FX新レバレッジ規制(2)
昨日のFX新レバレッジ規制案は各所で大騒ぎになりました。FX業者も顧客からの問い合わせに追われていた様子で、当局へ問い合わせ後に説明するといった対応が中心だったようですが、それによると規制案の話が出ていること(昨日の記事)は事実であるものの、金融庁の独断でレバレッジを下げることは無く、規制案については業界関係者(金融先物取引業協会、FX業者、有識者といったところか)からの意見を聞いた上で進めるようです。
しかし、こうした話が出ているという理由のひとつに「想定を超える損失を抱えるリスクが高まっていて、日本発の市場混乱を防ぐ」とありましたが、想定を超える日本の個人投資家の円売り(外貨買い)があり、今後円高に動く何かの材料を当局が握っていて、規制を強めないと日本発の市場混乱が起きる懸念がある、なんてことはまさか無いよなと妄想してしまいそうです。
ただ、昨日も書いた通り今後も大きな市場の変動は起こりますので、レバレッジで規制するのでなく、各個人投資家が自分で証拠金残高と相場変動の可能性(ヒストリカルボラティリティによる最大変動リスク)からポジションサイズを決めるというのが本来です。仮にドル円で1万ドルのポジション、レバレッジ25倍だと約5万円あれば取引可能ですが、維持証拠金を考えなければ、5円の変動で証拠金が消えます。しかし、50万円あれば50円の変動まで耐えられ、さすがにそこまでは無いということもわかります。
最も重要な点は個人投資家がFXをはじめとする証拠金取引のリスクを十分に理解した上で、自身の金融資産からいくらをFX取引に回すのか、また最悪の事態を想定してレバレッジいっぱいというのではなく、自分でレバレッジをコントロールすることが重要です。日本の当局としては、もっと個人投資家に投資教育をすることこそが重要なのですが、なんでも上からの規制というのはなかなか変わらなそうです。
それでも、今回の規制がいかに理論的にもおかしいか、ということは以下の例でもわかります。
まず、同じ金融庁が監督官庁である金融商品に株価指数先物があり、多くの投資家が取引を行っています。特に225ミニは取引単位が通常の225先物(ラージ)の10分の1であることから、FX同様に個人投資家が多く取引を行っています。この225ミニでは、指数の100倍の金額に対して、1枚あたりの取引証拠金が現在6万円(業者によりこの最低証拠金額の100%、120%と決められている)ですから、日経平均株価2万円として100倍の200万円の取引で考えると約33倍となります。
次に監督官庁が経産省となる商品先物から、同じく個人に人気のあるスポットゴールド100(限月制でなくFX同様にスポットの取引、取引単位もミニで100グラム単位と通常の10分の1)があります。スポットゴールド100はTOCOM(東京商品取引所)で取引が行われていて、1枚(金100グラムの取引)あたりの証拠金は10200円です。現在の取引価格4650円×100倍=465,000円ですから、レバレッジは約45倍です。
皆さんもご存知の通り、日経平均株価の変動率はドル円よりも大きいことが多いですし、
金価格も変動が少ないからレバレッジが高いわけではありません。こうした同種の金融商品のレバレッジがおよそ30〜45倍とFXの現在のレバレッジ25倍と比較してはるかに高レバレッジです。そして、株価指数先物も商品先物もFXよりも長い歴史を持っていて、このレバレッジが定められているということは金融庁も敬意を払うべきです。今回の規制案が金融商品全体の縮小につながるようなことだけは絶対に避けなくてはなりません。
また金融取引の先進国として米国の証拠金取引の規制(欧州に比べてかなり厳しい)を見ると、一瞬日本の法人口座のレバレッジと見誤ったかと思うくらい似通ったレバレッジとなっています。昨日上げましたが、主要通貨でだいたい50倍前後のレバレッジです。米国の先物取引はCME(シカゴマーカンタイル取引所)をはじめ監督官庁がCFTC(商品先物取引委員会)という組織に一本化され、常に厳しく監視されています。個人的にはもっとも参考にすべき仕組みであると思います。
国内の類似商品、先物先進国の米国、どれを見ても10倍というレバレッジには何ら根拠が無く、昨日も書いたように最初に10倍という数字を適当に決めて、その方向に持っていこうというものとしか正直思えません。少なくとも225ミニやスポットゴールド100との違いは当局に説明義務があるように思います。
昨日今日と今回の新レバレッジ規制案について思うところを書きましたが、もし話が進むようであれば大きな声で反対する立場で行きます。
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