ドル円 安値更新前の足踏み、上値は重い(週報8月第3週)

各金融市場を見ている限り完全にリスクオフの相場になって来ていると考えられます。

ドル円 安値更新前の足踏み、上値は重い(週報8月第3週)

今週の週間見通し

先週のドル円は、対中制裁関税第4弾の一部12月延期を受けたNYダウの急騰とその後の大幅な反落と株式市場は大荒れ、そして米金利も10年債が2年債の金利を下回る逆イールドを2007年以来12年ぶりにつけたり、ドル建ての金価格も1535ドルまで上昇したりと、各金融市場を見ている限り完全にリスクオフの相場になって来ていると考えられます。

年初に懸念していた2019年はリスクオフ相場という動き(1月29日に書いた年間予想)が想定よりもだいぶ遅れてやってきた印象なのですが、何故遅れてやってきたのかを考えると今後の見通しに少しは役に立ちそうです。


まず、米国株が想定以上に強く史上最高値を更新する展開となったことで、少なくとも株式市場には楽観が広がっていたことです。これは、FRBが利下げへと舵を切ることで株式相場にとっては好材料という部分を先取りした結果と言えますが、つまり株式市場は前回の利下げも9月以降の利下げも既に織り込んでいると見てよいでしょう。

しかし、先週の動きを見ていると短期債のベンチマークの2年債と長期債のベンチマーク10年債の利回りが逆転、現状では一時的な現象ではあるものの、明らかに先行きの景気減速懸念が長期金利をより大きく下げている結果です。更に超長期債のベンチマークである30年債に至っては史上最低利回りを更新していますが、短期債と長期債の利回り逆転が前回あったのは2007年、リーマンショックの1年前で当時はサブプライム問題がその後のリーマンショックへと続いていきました。


利回りの逆転は1年以内に景気後退局面を迎えるというのが過去の米国経済で常に見られてきた現象であり、今回は米国主導の貿易摩擦激化が、中国や主要国の景気減速に繋がり、そして世界的な金融緩和への逆戻りが、安全資産となる米国債や金への資金移動を着実にもたらしていると考えてよいでしょう。近いところでも昨年8月の金価格の長期的トレンドが上昇へ転換した数か月後に米国株が急落する動きがありましたが、先週のような動きが今後も定期的に出てくる可能性が高く、米中通商協議合意というヘッドラインを見るまでは、常にリスクオフの火は消えないと思います。

さて、短期的にはなかなか悩ましい動きではありますが、105円の買いと107円の売りとに挟まれて今週はそのレンジの中でやや上の方でのレンジ継続という見方で良いと思います。また中長期的に年初来安値を更新しに行くであろうという見方にも変化はありません。
今週は週前半は材料に乏しいのですが、週半ば以降は閣僚級の日米通商協議、前回FOMC議事録の公表、世界主要中銀総裁が集まるジャクソンホール(国際経済シンポジウム)開催と続きます。特に、ジャクソンホールにおけるパウエルFRB議長講演が最大の注目ですが、市場参加者が思う以上のハト派発言も期待しにくく、意外と動けずのままで終わる可能性もあります。

テクニカルにはどうでしょうか。

テクニカルには長期的なドル安トレンドの中で現在は踊り場に位置していると考えられます。8月1日高値109.32と12日安値105.05の半値戻しが107.18となり、今週の戻しの限界点と考えられます。一方、下値は105.05までやや距離があり、今週の新安値は難しそうですが、ベースにリスクオフの警戒感がある以上105円台前半までは余裕を見ておいたほうがよさそうです。

今週は年初来安値を試す前の足踏み、105.25レベルをサポートに107.00レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

今週の週間見通し

ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2019年FOMCメンバー(ニューヨーク、シカゴ、ボストン、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。

8月19日(月)
08:50 本邦7月貿易統計
17:00 ユーロ圏6月経常収支
18:00 ユーロ圏7月CPI


8月20日(火)
10:30 豪中銀理事会議事要旨公表
15:00 ドイツ7月PPI
18:00 ユーロ圏6月建設支出


8月21(水)
17:00 南ア7月CPI
23:00 米国7月中古住宅販売件数
23:30 週間原油在庫統計
27:00 FOMC議事録公表
**:** 日米通商協議(〜22日)

8月22日(木)
16:15 フランス8月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ8月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏8月製造業・サービス業PMI速報値
20:30 ECB理事会議事録公表
21:30 米国新規失業保険申請件数
22:45 米国8月製造業・サービス業PMI速報値
23:00 米国7月景気先行指数
23:00 ユーロ圏8月消費者信頼感速報値
**:** ジャクソンホール(〜24日)

8月23日(金)
07:45 NZ4〜6月期小売売上高
08:30 本邦7月CPI
23:00 パウエルFRB議長講演
23:00 米国7月陳地区住宅販売件数

24日(土)
**:** G7サミット(〜26日)

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時~NY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

8月12日(月)
ドル円は東京市場が休場となる中でアジア時間は上値が重たいながらも静かな取引が続いていました。欧州市場序盤に香港のデモ隊が空港を占拠し全便欠航となることからリスクオフの動きとなり、株安と円高の動きに動意づき、一時105.05レベルの安値を付けましたが、同時にユーロ円の買い戻しも入り、その後は105円台前半での小動きが続きました。


8月13日(火)
ドル円は東京市場では株価に沿って買いが先行した後に売り戻され上値の重たい地合いとなっていました。欧州市場の昼頃に前日安値と並ぶ105.05レベルをつけたものの105円を試しきれず若干買い戻しが入ってのNY市場入り。NY市場に入りすぐにUSTRが9月の対中制裁関税第4弾の一部を12月15日に延期と発表、中国側も協議再開に言及したためダウが急騰、ドル円は107円間近まで買い上げられ、引けにかけてはやや押しての引けとなりました。

8月14日(水)
ドル円は東京市場から前日の株高の動きが止まり下げへ転じる動きに沿ってじり安の展開となりました。海外市場に移ると米国債の利回りが一段と低下し、短期債とのスプレッドがネガティブとなるなど、先行きの景気減速懸念も広がる中、改めてリスクオフによる米国債や金へ資金が戻る動きが見られました。NY市場後場にはダウが800ドルを超える下げを演じドル円も105.62レベルまで下押し、引けにかけてはやや戻しての引けとなりました。


8月15日(木)
ドル円は株式市場大引けまではほとんど動きが見られず様子見姿勢が強まっていましたが、15時35分頃に突然1円近い急上昇を示しました。ニュースがあったわけでもなく、大口の買いが出たら売りオーダーが少なく、ストップオーダーを巻き込んだ結果でした。しかし、すぐに元の水準へと押し、逆に106円台半ば以降のドル売りを増やした結果となりました。海外市場に移ってからは106円を挟んで方向感が無い一日のまま引けました。

8月16日(金)
ドル円は盛り上がりに欠ける週末相場となりました。週を通して上も下も見た感はあるもののユーロドルの上値の重さに引っ張られて週末前の買い戻しが終日続いた印象でした。

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