戻り高値は146円台半ば、その後は改めて下げか
〇先週のドル円、月曜に安値143.45レベルつけるも目先の材料出尽くし感で買い戻し目立つ週
〇月末実需とポジション調整による買い戻しも出る中で、米PCE予想通りで米金利一段高、146円台で引け
〇今週、水曜のJOLTS、木曜のADP、金曜の雇用統計と米国の雇用関連の数字続く
〇年内3回のFOMC、市場参加者見通しは利下げ4回(1.0%)以上が7割程度、ハト派な状況に変化なし
〇リセッション入りの指標サーム・ルール、今回も初期段階にあり7〜9月期以降の各種経済データに注目
〇8/15高値と8/26安値の半値戻し146.40でドル買い戻しの流れはいったん終わりに近い
〇下も見たという流れの後で145円割れでは引き続き買いが出るか
〇ドル安トレンドの調整局面終了とみて、144.50レベルをサポート、146.50レベルをレジスタンスとする
今週の週間見通し
先週のドル円は、ジャクソンホールでのパウエル議長発言を受け、月曜東京朝方に安値143.45レベルをつけましたが、既に米国雇用者数の下方修正あたりからドル売りが進み目先の材料が出尽くしたこと、また週を通して日経平均株価も米金利も底堅く推移したこともあり、上下しながらも買い戻しが目立つ週となりました。週末に向けては月末実需とポジション調整による買い戻しも出る中で、米国PCEが予想通りだったことによる安心感から米金利が一段高、ドル円も146円台に乗せての引けとなりました。
今週は月初で米国の雇用関連の数字が続きます。先々週に雇用者数の大幅下方修正があったことで、市場参加者も弱い数字に対する耐性はついているようですが、水曜のJOLTS、木曜のADP、そして金曜の雇用統計と仮に上振れして良い数字が出たとしても、9月FOMCでの0.25%利下げという流れに変化は無いでしょう。問題は予想以上に悪い数字だった場合にどうかですが、他に悪材料が重ならなければ初回利下げは0.25%で始まる流れかと思います。
ただ、9月18日FOMCの次は11月7日と大統領選後まで間が空きますので、その間の展開次第では11月に0.5%という流れはありそうです。12月18日のFOMCも含め年内3回のFOMCにおける市場参加者の見通しは4回(1.0%)以上の利下げが7割程度と3回利下げよりもかなりハト派な見通しとなっている状況には変化はありません。
金曜の雇用統計についてのコンセンサスも見ておきましょう。非農業部門雇用者数は16.5万人と前回の11.4万人よりは増加していますが、先々週発表され下方修正された雇用者数の平均(17.4万人)よりも少なく雇用の鈍化は進んでいるイメージです。いっぽうで失業率は4.2%と前回の4.3%よりも改善する予想となっていますが、果たしてどうなるでしょうか。
春以降、この失業率に関してはサーム・ルールがよく話題に上ります。サーム・ルールはFRBのエコノミストだったサーム氏が示したルールで、失業率の直近3カ月の平均値が過去12カ月の最低値から0.5%以上乖離するとリセッション入りというもので、過去はかなりあてはまっていること、また直近で実際に0.5%の乖離となったこともあり、過去55年間の状況をグラフ化してみました。
赤のラインが過去12カ月の最低値、青のラインが直近3カ月の平均値、水色背景がリセッション時期(FREDのデータから)となります。たしかに過去55年間の状況を見ると全てにおいてリセッション入りしていますが、傾向としてはサーム・ルールが発動した初期段階でリセッション入りしている様子が見て取れます。今回もまさにその初期段階にあるといえ、今後どうなるのか7〜9月期以降の各種経済データが気になるところです。これでリセッション入りを回避できる流れになれば、後にパウエルFRB議長はすぐれた議長だったという評価になるのではないでしょうか。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
8月15日高値と26日安値の半値戻しが146.40となっていて、ここまでのドル買い戻しの流れはいったん終わりに近いと見ています。ただ、下も見たという流れの後ですから、145円割れでは引き続き買いが出てくるでしょう。
今週は長期ドル安トレンドの中で調整局面が終わったと考え、144.50レベルをサポートに、146.50レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
9月2日(月)
**:** NY市場休場
10:45 中国8月MarkIt製造業PMI
16:50 フランス8月製造業PMI
16:55 ドイツ8月製造業PMI
17:00 ユーロ圏8月製造業PMI
17:30 英国8月製造業PMI
9月3日(火)
08:01 英国8月小売売上高
21:45 ブリーデン英中銀副総裁講演
22:45 米国8月製造業PMI
23:00 米国8月ISM製造業景況指数 ☆
23:00 米国7月建設支出
9月4日(水)
10:45 中国8月MarkItサービス業PMI
16:50 フランス8月サービス業PMI
16:55 ドイツ8月サービス業PMI
17:00 ユーロ圏8月サービス業PMI
17:30 英国8月サービス業PMI
18:00 ユーロ圏7月PPI ☆
20:00 フランス中銀総裁講演 ☆
21:30 米国7月貿易収支
22:45 カナダ中銀政策金利発表
23:00 米国7月JOLTS求人件数 ☆
23:00 米国7月製造業新規受注
27:00 ベージュブック ☆
9月5日(木)
11:00 豪中銀総裁講演
15:00 ドイツ7月製造業新規受注
17:30 英国8月建設業PMI
18:00 ユーロ圏7月小売売上高
20:30 米国8月チャレンジャー人員削減数
21:15 米国8月ADP全国雇用者数 ☆
21:30 米国4〜6月期非農業部門労働生産性改定値
21:30 米国新規失業保険申請数 ☆
22:45 米国8月サービス業PMI
23:00 米国8月ISM非製造業景況指数 ☆
24:00 週間原油在庫統計
9月6日(金)
15:00 ドイツ7月鉱工業生産、貿易収支
15:45 フランス7月鉱工業生産、貿易収支
18:00 ユーロ圏4〜6月期GDP確報値
21:30 米国8月雇用統計 ☆
21:45 NY連銀総裁講演
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
8月26日(月)
週明けのドル円はジャクソンホールでのパウエル議長講演後のドル売りの動きが続き、仲値前後には143.44レベルの安値をつけました。その後は株価が堅調な動きとなったこと、また米金利も下げ止まり上昇に転じたこともあって買い戻しの動きが目立ち、NY後場には144.65レベルの高値をつけて引けました。
8月27日(火)
ドル円は日経平均株価に沿った動きの一日となりました。東京市場では朝方から株高の動きとともに買い戻しの動きが継続、欧州市場序盤には145円台乗せの動きとなりました。しかし、145円台では戻り売りを考えていた参加者はかなり多かったと見られ145.17レベルから反落、海外市場では日経先物が下げる動きとともに、NY引け間際には143.91レベルまで下げ安値引けとなりました。
8月28日(水)
NY市場までドル円は前日の下げに対する調整と日経平均株価が上昇する動きに沿った動きが続きました。NY朝方に145.03レベルの高値をつけましたが前日高値はトライしきれず、145円台には戻り売りのオーダーもあったことから、引けにかけては144円台後半でもみあいのまま引けました。
8月29日(木)
ドル円はNY市場までは144円台半ばを中心としたもみあいが続き方向感がはっきりしない展開となっていました。NY市場に入り発表された米国GDP改定値が予想よりも強かったことから米金利上昇、ドル買いとなり一時145.56レベルの高値をつけました。しかし145円台では戻り売りに動く向きも多く、引けにかけては144円台後半へと押しました。
8月30日(金)
欧州市場序盤までは144円台後半でのもみあいが続きましたが、日経平均株価が強く欧州市場入りとともに前日高値を上抜けると円安地合いが強まりました。NY市場ではPCEは予想通りだったものの、9月の大幅利下げ思惑が遠のいたとの見方から米金利上昇、ドル高の動きとなり146.25レベルまで買われ高値引けとなりました。
ディスクレーマー
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