ドル高リスク再燃だが短期的には行き過ぎか
〇先週のドル円、週間安値141.65示現後は右肩上がり
〇良好な米雇用統計を受け、週末には149円台を示現
〇本邦要人発言による日銀の利上げ先送り観測、ドル買い・円売りを強く支援
〇米大幅利下げ観測後退による米長期金利上昇もドル買いの背景
〇1週間で7円超の上昇、調整の動きにも注意
〇今週は米重要指標、FOMC議事録要旨、日本の選挙関連、中東情勢に要注目
〇ドル高・円安、先週高値149.01、149.40が最初のターゲット
〇ドル安・円高方向、147-148円の動きに注目
〇今週の予想レンジ:146.50-150.50
<< 先週の回顧 >>
先週のドル/円相場はドルが大幅高。週末には一時149円台と、約1ヵ月半ぶりの高値を示現している。
前週末は、その前日の金曜日に決定した自民党・石破新総裁による閣僚人事が次々と発覚、次期衆院選の日程と絡め話題に。また、イスラエル軍の攻撃によりヒズボラの最高指導者ナスララ師が殺害されたことが明らかになった。
そうした状況下、ドル/円は142.20円レベルで寄り付いたのち、週間安値の141.65円を示現。当初ドルは冴えなかったが、目先ボトムを付けたのちはおおむね右肩上がりの展開だった。5円近くも値を戻し、前週末高値の146.49円を超えてもなおドル高は止まらず。週末には上昇がさらに加速すると、ついに149円台をワンタッチ。そのままNYクローズでも、ドルは高値圏を維持し越週している。
一方、週間を通して注視されていた材料は、「日本の金融政策」と「米金融政策」について。
前者は、自民党総裁選で「積極財政派」かつ「早急な利上げ反対派」の高市早苗氏が敗れ、石破茂氏がその座についた。直後に「高市ショック」と言われる、為替市場で3円を超える円急騰を演じたことはご承知のとおり。そのため石破首相は、自身に染み付いた「利上げ賛成派」といった見方の払拭に努めており、加えて先週は赤沢再生相から「石破首相が利上げに前向きとの見方は必ずしも正しくない」とのフォロー発言も聞かれていた。また、石破氏自身も植田日銀総裁と面談後、改めて「追加利上げをするような環境にあるとは考えていない」とコメントし、思惑の完全払拭を図っている。さらに、これら政府サイドの動きを受けてか、タカ派で知られる野口日銀審議委員から「緩和的な金融環境を忍耐強く維持し続けることが重要」と弱気に傾斜した発言が聞かれるなど、日銀の利上げ先送り観測が週間を通してドル買い・円売りを強く支援していたことは間違いない。
対して後者は、週明けに発表された9月のシカゴ購買部協会景気指数、同ダラス連銀製造業活動指数はともに予想を上回る内容。また、そののちパウエルFRB議長から「利下げを急いでいるとは感じていない」とのコメントが発せられ、市場で期待されていた米大幅利下げ観測が後退したようだ。為替市場におけるドル買い戻しの一因に。さらに、注目されていた9月の米雇用統計が週末に発表されたが、こちらが予想を大きく上回る好数字となり、先の見方を強く後押し。11月FOMCでの大幅利下げ観測が後退するとともに、米長期金利上昇が上昇し、先で指摘したようにドル/円は一時1ヵ月半ぶりの149円台を示現している。
<< 今週の見通し >>
先週のドル/円相場は、予想以上の戻りを見せた。ドルの上値は9月27日の自民党総裁選を受けた「高市ショック」の起点である146円半ばが精々、と見込んでいたのだが、何と週末には一時149円台。週間安値から見ると、1週間で上昇は7円を超えている。ドル高方向の展望が広がり、リスクもドル高方向にバイアスがかかりそうだ。8月1日以来の150円台乗せトライも否定できない。ただ、先で指摘したように先週だけで7円もドル高・円安が進行しており、短期的にはやり過ぎの感もある。調整の動きにも一応要注意。
市場の関心事項のひとつが依然として日米金融政策に集まるなか、前段で取り上げたように「日本の早急な利上げは予想しにくくなった」反面、米国は「大幅利下げ期待が遠のいた」ようだ。つまり、金融政策的にはドル高傾向がいましばらく続くことになるだろう。ただ、引き続き発表される米経済指標の内容や、9月に開催された米FOMCの議事録要旨公開にも注意を要する。一方、中東情勢が依然として気になるほか、日本の衆院が週央9日に解散する見込みで、その後は本格的な選挙戦モードへと突入しそう。それらの関連ニュースを受け、金融市場が一喜一憂する可能性もある。
テクニカルに見た場合、ドル/円相場は先週末におよそ1ヵ月半ぶりの149円台を示現。短期的にはやや行き過ぎだが、そうした動きを受けドル高方向のリスクが高まったことは間違いない。そんなドルの上値メドはまず8月15日高値の149.40円。超えると150円トライがみえてくる。
なお、年初来高値161.96円を起点にした下げ幅のフィボナッチによると、38.2%戻しはすでに超えており、次は50%戻しがターゲット。レベルは150.75-80円となる。
そうしたなか今週は、9月の消費者物価指数や10月のミシガン大消費者信頼感指数などの重要な米経済指標が発表される予定となっている。先で取り上げたように、先週発表された米指標は雇用統計を中心に、良好な内容のものが多かったが今週は果たしてどうなるか。また、9月に開催された米FOMCの議事録要旨公開を警戒している向きもある。
そんな今週のドル/円予想レンジは、146.50-150.50円。ドル高・円安については、先週高値149.01円そして149.40円が最初のターゲット。それを抜ければ、いよいよ150円トライとなりそうだ。
対してドル安・円高方向は、先週末のドル高進行が早過ぎて、空白地帯となっている147-148円の動きに注目。つまり、148円レベルを割り込むとそのまま1円程度あっさり下落しても不思議はない。一度下げ始めたら、意外と早い気もしている。
ドル円日足
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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