ユーロ週報 選挙で高値を付け押しが入りやすい(12月第3週)

離脱後の英国は超長期の凋落への道を歩むリスクを抱えることとなります。

ユーロ週報 選挙で高値を付け押しが入りやすい(12月第3週)

今週の週間見通しと予想レンジ

英国総選挙の確定結果は、ほぼ出口調査通りで保守党が67議席増の365議席と過半数の326議席を大きく上回るいっぽうで、野党第1党の労働党は40議席減の203議席と大きく議席を減らし、コービン党首は辞任することとなりました。労働党の掲げた離脱再交渉は支持を得られず、離脱撤回を主張した自由民主党も議席半減の11議席に留まったことから英国民としては、早期の合意ある離脱と本来やるべき政治への回帰を迫ったと見ることが出来るでしょう。ただ、来年1月に合意ある離脱は確定となっても、その後の離脱に向けての細かな取り決めやEU以外の各国との協議も待っていますので、お祭り騒ぎの後は現実に引き戻されること、また既に英国からの撤退や移転を決めている企業が多いことを考えると、離脱後の英国は超長期の凋落への道を歩むリスクを抱えることとなります。

そうした意味では、ポンドは対ドルでも対円でも目先の高値を先週金曜につけてしまった可能性も高く、仮にポンドが下げればユーロにも一定の下げの影響がありそうですし、ここからはユーロ圏の景気を筆頭に、本来のファンダメンタルを見ていく流れへと市場参加者の視点は転じてくることとなるでしょう。ただ、既に12月も中旬、ここからクリスマスまでは欧米市場ではクリスマスムードとなり、相場の動きも限られてきます。本格的な動きはポンドもユーロも年明け以降ということとなりそうです。

さて、今週ですが欧州では本日のPMI速報値から始まり、金曜の主要国消費者信頼感まで連日のように経済指標が発表されます。また木曜には日銀とともに英中銀のMPCも行われ、合意ある離脱後に関して何らかの見通しが示される可能性もあり、念の為注意でしょうか。これまで欧州の経済指標はドイツを筆頭に冴えない数字が目立っていましたが、最近では良い数字も見受けられ、今週もドイツの数字を中心に細かな上下の振れや、動きのきっかけとなるのでしょうが、どちらかというとこれまでのトレンドから見て、悪い数字、つまりユーロが下げる方向の動きに注意したいところです。

テクニカルな観点から日足チャートをご覧ください。

今週の週間見通しと予想レンジ

チャートを見ると、先週高値は10・11月の高値は上抜けているものの、長い上ヒゲでのトライとなっていて足型自体が上値の重さを感じさせますが、10月安値からの上昇N波動(ピンク)の78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションが1.1217となっていること、また6月高値と10月安値の61.8%戻しも1.1209と、双方が1.12をやや超えたところにあり、先週高値は誤差の範囲内と見ることが妥当でしょう。

すると、まずは11月安値と先週高値の押しを考えることとなりますが、38.2%押しが1.1116、半値押しは1.1090、61.8%押しが1.1065です。後者2つの水準が示す1.10台後半は短期的な調整の下げとして考えておくとよい水準です。いっぽうで上値は既に高値は付けたと考えられ、1.11台後半で売りが出やすくなってきそうです。今週は1.1075レベルをサポートに、1.1175レベルをレジスタンスとするレンジを見ておきます。

今週のコラム

先週はポンドドルを見ましたが「年初来高値をトライしてから反落」との見方には変化がありません。今週はポンド円を見ておきましょう。日足チャートをご覧ください。

今週のコラム

ポンド円はポンドドルと異なり、3月につけた年初来高値148.87(上の赤の水平線)をトライしきれずに反落しています。テクニカルには10月中旬から12月初めまで1カ月半に渡って続いたもみあいを上抜けたこともあっての上昇でしたが、この上昇もいったん終わり、ここからは下げの調整を考えたいところです。

そうなると、開票前日の木曜の高値(ピンクの矢印)がひとつの目安となり、すぐにでは無いにせよ144円台に向けての調整の売りは出てもおかしくはないというイメージです。

今週の予定

今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。

12月16日(月)
17:15 フランス12月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 ドイツ12月製造業・サービス業PMI速報値
18:00 ユーロ圏12月製造業・サービス業PMI速報値
18:30 英国12月製造業・サービス業PMI速報値
22:00 デギンドスECB副総裁講演

12月17日(火)
18:00 フィンランド中銀総裁講演
18:30 英国11月失業率
19:00 ユーロ圏10月貿易収支

12月18日(水)
16:00 ドイツ11月PPI
17:30 ラガルドECB総裁講演
18:00 ドイツ12月ifo企業景況感
18:30 英国11月CPI・PPI
19:00 ユーロ圏11月CPI
19:00 ユーロ圏10月建設支出
20:15 クーレECB理事講演
**:** 英中銀MPC(〜19日)

12月19日(木)
**:** 日銀会合結果発表
16:45 フランス12月企業景況感
18:30 英国11月小売売上高
21:00 英中銀MPC結果・議事要旨公表

12月20日(金)
09:01 英国12月GFK消費者信頼感
16:00 ドイツ1月GFK消費者信頼感
16:45 フランス11月PPI
18:00 ユーロ圏10月経常収支
18:30 英国7〜9月期GDP改定値
24:00 ユーロ圏12月消費者信頼感速報値

前週のユーロレンジ

前週のユーロレンジ

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

12月9日(月)
ユーロドルは基本的に小動きの一日となり東京市場では動かず。欧州市場に入りポンドが買われた動きからユーロにも買いが入りましたが、NY市場以降は欧州株安の動きとともに調整の売りが目立ち、東京朝方の水準に押した後に若干戻して引けました。

12月10日(火)
ユーロドルは欧州市場までは動きが無かったものの、欧州市場に入り発表された経済指標が強かったことをきっかけにユーロ買いの動きとなりました。NY市場以降もユーロ買いの動きは緩やかに続き、結果としてユーロ円の上昇も目立つ一日となりました。

12月11日(水)
ユーロドルはFOMCまでは動きが鈍く若干上値が重たい程度の推移が続きました。FOMC後にユーロドルは1.1145レベルまで上昇し、先週高値を上抜ける動きとなりましたが、背景には当面FRBは現行の緩和スタンスを継続することも確認できたというドル売りがあった様子でした。

12月12日(木)
ユーロドルは、NY市場までは小動き、ECB理事会も無風通過となりました。NY市場に入りトランプ大統領の中国との合意が近いとの発言はユーロ円での買いとなったため、初動はユーロドルでも買いとなりましたが、その後は全般的なドル高の動きに沿ってユーロ売りが目立っての引けとなりました。

12月13日(金)
ユーロドルは、英国選挙の出口調査で与党過半数が確実となりポンド高の動きとともに東京市場朝方には1.1200レベルの高値をつけました。しかし、それ以上は買いが続かずじり安の展開を辿り、NY市場が始まるまでは1.11台後半でのもみあいとなっていました。NY市場では、中国側から農産物輸入目標への懸念発言が出たことによるドル円の下げとともにユーロ円が下げ、ユーロドルもその動きに引っ張られて東京朝方の安値圏に押しての引けとなりました。

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