ドル円 日銀利上げ思惑で円高への流れが確定か(週報12月第1週)

先週のドル円は週を通してドル安・円高が進行した一週間となりました。

ドル円 日銀利上げ思惑で円高への流れが確定か(週報12月第1週)

日銀利上げ思惑で円高への流れが確定か

〇先週のドル円、週を通してドル安・円高が進行、149円台半ばまで水準を切り下げる
〇日銀追加利上げ思惑の急浮上が目先の円買い材料、金利市場では50%以上が年内利上げを視野に
〇本邦長期債利回りが短期的には最大の注目材料
〇9月安値と11月高値との半値押し148.15の水準を試しに行く可能性が高まる
〇今週は148.50レベルをサポート、150.80レベルをレジスタンスとする流れを見る

今週の週間見通し

先週のドル円は週を通してドル安・円高が進行した一週間となりました。週前半は財務長官に指名されたベッセント氏が財政面でタカ派な意見を述べていることから米国債上昇(金利低下)の動きから週明けはややギャップダウンしてのドル売りが先行しましたが、それでも154円前後での動きが続きました。その後、あらためて関税問題が懸念材料として持ち上がったことから、ドル円ではドル売りの動きが強まり、水曜には150円台半ばまで調整が進みました。

木曜こそ感謝祭で米国が祝日であったことから買い戻しが入りましたが、金曜は東京早朝の東京区部CPIが予想よりも高かったこと、感謝祭の間で参加者が少なく薄いNY市場で植田日銀総裁が年内にも利上げに動くと思わせる発言を行ったことから円高が進み149円台半ばまで水準を切り下げ若干戻しての週末クローズとなりました。

米国の関税懸念は実際に就任してからの話ですが、公約でもあり関税引き上げが中国をはじめ世界的な景気悪化懸念につながるリスクがあります。しかし、それ以上に急浮上してきた日銀の追加利上げ思惑が目先の円買い材料となってきました。日銀会合は19日と再来週の話ですが、11月半ばまではまったく視野に入っていなかった話です。しかし、先週初あたりから年内利上げの可能性が高まってきたという話が急速に広がり、金利市場では50%以上が年内利上げを視野に入れ始める動きとなっていました。

そこに東京区部とはいえ2.6%と想定以上に高いCPIが発表され、それを受けた発言と思われる植田日銀総裁の追加利上げの時期が近づいているとの発言がダメ押しになったという印象です。日本の長期債の利回りを見ても10年債は1.08%と年初来最高水準になってきましたが、2年債利回りに至っては0.63%と7月利上げ後の底から0.37%も上昇して来ています。

日銀利上げ思惑で円高への流れが確定か

今後日銀会合当日までにどのような動きを示すのか、短期的には最大の注目材料になってきたと言えるでしょう。

テクニカルにも大きく動きが出てきました。いつもの日足チャートをご覧ください。

既に11月高値が中期的な高値となり現状は9月安値と11月高値との38.2%押し150.18を下抜け、半値押し148.15を視野に入れる展開となってきました。150円台半ばから後半にかけては戻り売りが出やすく、また日銀会合に向けての思惑次第では今週中にも半値押しの水準を試しに行く可能性が高まってきたと言えます。

今週は148.50レベルをサポートに150.80レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。

日銀利上げ思惑で円高への流れが確定か 2枚目の画像

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。
また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。

今週の予定

(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。

12月2日(月)
10:45 中国11月MarkIt製造業PMI
16:00 英国11月住宅価格
17:50 フランス11月製造業PMI
17:55 ドイツ11月製造業PMI
18:00 ユーロ圏11月製造業PMI
18:30 英国11月製造業PMI
19:00 ユーロ圏10月失業率
23:45 米国11月製造業PMI
24:00 米国11月ISM製造業景況指数 ☆
24:00 米国10月建設支出
29:15 ウォラーFRB理事講演 ☆
30:30 NY連銀総裁講演 ☆

12月3日(火)
09:01 英国11月小売売上高
24:00 米国10月JOLTS求人件数 ☆
26:35 クーグラーFRB理事講演 ☆
29:45 (シカゴ連銀総裁講演)

12月4日(水)
10:45 中国11月MarkItサービス業PMI
17:50 フランス11月サービス業PMI
17:55 ドイツ11月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏11月サービス業PMI
18:00 英中銀総裁講演 ☆
18:30 英国11月サービス業PMI
19:00 ユーロ圏10月PPI ☆
22:15 米国11月ADP全国雇用者数 ☆
22:45 (セントルイス連銀総裁講演)
23:45 米国11月サービス業PMI
24:00 米国11月ISM非製造業景況指数 ☆
24:00 米国10月製造業新規受注
24:30 週間原油在庫統計
27:45 パウエルFRB議長講演 ☆
28:00 ベージュブック ☆

12月5日(木)
16:00 ドイツ10月製造業新規受注
16:45 フランス10月鉱工業生産
18:30 英国11月建設業PMI
19:00 ユーロ圏10月小売売上高
21:30 米国11月チャレンジャー人員削減予定数
22:30 米国新規失業保険申請数 ☆
22:30 米国10月貿易収支 ☆

12月6日(金)
16:00 ドイツ10月鉱工業生産、貿易収支
16:45 フランス10月貿易収支
19:00 ユーロ圏7〜9月期GDP確報値
22:30 米国11月雇用統計☆
23:15 ボウマンFRB理事講演 ☆
24:00 米国12月ミシガン大消費者信頼感速報値 ☆
26:00 クリーブランド連銀総裁講演 ☆
27:00 サンフランシスコ連銀総裁講演 ☆

前週の主要レート(週間レンジ)

前週の主要レート(週間レンジ)

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。

先週の概況

11月25日(月)
週明けのドル円はギャップダウンでのドル売りが先行しましたが、これは先週末に発表された次期財務長官に対してトランプ氏が不均衡是正の政策を支持していると発言したことがきっかけとなりました。その後は買い戻しも入ったものの週末終値近辺では上値が重く、154円水準をもみあいの中心として方向感がはっきりしないままに終わりました。

11月26日(火)
ドル円は前日のトランプ大統領による中国と北米(カナダ、メキシコ)への関税発言が尾を引いて終日ドルがじり安の展開をたどりました。NY市場では一時152.98レベルまで水準を下げ安値圏での引けとなりました。FOMC議事録は特にサプライズもなく目立った動きにはつながらず、若干ドル売りに動いた程度でした。

11月27日(水)
ドル円はトランプ大統領就任後の関税強化懸念が続き、日経平均とともに円買い戻しの動きが続きました。米金利低下と月末実需のドル売りの動きも見られ、NY市場昼前にはストップも巻き込んで一時150.45レベルの安値をつけましたが、米国市場休場を控えて引けにかけては151円台を回復しました。

11月28日(木)
前日下げた調整から日経平均株価が早朝から大きく上昇する動きに沿ってドル円も上昇、その後も底堅い動きが続き欧州市場では151.95レベルの高値をつけました。しかし152円台では戻り売りを考える向きが多かったこと、米国市場が休場となることもあって151円台半ばへと押してもみあいのまま引けました。

11月29日(金)
東京朝方に発表された東京区部CPIが予想よりも高かったことを受け燻り続けている日銀の12月利上げの思惑が強まり、150円の大台を割り込んでのスタートとなりました。NY昼過ぎまでは150円近辺でのもみあいを続けていましたが、植田日銀総裁が追加利上げの時期が近づいていると発言したことが伝わり、149.47レベルの安値をつけやや戻して引けました。


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