水準を下げたものの前日安値は下抜けず、NY市場では株式市場が買い戻される流れとともに前週末安値に近づいての引けとなりました。






1月29日(水)
ドル円は早朝に週初のギャップを埋めたものの、米国発中国着の便を停止する可能性とのヘッドラインにすぐに売りで反応、その後話しは否定されたものの感染拡大が続いている新型コロナウイルスの影響からじり安の流れとなりました。海外市場に移りFOMCまでは買い戻しが目立ったものの日中高値は超えられず、FOMCでサプライズが無いことを確認した後は上値の重たい株価とともに安値圏での引けとなりましたが値幅は狭く30銭に満たないレンジでした。

1月30日(木)
ドル円はNY市場まではもみあいを続けていましたが、ポンド買いによるドル売りの動きに加え、米国10?12月期GDPにおいて個人消費が予想よりも弱かったこともドル売りに作用しました。NY後場には108.57レベルまで水準を切り下げましたが、引けにかけてダウが急速に買い戻される動きとともに東京市場の水準に戻して引けました。

1月31日(金)
ドル円は東京前場では前日NY市場での引けに向けての買い戻しが株価とともに目立つ流れでしたが、後場以降は徐々に上値が重くなりNYの朝方には東京早朝の水準へと押していました。NY市場では新型コロナウイルスの感染拡大に加え旧正月後も中国便の運休や中国内の企業活動再開の遅れが嫌気されダウが大幅安、それに連れてドル円も108.31レベルまで水準を下げ、安値圏でもみあいのままの週末クローズとなりました。

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