介入を試して一度は下げる動きか
〇先週のドル円、米国の緩和後退思惑を主要因にドル買い進む
〇中東情勢緊迫から米長期金利低下と株安で一時的に円が買われるも、下がったところでドル買い根強い
〇今週金曜の日銀会合後の総裁会見は要注目
〇利上げと介入が同時の可能性低いが、変動幅だけ拡大はあり得るため木曜夕方以降の日経電子版には注意
〇円売りポジションも先週の約16.2万枚から約16.6万枚へと拡大。限界に近いサイズか
〇155円台トライしても介入無しという場合、次の介入ラインとして160円を視野に入れる動きも
〇今週は152.00レベルをサポートに、155.00レベルをレジスタンスとする週を見る
今週の週間見通し
先週のドル円は週初に153円近辺からスタートし、米国の緩和後退思惑を主要因にドル買いが進む動きとなりました。中東情勢の緊迫感から安全資産である米国債が買われ、長期金利の低下と株安の動きから一時的に円が買われる場面も見られましたが、下がったところではドル買いという動きも根強く、既に154円割れではドル買いオーダーが並ぶ状況で一週間を終えることとなりました。
円安の動きを止めるには介入しかないという見方が広がる中で、日米韓の財務相会合で通貨安問題が議題となったものの、G20では為替の話は出ずと、通貨安問題は日本を含め一部の国の問題という見方も出てきました。ただ、植田日銀総裁は円安が続くことでインフレが強まる場合には追加利上げもという話はしていますので、今週金曜の日銀会合後の総裁会見は注目されることになるでしょう。
日米の金融政策において、年末時点では日銀は1〜2回の利上げを行うでしょうし、FRBは1〜3回の利下げを行うと考えられ、仮にどちらも1回ということになると金利差縮小幅は合わせて0.5%に満たないということになり、その場合には為替市場の調整も最低限のものとなりそうですが、それでもこのまま155円、160円と円安が一気に進むことは無いと見ています。
介入に関しても鈴木財務相も神田財務官も最近の円安に対しての危機感がやや後退しているようにも感じられ、果たして155円が介入ラインなのかどうか、実際に試してみようという動きが出て来ないと調整らしい調整は入らないということになるでしょう。もし155円台をトライしても介入無しという場合には、すぐにでは無いにせよ次の介入ラインとして160円を視野に入れる動きが出てきます。
このあたりは財務省関係者もよくわかっているはずなので、介入が出る可能性のほうが高いでしょう。ただ、その場合でも介入で下げたところは買いという動きにつながるであろうことも容易に想像がつきます。このあたりもわかっているだけに介入のタイミングを計っているというところでしょう。さすがに日銀の利上げと介入が今週金曜に同時に出てくるとは思えませんが、0〜0.1%を0〜0.25%と変動幅だけを拡大させるということはありうるかもしれません。木曜の夕方以降の日経電子版に注意しておきましょう。
またポジションも円売りが先週の約16.2万枚から約16.6万枚へと拡大しています。既に
2007年6月以来17年ぶりの高水準となっていることもあり、思ったほどの増加ではありませんが、かなり限界に近いサイズと見ても良さそうです。
テクニカルにはいつもの日足チャートをご覧ください。
先週見た通りですが、昨年12月安値を起点に2月高値までの上げ、3月安値までの押しを3点として、現在の上げをフィボナッチ・エクスパンションで求めると78.6%(61.8%の平方根)エクスパンションが154.83となり、ほぼ現在の高値圏と一致しています。155円も誤差と言えますから、今週は怖いもの見たさで介入を試しに行く動きで一度は155円をつける可能性がありそうです。
いっぽうで下値は介入が無ければ先週金曜の安値となった153円台半ばがいいところで、介入があれば152円という水準でしょうか。まだ介入は無さそうですが、誰かが155円を試し介入が入るというシナリオ、あるいは日銀の結果に関係なくそのタイミングでの介入というサプライズも想定し、後者の152円を考えておきます。
今週は152.00レベルをサポートに、155.00レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
4月22日(月)
16:30 フランス中銀総裁講演 ☆
23:00 ユーロ圏消費者信頼感速報値
24:30 ラガルドECB総裁講演 ☆
4月23日(火)
16:15 フランス4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
16:30 ドイツ4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:00 ユーロ圏4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 英国4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
22:45 米国4月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
23:00 米国4月リッチモンド連銀製造業景況指数 ☆
23:00 米国3月新築住宅販売
4月24日(水)
10:30 豪州3月CPI ☆
16:35 チポネーロECB理事講演 ☆
17:00 ドイツ4月企業景況感
21:30 米国3月耐久財受注
23:00 シュナーベルECB理事講演 ☆
23:30 週間原油在庫統計
4月25日(木)
**:** 豪州、NZ市場休場
15:00 ドイツ5月消費者信頼感
15:45 フランス4月企業景況感
21:30 米国1〜3月期GDP速報値 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国3月卸売在庫
23:00 米国3月住宅販売保留件数
26:30 イタリア中銀総裁講演 ☆
4月26日(金)
08:01 英国4月消費者信頼感
08:30 本邦4月東京区部CPI ☆
10:30 豪州1〜3月期PPI
12時頃 日銀会合結果発表、経済物価展望 ☆
15:30 植田日銀総裁会見 ☆
15:45 フランス4月消費者信頼感
21:30 米国3月個人所得・消費支出 ☆
23:00 米国4月ミシガン大消費者信頼感
前週の主要レート(週間レンジ)
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
4月15日(月)
週明けのドル円は先週末海外市場とは逆に株高と円安の動きでスタートしました。しかし、鈴木財務相や神田財務官による牽制発言が続いていることやイスラエルによるイランへの報復攻撃の可能性など調整が入る材料にも事欠かない神経質な展開でしたが、強い米国経済指標を受け米金利上昇が続いたことで一時154.45レベルまで円安が進行、154円台での引けとなりました。
4月16日(火)
ドル円は連日堅調な値動きが続き、米金利上昇とともにドル円は円安、NY市場ではパウエル議長、ジェファーソン副議長がインフレが収まらないことから緩和が後退するであろうことを示唆したことで、154.79レベルまで高値を更新しました。しかし、NY前場には一時的に154円を割り込む動きも見られ、155円でドル売りが並んでいたこと、また介入警戒感もあっての急落を招きました。
4月17日(水)
ドル円はNY昼頃までは高値圏でのもみあいが続きました。日米韓財務相会合が開催され、その場で最近の円安、ウォン安の懸念を共有し、緊密に協議するとの共同声明をきっかけに154.16レベルまで下押し後に若干戻して引けました。
4月18日(木)
ドル円は東京市場ではやや上値が重い展開となり、昼前に153.95レベルの安値をつけたもののそこまで。既に154円割れでドル買いを考える向きも出てきている様子で、すぐに154円台へと戻しました。海外市場に移ってからは米金利が上昇する動きの中で、NY市場では強めの経済指標に反応し154.68レベルまで買われ高値圏での引けとなりました。
4月19日(金)
東京前場にイスラエルによるイラン攻撃のヘッドラインが入り、安全資産の米国債が買われ米金利低下と株安を背景とした円買いの動きが強まりました。一時153.59レベルまで下げたもののすぐに買い戻しも入り、イラン側がドローンを撃墜したのみでイスラエルからの攻撃は無かったとしたことで落ち着きを取り戻しました。イラン側も報復攻撃はしないとしたことから株式市場、為替市場ともほぼ行って来い、東京朝方の水準に戻しての週末クローズとなりました。
注:ポイント要約は編集部
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オーダー/ポジション状況
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