FX新レバレッジ規制(1)
今朝の日経1面を見て驚かれた方も多いと思いますが、FX取引に新たなレバレッジ規制を検討との記事が出ています。電子版では昨夜のうちに出ていたので、既に各所で大騒ぎとなっているのですが、関係者も知らなかったという方が多く、今回の日経の記事は金融庁による日経を使ったリーク記事であることが濃厚だと思われます。
1面の記事によると、金融庁は、
・レバレッジを現行の25倍から10倍程度に下げる案を検討
・想定を超える損失を抱えるリスクが高まっていて、日本発の市場混乱を防ぐ
・金融先物取引業協会と協議を開始
・来年にも実施する可能性
とあります。また、昨夜先行していた電子版の記事には『1985年以降でみると、主要10通貨の平均の変動率は11.4%。元本がなくなるレバレッジは約9倍だ。検討の軸に据える「10倍程度」という案はこうした過去の変動率から計算したもの』とのことで、想定を超える損失=元本が無くなり追証が発生することを過去のヒストリカルボラティリティを参考にして決めたい様子です。
実は、この計算方法は既に法人のレバレッジ計算に導入されていて、今年のはじめから法人口座のレバレッジが50倍程度以下へと下げられました。昨年までの100倍から比べると半分のレバレッジで、毎週計算されています。主要通貨をいくつかピックアップすると以下のようになっています。(FX業者ごとに金融先物取引業協会の定める倍率以下で自由に決められる)
ドル円 44.4倍
ユーロドル 57.1倍
ポンド円 40.0倍
豪ドル円 44.4倍
ランド円 20.0倍
こうして見ると、通貨の変動率を参考にしながら通貨ペアによってレバレッジが異なり、現状では最小で5.0倍、最大で57.1倍となっていて、これは週ごとに変化しています。
個人向けにも同じような発想で行くならば一律で10倍程度という決め方は少々乱暴だと思いますが、昨年までの法人口座100倍、個人口座25倍という比率から、ざっくりと10倍程度という案が始めにありき、という印象です。
そもそも、法人口座と個人口座の昨年までの4倍、現在の約2倍自体が意味がある数字なのかとなると非常にあいまいです。私が考えるレバレッジのありかたについては次回に譲るとして、もしこの新レバレッジ規制が導入されたら何が起きるのか、で今回は閉めておきましょう。
*国内FX市場の空洞化
もともと個人のレバレッジも当初は100倍でした。そこから50倍、25倍と半分ずつに下げられてきましたが、その間に実効性の無い金商法規定から、多くの個人口座が海外へと流出しました。海外では引き続き100倍、200倍といったレバレッジが提示されていて、少額で取引を行いたい個人の受け皿になっています。
*想定を超えるリスクは無くならない
100年に一度の金融危機という言葉はこの100年にいったい何度出たのでしょうか?少なくともここ20年だけでもアジア通貨危機、リーマンショック、スイス中銀ショック、といった大変動、チャイナショック、ブレグジット、米国大統領選といった中変動まで入れたらキリが無いほどです。特にスイス中銀ショックのようなことは変動相場制移行後の最大変動率で交通事故のようなものとしか言えません。
そもそも当局の態度がこうした危機を起こしているのではないのか、という質問に違います、と言い切れる当局がどのくらいあるのか、今回の規制案が仮に実施に移されたとしても結局は次の大変動では逃げられない個人投資家が出て来ることは歴史が示しているとしか言えません。
*第1部のまとめ
実際に市場経験のある人から見たら、今回の規制案は百害あって一利無し!日本のFX市場を空洞化させたい官僚がいるとは信じたくありませんが、自らの仕事を作るための規制案だとしたらとんでもない間違いです。
個人的にも怒っているので、少し冷静になって第2部に繋げます。
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