ドル円見通し 目先の高値を見て調整売りが入りやすい(週報12月3週)

年末に向けて動きが出てくるとすれば、ドル安・円高方向へとこれまでの8月からの上げに対しての調整売りである可能性が高そうです。

ドル円見通し 目先の高値を見て調整売りが入りやすい(週報12月3週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、イベントを前にして木曜NY市場まで108円台後半の狭いレンジでの小動きを続けました。FOMC、ECBと金融政策イベントは予想通りの現状維持でサプライズも無かったのですが、木曜のトランプ大統領による米中合意間近の発言で上振れ、金曜の英国総選挙で保守党大勝によるポンド円の買いで一段高となったものの12月高値にはわずかに届かず、その後中国側から懸念込みでの合意発表、トランプ大統領の弾劾訴追可決と、週末の引けにかけては調整のドル売りも入りました。

ここに至るまでのドル円は米中通商協議合意期待による株高がリスクオン相場を形成してきたわけですが、既に今回の合意事項について市場参加者は織り込み済みで、今回発表された第1段階の後にも協議が控えていること、また今回の合意の中心となる米国から中国への輸出倍増が今後2年間かけて行われるという部分に中国側が懸念付きで合意している点を考えると、長期的には予定通りではないといった発言が米国側から出てくる可能性があります。

米国は倍増、中国側は具体的な数値目標は示さずと、どうも今回の合意も両国の微妙な食い違いは気になるところですし、昨日のテレビ放送でライトハイザーUSTR代表は、最終的にうまくいくかどうかは中国側次第と、実行されることへの期待を示したというのも不思議な話で、トランプ大統領と中国副首相との部分合意発表時に、米国側と中国側での表現の温度差を今回も見ているような既視感があります。

米国では来年は選挙イヤーとなりますので、トランプ大統領も共和党も実績を大げさに示す傾向があると見ていた方がよいですし、米中合意と並行してトランプ大統領の弾劾訴追も可決されていることを考えると、米国政権中枢部としては、米中通商協議での成果をより大きく見せる必要があったと個人的には考えています。

これで金融政策、通商政策と大きなイベントは終了し、ここからは実際にどうなるのかを見守っていく段階となります。金融政策は少なくともあと半年は変更は無いと考えることが自然でしょうから、選挙に向けて民主党からの突き上げ、また米中協議署名後の中国側の動き、このあたりが見えてくるまでは、これまでのリスクオン相場に対して利食いを含めて調整が入りやすい年末相場に向かいそうなイメージを持っています。

テクニカルには日足チャートをご覧ください。

チャートを見るとわかりますが、先週木曜の高値は12月2日の高値に2銭届かず調整の売りに押されています。先週の安値圏は8月安値と12月高値の23.6%押しと重なっていて、本当に強い相場であれば調整が終わったと見ることもできますが、気になるのは画面中央から右に下がってきているラインです。これは昨年11月高値から引いたレジスタンスラインで、12月は110円の大台を割り込んで109円台後半を下がってきているのですが、先週の高値は同ラインで反落していることがわかります。

短期的には高値を見たことで現状は下押ししやすく、材料次第では23.6%押しの次のターゲットとなる38.2%押しにあたる107.71を視野に入れる展開も考えられます。すでに、今年も残すところ半月で変動相場制移行後の最低値幅を大幅更新は間違いの無いところですが、年末に向けて動きが出てくるとすれば、ドル安・円高方向へとこれまでの8月からの上げに対しての調整売りである可能性が高そうです。

今週はあまり大きな動きは期待できませんが、やや上値の重たい展開を考え、108.70レベルをサポートに109.70レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の週間見通し

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

12月16日(月)
11:00 中国11月鉱工業生産、小売売上高
16:00 トルコ9月失業率
17:15 フランス12月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ12月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏12月製造業・サービス業PMI速報値
18:30 英国12月製造業・サービス業PMI速報値
22:00 デギンドスECB副総裁講演
22:30 米国12月NY連銀製造業景況指数
23:45 米国12月製造業・サービス業PMI速報値
24:00 米国12月NAHB住宅市場指数

12月17日(火)
09:00 NZ12月企業信頼感
09:30 豪中銀理事会議事要旨公表
18:00 フィンランド中銀総裁講演
18:30 英国11月失業率
19:00 ユーロ圏10月貿易収支
22:00 (ダラス連銀総裁講演)
22:30 米国11月住宅着工・建築許可件数
23:15 米国11月鉱工業生産、設備稼働率
26:30 NY連銀総裁講演
26:30 ボストン連銀総裁講演

12月18日(水)
08:50 本邦11月貿易収支(通関)
**:** 日銀会合(〜19日)
16:00 ドイツ11月PPI
17:30 ラガルドECB総裁講演
18:00 ドイツ12月ifo企業景況感
18:30 英国11月CPI・PPI
19:00 ユーロ圏11月CPI
19:00 ユーロ圏10月建設支出
19:15 ブレイナードFRB理事講演
20:15 クーレECB理事講演
24:30 週間原油在庫統計
26:40 シカゴ連銀総裁講演
30:45 NZ7〜9月期GDP
30:45 NZ11月貿易収支
**:** 英中銀MPC(〜19日)

12月19日(木)
09:30 豪州11月失業率
**:** 日銀会合結果発表
15:30 黒田日銀総裁会見
16:45 フランス12月企業景況感
18:30 英国11月小売売上高
21:00 英中銀MPC結果・議事要旨公表
22:30 米国新規失業保険申請件数
22:30 米国12月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:30 米国7〜9月期経常収支
24:00 米国11月景気先行指数
24:00 米国11月中古住宅販売件数

12月20日(金)
08:30 本邦11月CPI
09:01 英国12月GFK消費者信頼感
16:00 ドイツ1月GFK消費者信頼感
16:45 フランス11月PPI
18:00 ユーロ圏10月経常収支
18:30 英国7〜9月期GDP改定値
22:30 米国7〜9月期GDP確報値
24:00 米国11月個人所得・消費支出
24;00 米国12月ミシガン大消費者信頼感
24:00 ユーロ圏12月消費者信頼感速報値

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

12月9日(月)
ドル円は東京市場ではまったく動かず。欧州市場に入りポンドに買いが入る動きに引っ張られ欧州通貨買いがドル売りとなりドル円も下げる動きとはなったものの値幅は伴いませんでした。NY市場に入りユーロが下げに転じるとドル円も買い戻し、東京朝方の水準に戻した後はもみあいのまま引けました。

12月10日(火)
ドル円はNY市場まではまったく動きがありませんでしたが、NY市場前場に週末の対中制裁関税発動が見送られるとの観測記事に反応し、リスクオンの円売りが入りました。その後は引けまで高値圏でのもみあいを続けました。

12月11日(水)
ドル円はNY市場までは動きは無く、NY市場でも前場はFOMCの結果待ちとなりました。FRBのスタンスは前回から変化は見られなかったものの、不確実性という文言が消えたことでごくわずかにタカ派寄りとも思えましたが、為替市場ではユーロドルがリードする形でドル売りの動きとなりドル円も連れ安。108.46レベルの安値はつけたものの週間安値はトライできず、レンジ自体は広がらないままでした。

12月12日(木)
ドル円は株価とともに緩やかな上昇となっていましたが、NY市場が始まる前には調整の売りも見られ静かな値動きとなっていました。NY前場にトランプ大統領が中国との合意が近づいているとの発言に反応し株式市場は大幅高、ドル円もNY後場には109.45レベルの高値をつけた後に若干押しての引けとなりました。

12月13日(金)
東京早朝に英国総選挙の出口調査の結果が発表され、与党保守党が大きく議席を伸ばし単独過半数が確実な状況となったことを受けポンドが急騰。直後こそドル円はユーロ買いからドル売りとなったものの、株式市場がリスクオンに動いたことからすぐに切り返す動きとなりました。その後はじり高の展開を辿り、欧州市場前場には109.71レベルの週間高値をつけましたが、NY市場に入り中国側から農産物の輸入目標に懸念を示したことから反落、NY昼前には109.21レベルの安値をつけました。その後、米中通商協議についての文書で合意との続報が入り、引けにかけてはやや戻したものの、大統領訴追のニュースも重なって上値は重たいままでの引けとなりました。

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