ドル円、基本もみ合いを予想するもやや底堅い展開か(週報3月第3週)
〇先週ドル円、週初の146円台半ばから週末には149円台に乗せる動き
〇米インフレ関連指標好調を受けた米金利上昇により、前週の巻き返しの一週間に
〇今週は3/19 日銀と豪中銀、3/20 FOMC、3/21 英中銀とスイス中銀会合開催
〇会合後の植田総裁会見、今後の利上げに関するヒントがないか注目
〇FOMC、インフレ懸念で年内利下げ3回から2回に減る可能性も、その場合米金利上昇とドル高に注意
〇今週は、147.80レベルをサポートに、149.80レベルをレジスタンスとする週をみる
今週の週間見通し
先週のドル円は今週の日銀会合でマイナス金利解除が決まることをほぼ織り込み、前週に大きく円高が進んだことの巻き戻しも加わって、週初の146円台半ばから週末には149円台に乗せる動きを見せました。日銀のマイナス金利解除が織り込み済みと見られる中で、米国のインフレ関連指標であるCPIとPPIのどちらも予想よりも強かったことを受け、米金利が上昇したことで前週の巻き返しの一週間になったと言えます。
今週は主要中銀では、19日に日銀と豪中銀、20日にFOMC、21日に英中銀とスイス中銀と続きます。ここでは円相場に影響を与える日銀会合とFOMCについて見て行きます。19日の日銀会合はここ2週間でマイナス金利解除とイールドカーブコントロール(YCC)の撤廃に動くというコンセンサスが形成され、先々週はそれを材料に円高が進み、先週は日銀の動きを織り込み済みとした上で、米国のインフレ指標が予想よりも強く米金利上昇がドル高の動きとなりました。
日銀のマイナス金利解除の思惑は債券利回りでも短期の2年債利回りにおいて顕著で、1月中旬にはマイナス圏にあったものが、3月11日には0.199%とこの間に0.2%を超える上昇を見せました。長期債でも利回りは上昇していますが、例えば10年債利回りは昨年11月ピークよりもかなり低い水準に留まっているのに対して、2年債利回りは2011年以来の水準まで上がってきました。
直近では円金利だけでなく、米金利も上昇したことで日米金利差(10年債利回り差)は3月11日の3.345%をボトムに3.528%へと拡大し、それに伴いドル円もドル高方向へと調整が入ってきたことがわかります。
(ラインは日米金利差、ローソク足はドル円、縦線はFOMC開催日、サブチャートは両者の相関係数)
19、20日の動きが予想通りであれば、ここからの大きな動きは無さそうですが、より注目度が高いのは会合後の植田総裁会見と、FOMC時に公表される金利見通しです。植田総裁会見ではマイナス金利解除後も緩和的な金融政策を継続するというこれまで日銀関係者から出た発言が柱になるとは思うものの、時にタカ派寄りの発言を行う総裁ですから、今後の利上げに関して何かヒントが無いか注目です。
またFOMCでの金利見通しは前回12月の2024年末時点で3回利下げから変化があるとは思えないものの、なかなか下がらないインフレを懸念して2回に減る可能性も否定できません。その場合は米金利上昇とドル高に繋がる動きとなりますので、念の為注意しておきたいところです。
テクニカルには日足チャートをご覧ください。
12月安値と2月高値とのほぼ38.2%押し(赤のターゲット)で下げ止まり、2月高値と3月安値とのほぼ61.8%戻しで止められてイベント待ちです。上値の次のターゲットは78.6%(61.8%の平方根)戻しの149.92となり、下値は先週の動きを見ていると148円割れでは買いが構えていそうな状況でした。
今週はこうしたことを考慮して147.80レベルをサポートに、149.80レベルをレジスタンスとする週を見ておきます。
このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみを平均足と同様とすることで、短期的な方向性(白=上昇、黒=下降)を見やすくした独自チャートとなっています。また、一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。
今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)
今週注目される経済指標と予定をあげてあります。影響が少ないものはあえて省いています。FRB地区連銀総裁講演の内、2024年FOMCメンバー(ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、サンフランシスコ)ではない地区連銀総裁はカッコ付で示しました。また、わかりやすさ優先であえて正式呼称で表記していない場合もあります。特に重要度の高いイベントに☆印を付けました。
3月18日(月)
11:00 中国2月鉱工業生産、小売売上高
19:00 ユーロ圏2月CPI
19:00 ユーロ圏1月貿易収支
23:00 米国3月NAHB住宅指数 ☆
3月19日(火)
**:** 日銀会合結果発表 ☆
12:30 豪中銀政策金利発表 ☆
15:30 植田日銀総裁会見 ☆
17:30 デギンドスECB副総裁講演 ☆
19:00 ドイツ3月ZEW景況指数
19:00 ユーロ圏3月ZEW景況指数
21:30 米国2月住宅着工・建設許可
3月20日(水)
**:** 東京市場休場
16:00 ドイツ2月PPI ☆
16:00 英国2月CPI ☆
17:45 ラガルドECB総裁講演 ☆
18:30 レーンECB理事講演 ☆
19:00 ユーロ圏1月建設支出
21:00 スペイン中銀総裁講演
22:45 シュナーベルECB理事講演
23:30 週間原油在庫統計
24:00 ユーロ圏3月消費者信頼感速報値 ☆
24:30 オーストリア中銀総裁講演
27:00 FOMC結果公表 ☆
27:30 パウエルFRB議長会見 ☆
3月21日(木)
06:45 NZ10〜12月期GDP
08:50 本邦2月貿易収支(通関)
09:30 豪州2月失業率
16:45 フランス3月企業景況感
17:15 フランス3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
17:30 ドイツ3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:00 ユーロ圏3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
18:30 英国3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
21:00 英中銀MPC結果発表 ☆
21:30 米国新規失業保険申請数
21:30 米国3月フィラデルフィア連銀製造業景況指数
22:45 米国3月製造業・サービス業PMI速報値 ☆
23:00 米国2月景気先行指数、中古住宅販売 ☆
3月22日(金)
06:45 NZ2月貿易収支
08:30 本邦2月CPI ☆
09:01 英国3月ifo企業景況感
18:00 ドイツ連銀総裁講演 ☆
29:00 アトランタ連銀総裁講演 ☆
前週の主要レート(週間レンジ)
注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。
為替の高値・安値は東京午前9時ーNY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
3月11日(月)
前週後半に下げた余波が残っていて終日安値圏でのもみあいを続けました。金曜安値を東京前場と欧州前場の二度試したものの抜けられず底堅い印象があるいっぽうで、上値も147円台では売りが出てくるといった具合で上値も重く、再度下値を試しに行く可能性のほうが高いことを感じさせる一日となりました。
3月12日(火)
東京市場では昼前に日経平均株価が目先の底を打ち上昇に転じる動きとともに円売りの動きが先行、それまで上値が重たかった147円台にしっかり乗せてきたこともドル買い戻しを誘いました。その後NY市場までは147円台前半でのもみあいが続きましたが、予想よりも強い米国CPIに反応し一時148.16レベルの高値をつけました。ただ前週の下げが速かったことから148円台では売りたい向きも目立ち引けにかけては147円台半ばへ向けて売りが強まりました。
3月13日(水)
東京朝方は株安が先行した動きとともにドル売りが先行したものの147.23レベルまで、147円台前半ではまだ下がったら買いと考える向きのオーダーが入っていそうでした。その後東京後場から欧州市場にかけては買い戻しが入り、米金利上昇の動きも手伝って一時148.05レベルの高値をつけたものの前日高値はトライできず、148円台では売りオーダーが入っていて、引けにかけては147円台半ばに押す動きとなりました。
3月14日(木)
NY市場までは上下しながらも前日NY市場のレンジ内での動きが続きましたが、日経平均株価の上下に沿った動きとなっていました。NY市場では強いPPIに反応しドル買いとなったものの、直後に来週の日銀会合でマイナス金利解除とYCC撤廃の方向との記事に反応し、一時147.43レベルの安値をつけました。しかし、PPI後の米金利上昇ペースが速く、すぐにドル買いの動きへと戻し、148.36レベルの高値をつけ、高値圏での引けとなりました。
3月15日(金)
東京市場のドル円はドル買いが先行したものの148円台半ばから上では戻り売りのオーダーもあり反落して海外市場入り。欧州市場序盤に改めてドル買いの動きとなりましたが、日銀会合に向けて円買いを進めていた短期筋の週末前のポジション調整によるものでした。その後も日銀のマイナス金利解除に関するヘッドラインは出たものの既に織り込み済みなのか反応は鈍く、米金利上昇の動きとともにNY昼過ぎには149.16レベルまで水準を切り上げ、高値圏での引けとなりました。
注:ポイント要約は編集部
ディスクレーマー
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